第168話【ロロシエル商会長④】
「先ほどあなたの部下の中にカード収納スキル持ちがいると言われてましたよね?」
「はい。
そう多くは無いですが数人はいると思いますがそれがどうかされましたか?」
ハーベスはまだ僕の言いたいことが理解出来ていないようで逆に問いかける形になる。
「先ほど今回お願いした魔道具の準備には約2ヶ月ほどかかると言われました。
でしたらその間にその方たちのスキルのレベルアップをお手伝いをさせて頂きたいと思いまして……。
2ヶ月あれば少なくともレベル3、努力次第ではもしかするとレベル4に届く人もいるかもしれません。
レベル4となればこのくらいの箱をカード化することが出来るようになり、さらにそこから修練を積むことでレベル5にも届く人が出てくるかもしれません」
「ふむ。
スキルレベル5といえばサブスキルだと最高レベルにあたりますよね?
そのクラスになればどのくらいの量をカード化出来るのでしょうか?」
「そうですね。
大人の男性が両の手を軽くひろげたくらいの大きさと思ってそれほど差し支えないと思います」
「なるほど。
確かにそれなりにはなるようですがその程度ではそれほどに重要なものとはならないのではないですか?」
ハーベスは自らの頭の中でスキルレベル5に達したカード収納スキル持ちの部下を抱えた場合にどういったメリットが起こるかを冷静に巡らせる。
「そうですかね?
これは使ったことがある者にしか分からないのかもしれませんがかなりのアドバンテージがあると思うのですが」
「ほう。
例えばどういったものですかな?」
僕の話に興味を抱いたのかハーベスが飲みかけのグラスをテーブルに置いて耳を傾けてくる。
「そうですね。
今の話からハーベスさんはカード化出来る荷物が両手分のみだとお考えになったのではないでしょうか?」
「うむ。
もちろんそうだが違うのかね?」
「……確かに一度にカード化出来る容量は決まっていますが一度しかカード化出来ないとは言ってませんよ」
僕はそう言うとポーチからペンを2本取り出してハーベスの目の前で2つを別々にカード化してから説明を続ける。
「このようにひとつカード化をした後でもまだ魔力に余裕があれば次の物もカード化することが出来るのです。
そもそもカード収納スキルは物質をカード型に圧縮して持ち運びやすいようにするスキルですが圧縮する時と開放する時に魔力を消費するだけでカード化したものに対しては全く魔力は必要ないのです。
つまり、一度カード化してしまえば戻すまでスペースいらずで在庫を増やすことが出来るのです。
なにも行商に同行するだけがカード収納持ちの仕事ではありませんよね?」
「うーむ。
言われてみれば……」
「そしてカード化するために必要な魔力は休めば回復しますので一度に多くは出来ずとも毎日少しずつカード化していけば倉庫が必要最小限で商会が回せることになりませんか?
そして、もちろん旅の行商にも役立つはずです。
例えば壊れやすいもの、高価な貴金属などはカード化すれば肌身離さずに旅が出来ますし、水桶など絶対に必要ではあるけど荷物的には邪魔なものが楽に運べるのです」
いろいろとメリットを並べた僕は今回の目的をハーベスに告げた。
「今なら特別に講習代は頂きませんが今後同様のことを頼まれても有料とさせて貰いますのでよろしくご検討ください」
僕の言葉にハーベスは満面の笑みとなり「分かった、すぐに手配をするのでよろしく頼む」と言って僕に握手を求めてきた。
「そうだな、とりあえず3人ほど預けるのとその間の寝食などの管理に2人ほど付けるのでしっかりと使いものになるように指導を頼む。
報酬については
今回ミナト殿が頼んだ魔道具の代金と引き換えでどうだ?」
思わぬハーベスの提案に僕は一瞬戸惑ったが「そちらがそれで良いなら」と快く了承をした。
「お礼をするつもりで呼んだにも関わらず良い商談となったようだ。
やはり
ハーベスは駄目と分かりながらも最後まで僕への勧誘を諦めていなかった。
* * *
「――本日はご馳走さまでした」
あれからいくつかの雑談を経て僕たちはハーベスと別れトトルの送りで宿へと帰ってきていた。
「やっぱりこっちでもスキルの指導をするのですね」
宿のベッドに座った状態のノエルが僕にそう言ってから仰向けにベッドに寝転んだ。
「まあ、僕に出来ることを考えたらこれしかないからね。
こんなことでも恩を売っておけばいつか良いことがあるだろうし不遇スキルだと言われていた人が活躍するのをみるのも楽しいからね」
「ミナトはそれで良いかもしれないけどその間は私は何をすればいいのかな?」
(指導するであろう期間はおそらく約2ヶ月間あるのでのんびり休暇として過ごすには長すぎる期間だし、かと言って街でなにかを仕入れるのも僕が一緒でなければ品物がかさばって運べないことになるから難しいだろう。何か彼女特有の頼める事案はないか?)
僕はそう考え、ひとつの事柄にたどり着くと彼女に告げた。
「鑑定スキルのレベリングをしよう」
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