ノイズ
アオヤ
日記の様なモノ
俺は静寂が嫌いだ。
というか俺にはもう静寂が訪れる事はないのかもしれない。
一年前くらいから俺は耳鳴りが続いている。
朝、目が覚めると真冬なのに俺の頭の中にはジージーと蝉の聲が鳴り響く。
最初は気になったが・・・
人間の身体は順応していく。
都会の雑踏とかいう言葉があるが昼間の雑音の中ではほとんど気にならなくなってきた。
ラジオのボリュウームを下げるようにノイズは相対的に小さくなる。
普通に生活する上にはあまり気になる事はない。
でも、一人静かに考え事をしていると頭の中に蝉の聲が鳴り響く。
・・・今、冬なのに頭の中はいつも蝉がなく夏のイメージしか湧いてこない。
静寂はもう俺にはやってこないのだろうか?
##
元旦の夜は月が綺麗だった。
といっても満月ではない。
まるで釣り針の様なペーパームーン。
西の山頂に神社があるが、新年の灯りがまるで星屑の集まりの様に輝いていた。
その少し上に月が来ていて・・・
まるで月の釣り針が星屑の塊を釣り上げてるみたいだった。
でも、俺の目に映るのは・・・
釣り針の月ではなく、碇の様な月だ。
デジタル映像の世の中で俺の見える世界にもノイズが走る。
釣り針の月は輪郭がズレている。
星屑の灯りは微妙に滲み水面に写る灯りみたいにボヤケている。
薄暗い場所では映る映像の左下8分の1位が影になっている。
この影は大きくなる事はあっても小さくなる事は無いだろう。
俺の見る世界はモニターのドットが抜ける様に少しずつノイズが広がり、やがて光すら失う様になるかもしれない。
真っ暗で想像だけの世界も面白いかもしれない。
でもせっかく今、目の前に美しい世界が拡がっているのだからそれを楽しみたい。
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俺が生れた時から絶え間なくビートを刻み続けている俺の心臓。
そんな俺の心臓にすらノイズが走る様になった。
ちなみにこれを書いている今も・・・
なんだか少し苦しい。
今はまだ不整脈だか・・・
これから先、このノイズはどうなっていくのだろう?
だから、今の自分を少しでものこしたい。
例えノイズに支配されても俺はここで俺の命の物語りを綴っていきたい。
もしも願いが叶うなら、もう少しだけ描かせてくれ。
ノイズ アオヤ @aoyashou
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