第147話【盗賊団の正体を探る】
「カード収納スキル?
あれは使いものにならないハズレスキルだったと思ったが俺の記憶違いか?」
「まあ、世間一般的にはその認識であっていると思います。
ですが僕のいた国では既にその常識が覆されているところですね」
「うーむ。
にわかには信じられないのだがそれを証明することは出来るのかね?」
ギルドマスターはあごに手を添えて考え込む様子でそう答える。
「何が一番わかり易いですかね?」
「何でもいいがそれなりに大きな物を出して貰えると分かり易いだろう」
「比較的大きなものですね?
では解体場でお願いします」
ギルドマスターは半信半疑ながらも僕たちを解体場へ案内してくれる。
「さあ、ここで良いだろう。
君のスキルを見せてくれ」
「わかりました。
では……」
僕はそう言いながらグレートボアをカード化したものを取り出して開放する。
「
スキルの発動と共に体長2メートルはある巨大なグレートボアの死体が姿を現した。
「なっ!?」
その大きさにギルドマスターは驚愕の声をあげる。
「まあ、このくらいは普通にカード化出来ますね」
僕の言葉にあ然としていたギルドマスターと解体場に居た解体長が我に返り交渉をしてくる。
「このグレートボアはギルドにて買い取らせてもらっても良いのか?」
「正当な値段ならばお譲りしますよ」
「わかった。
きちんと計測して正当な報酬を払うことを約束しよう」
ギルドマスターの発言に解体長は目を輝かせながら喜々として解体道具の準備を始めていた。
「それよりも見て欲しいのはこっちなんですけど、ここで開放しても良いんですよね?」
僕は本来の目的である盗賊たちの死体を開放して良いかの確認をとる。
「あ、ああ。
もちろん良いぞ。
そのためにここに連れてきたのだからな」
巨大なグレートボアのせいで忘れていたとは言えないギルドマスターは慌てて僕に許可を出す。
「ちょっと人数が多いのであまり良い気分ではないと思いますが了承くださいね」
僕はそう前置きをしてから盗賊たちの死体を開放した。
「――うっ これは……」
そこには10人からの盗賊たちの死体が積み上げられて現れた。
「彼らが商隊を襲ってきた盗賊たちです。
幸いにも護衛の方たちの実力が上だったので各個に対処して最小限の被害で切り抜けることが出来ました。
ただ、見てのとおり全員が顔に布を巻きつけて隠しており普通の盗賊たちとは思えない攻撃の仕方をしてきました」
「普通ではない攻撃の仕方?」
「それについては俺から話そう」
護衛のリーダーであるガラムが横から説明を引き継ぐ。
「ギルドマスターならば知っているだろうが盗賊どもは普通、顔を隠すなんてことはしない。
それは顔を見られても困る事がないからだ。
だいたいやつらは商隊を襲ったらまず人は全員殺して荷物を馬車ごと奪おうとする。
例外として若い女性が居れば連れ去ることもあるがそうでなければ足がつかないように人は皆殺しが基本だ。
なのに、今回は顔を隠しているのもおかしいが襲ってきたやつらのひとりが馬車に向かって炎の魔核を投げつけたんだよ。
あれが馬車のホロに当たればまず燃え広がってしまうはずで馬車ごと荷物を奪う目的では無かったのかと思える行動だった」
「確かにそれは妙な行動だな」
ギルドマスターはあごに手をあてて考え込むように目を閉じる。
「とりあえずコイツらの顔を拜んでみるか?」
ガラムはそう言ってひとりの盗賊の死体から顔に巻かれた布を外していった。
「――見たことのない顔ですね。
少なくとも当ギルドで見たことはなさそうだが何か身元のわかるものがあれば楽なんだが……」
ギルドマスターはそう言いながら盗賊たちの持ち物を確認していく。
「しかし、この格好ならばどこかの国から送り込まれた偵察隊や撹乱隊の可能性も考えられるが隠密行動をしている部隊であれば身分のわかるものなど持ってはいないだろうな」
ギルドマスターはその後も何人かの顔を確認したが見覚えのある者はおらずため息をついた。
「とりあえず国の方には報告をあげておくがコイツらが何者かは現時点では不明だ。
一応、さらに調べてはみるが何か分かるかはなんとも言えん。
君たちロロシエル商会の商隊を狙ったものだとしたらこれからも同様のことが起きるやもしれんから一層のこと用心をしてくれ。
あと、街道に出た盗賊の討伐報酬が出るからそれを受け取る手続きをしたら帰ってもいいぞ。
もし、明日の出発までに何か分かれば宿に連絡を入れることを約束しよう」
「わかりました。
では、それで宜しくお願いします」
ギルドマスターの言葉にトトルがそう答えて一礼をする。
その後、ギルドの受付で盗賊討伐の報酬を受け取り他の皆が待つ宿へと向かいながら僕がトトルに話しかける。
「結局なにも分からなかったけれど何者だったんですかね?」
「……あまり考えたくもありませんが先ほどのギルドマスターの発言から我が商会の馬車だから狙われたとなればかなり面倒なことになりそうですね。
ガラムさん。他の方の怪我の具合はどうですか?」
「ふたりとも軽症だし回復薬を使っているんで明日には動けると思うが万全を期すならば一日ほど街に滞在してくれると確実だな」
「一日延長ですか……。
まあ、そのくらいはよくある誤差の範囲内ですのでここは無理をしないほうが得策かもしれませんね。
それに一日滞在をのばせばあの盗賊たちの情報も得られるやもしれないですからね」
トトルはそう言うとスケジュールの変更と追加で発生する経費の計算をしてメモに記していた。
「――では、予定を変更してもう一日ほどこの街に滞在します。
各御者は荷物の点検と馬車の整備を護衛の方々は体調を万全にしていただくこと。
そしてミナト殿には……」
各方面に指示を出すトトルは最後に僕の方を向いて名指しをして話し始めた。
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