第182話【ノーズで新たな依頼を受ける】
「――もうすぐノーズの町が見えてきますよ」
ロセリがそう言ってはるか前方を指差すと丘を越えたあたりで町を囲む壁が見えた。
「本当に一日で着いてしまったな。とにかく早く話が聞きたいからギルドへ向かないとな」
ロセリの馬車群の一番後ろに僕たちの馬車を帯同させてノーズの門に向けてさらにスピードをあげた。
「――ノーズギルドマスターからの依頼でアランガスタの国境まで支援物資を受け取りに行ってましたギルド便責任者のロセリです。
本来ならば馬車一杯の荷物を積んで戻る予定でしたが先方にてすでにカード化された荷物が多数あり効率を優先してそのまま持ち帰りました。
詳細はギルドマスターへ致しますので通行許可を願います」
ロセリは昔とは変わり堂々とした言い口で門兵に許可書を提示して説明をする。
「よし、通っていいぞ。早くギルドマスターへ報告しに行くといい」
門兵がそう言って次の僕たちの馬車の確認にこちらに来る。
「ロギナス冒険者ギルド所属のミナトと同じくロギナスで商売をしている僕のパートナーのノエルです。暫くダルべシアにて活動をしていたのですけど依頼などの区切りがついたので一度戻ろうと思いまして……」
「ふむ。積み荷が少ないが持ち帰るものは無かったのかね?」
僕たちの馬車は馬の負担を減らすためもあって当然ほとんどの荷物はカード化してあったので確認した門兵がそう判断したのも仕方ないことだった。
「ああ、必要なものは全てカード化してありますので積み荷自体は少ないのです」
「なに?
君もカード収納スキル持ちなのか?
最近はギルドがカード収納スキルをレベルアップさせる手伝いをしているようでこの町でも数人だが使えるレベルになった者が居ると聞いている。
君もそんな人たちの一人なのか」
「まあ、そんなところです」
僕たちはあまり詮索されないようにあしらいながら通行料を支払って無事にノーズへと入る事が出来た。
「さて、ギルドに行って今後の話をしようか」
「そうですね。
私も報告事項がありますので一緒にギルドに向かうとしましょう」
先に門を抜けたロセリがそう言って馬車を進ませた。
* * *
――からんからん。
「ノーズ冒険者ギルドへようこそ」
ドアを開けるといつものドア鐘の音といつものセリフが飛び込んでくる。
「マヤさん。
ギルドマスターは在所ですか?」
「あ、ロセリさん戻られたのですね。
ギルドマスターは執務室におられますので面会はすぐに出来ると思いますよ」
「ありがとうございます。
では、すぐにでも報告をしたいと思いますがギルドの職員外の方の同席が必要なので第一応接室の使用許可もお願いします」
ロセリは僕たちの方を見てうなずくと受付嬢の返答を待たずに僕たちを応接室へと案内してくれた。
「いいのですか?
部屋の使用には許可が必要じゃないのですか?」
部屋に入るとノエルがロセリにそう問いかける。
「まあ、このくらいの事は今の私の権限でどうにでもなるので大丈夫ですよ。
それより私は今からギルドマスターに話をつけてこの部屋で話をするために連れてきますので聞きたい事があればまとめておいてください」
ロセリはそう言うと僕たちを部屋に残して出て行った。
「聞きたいことか……。
結局のところ現状把握とロギナスへ向かう手段の確認が主な内容になるのかな?」
「そうですね。
ノーズからの山越えルートは近いですけど途中の村は皆さん避難されていると言ってましたので王都経由の正規ルートになるかと思いますけど」
僕とノエルがそんな事を話し合っているとドアの向こうから声がしてきてロセリとギルドマスターのディアルが部屋に入って来た。
「大まかな話はロセリから聞いた。
ミナト殿、まずは救援物資の運搬に伴う荷物のカード化をしてくれてありがとう。
ロセリだけでは到底あの量の荷物を全てカード化するのは難しかったので助かったよ」
「どういたしまして。
僕の方もちょうどこちらに戻るつもりでいたところに依頼を受けただけですから気にしないでください」
「それで、ロギナスの様子はどうなっているのでしょうか?」
少しでも早く知りたいとばかりにノエルがディアルにそう問いかける。
「今回の地神様はロギナスのさらに西のあたりを中心として揺れを起こされたようで中心に一番近かったロギナスは建物への被害が一番顕著に出ているようだ。
数日前の大揺れで地神様の機嫌は治まったとみているがまたいつどこで始まるかは予想出来ていない」
「人的被害はどうなのでしょうか?」
「怪我をした者は多数居たようだが治癒薬で対応したと聞いている」
「それで、ノーズからロギナスへ向かうにはどのルートを通るのが現実的でしょうか?」
「今は各町同士の行き来は出来ていない。
物資だけはギルド便にて送ることは出来るが街道ががけ崩れなどで馬車が通れない箇所が多々あって復帰の目処は立っていないのが現状だ」
「思ったよりも街道への被害が酷いのですね」
ふたりの話を聞いていた僕がそう言って考え込む。
(さて、どうやってロギナスまで向かうのが正解か?
山岳ルートを強行突破で進んで崩れている岩なんかはスキルでカード化して除外すれば進めるか?
同じことは王都ルートでも言えるし、こちらの方を早く対処しないといつまでたっても各町が孤立状態になる)
「街道の復旧は進めているのですか?」
「現在、ギルドから依頼を出して対応はしているのだがどこも苦戦しているようだ」
(まあ、そうだよな。
岩なんかは魔法で砕けても土砂を運ぶ魔法はないから人海戦術で対応するしかないもんな。
あまり目立ちすぎるのは好きではないけど仕方ないか)
「分かりました。
王都経由の街道の応急処置をしながらロギナスへ向かうことにします。
街道の応急処置は依頼にあるのですよね?」
「あ、ああ。
もちろん、今一番優先的に対応してもらっている依頼だからな。
引き受けてくれるなら詳しい内容を書いた書類を用意するが一体どうするつもりだ?」
僕の馬鹿容量になったカード収納スキルレベルを知らないディアルは当然ながらそんな疑問を投げかけてくる。
「僕に考えがあるので任せて頂きたいです」
僕はそう言ってその案を説明していった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます