第180話【野盗対処方法と国境砦】

「こちらになります。

 ここにある荷物すべてが救援物資ですので積めるだけ積んで行って欲しいのです」


 案内された倉庫には山のような物資が積み上げられ言われたように少なくとも馬車20台分はあるように感じた。


「なるほど、なかなかの量ですね。分かりました、すぐに準備をして急ぎノーズへ届けようと思います」


「では、馬車への積み込みはギルドの職員にも手伝わせますので馬車を裏手の搬出口へとまわしていただけますか?」


 ギルド職員がそう言って搬出口へと向かおうとするが僕はそれを静止して荷物のカード化を始めた。


カード収納ストレージ


 僕がスキルを使うたびに山のように積まれた支援物資の入った箱が次々とカード化されて床に落ちる。


 やがて全ての荷物がカード化されたのを見たギルド職員はすっかり言葉を失っていた。


「これで全部ですね。

 品物の一覧表と照らし合わせてみても全て揃っていますのでこの依頼書を一緒に運んで確認してもらいますね」


 僕はそう言うとノエルと共に停めてあった馬車へと向かうとトトルと護衛のメンバーが待っていた。


「――すみませんが、私どもが旦那様より指示を受けているのはアランガスタの王都までおふたりを送り届けることでしたのでこれより先にはご一緒出来ません。

 せめてもの対応として小さな馬車を一台確保しておきました。

 荷物を積む必要がないミナト殿ならば御者ともう一人乗ることが出来るでしょう」


「ありがとうございます。

 何から何までトトルさんにはお世話になりました」


「いいえ、私どもは旦那様の指示のもとで動いているにすぎません。

 もし今後、旦那様にお会いになられる機会があればそのときに一言頂ければ嬉しく思います」


「分かりました。

 ハーベスさんにもよろしくお伝えください。

 そして、こちらが帰路に必要な食事などをカード化したものでトトルさんが開放できるように条件つけをしてありますので管理をお願いします。

 ガラムさんたち護衛の皆さんもどうかお元気で」


「おう。

 ミナトと一緒の旅は楽すぎてこれからが思いやられることになるぜ。

 しかし、ここからの道のりの護衛はどうするんだ?

 ギルドに依頼を出しても集まる者もいないんだろ?」


「そのあたりはどうにかなると思ってますのでご心配なく。

 では、僕たちは急ぎノーズの町へ向けて出発します。

 本当にお世話になりました」


 僕とノエルはトトルたちに再度お礼を言うと御者台にノエルが座り僕は後ろの荷車に乗り込んで王都を後にした。


   *   *   *


「でも、本当に護衛無しで大丈夫なんですか?」


 王都を出発して暫く走った頃、ノエルが御者台の後ろに座っている僕に聞いてくる。


「もちろん絶対安全とは言えないけれど僕に考えがあるから任せてくれないか?」


「もちろんミナトさんがそう言うならば信用します」


 ノエルははっきりとそう答えると馬車のスピードを上げる。


「その馬車止まれ!」


 もう少しで国境というところでガラの悪い連中に出くわすが僕は慌てずにスキルを使う。


超カード収納スーパーストレージ


「一体なにを!」


 ガラの悪い連中は僕がスキルを使うたびにひとり、またひとりとカードとなってその場に落ちていく。


「ひぃぃぃ!

 ばっバケモンだぁ!!」


超カード収納スーパーストレージ


 最後のひとりとなった野盗はそう叫びながらカードとなった。


「面倒だからその辺に埋めておいても良いんだが犯罪奴隷も使い道があるから一応拾っていこうか」


 僕はノエルに言って馬車を止めてもらいカード化した野盗たちを拾いあげた。


「なるほど、確かにこんな手段は他の人には見せられないですよね。

 野盗たちも護衛がついていないのを見ればいきなり襲いかかっては来ないでしょうし、ひとりずつカード化すればどうしてもいきなり消えた仲間に意識がいくものですからね」


「そういう事だ。

 ただ、今言ったように囲まれて一斉に向かって来られたら厄介だと思うからうまく言葉で静止をかけてくれると助かるよ」


「分かりました。

 次があったらそうしてみますね」


 僕に絶対的な信用かあるのかノエルは緊張することなく堂々とそう言い切ってくれた。


「本当に頼りになる相棒を手に入れたような感じだな」


 再び走り出したノエルの背中を見ながら僕は小さくそう呟いた。


「ミナトさん。

 国境砦が見えてきました。

 ギルドからの話が通っているか分かりませんので説明が必要になるかもしれません」


 ノエルはそう言うと馬車を門の前で止め、駆け寄ってきた門兵にギルドからの依頼書を見せた。


「――支援物資を運ぶという話は聞いているが一台の馬車とは聞いていない。

 それに支援物資はどこに積んでいるのだ?」


「それはここに……」


 門兵の問に僕が荷車から降りて支援物資をカード化したものをズラリと見せると途端に門兵の態度が変わった。


「このカードの量。

 これだけも物をカード化して持ち歩ける者といったら……。

 少しお待ちください、担当の者を呼びますので」


 門兵はそう告げると急ぎ駆け足で砦の中に入って行った。


「どうしたんだろうね?

 まさか盗品と思われて大勢で取り押さえに来たりしないよな?」


「心配しすぎですよ。

 あの態度はそんなんじゃなくて何か重要な人か物を探しに行った感じでしたから。

 それにどちらにしてもこの砦で一夜を明かさないととても暗くなるまでにノーズまではたどり着けませんよ」


「そ、そうだよな。

 忘れていたけど僕たち指名手配とかされてないかなとも思ってしまってさ。

 いや、ノエルがそう言ってくれて安心したよ」


「え?」(ノエルの声)


「え?」(僕の声)


「そそそ、それは完全に忘れてました。

 でも、こんな時ですから大丈夫だと思います。

 きっと、おそらく、多分」


 段々と自信のない言葉に変わっていくノエルと共に僕たちはあの門兵が戻ってくるのをドキドキしながら待っていた。

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