第47話【有力者との面会と駆け引き②】
「――ギルドには適正な仕事を斡旋するためにスキルの詳細を記した台帳があります。
しかしこの台帳には、いま現在カード収納スキルのレベル6以降の情報は載っていません。
君も当然知っているだろうがメインスキルの最大レベルは10でサブスキルの最大レベルは半分の5だ。
つまりレベルが6以上になるにはメインスキルである事が絶対条件なのは理解してると思う。
そして、少なくとも私が知っている限りメインスキルにカード収納スキルを持つ人物は存在しないのだよ。
まあもちろん私が知らないだけで、もしかしたら彼の他にも存在するのかもしれないが、この台帳を作成する時に集めた者たちの中には存在しなかったと言うことだ。
だから誰もレベル6からの情報を持っていない。
もしかしたら革命的に素晴らしいスキルになったのか、もしくはただカード化出来る容量が増えただけなのかは彼しか分からないをんだよ」
ランスロットはそこまでまくし立てるように説明すると僕の方に向き直り「情報の提供をお願い出来るかな?」と圧を出しながらお願いをしてきた。
(まあ当然そうなるか。
しかし、全てを正直に話す訳にはいかないな。
ヤバそうな能力は隠して少しだけ有能なスキルになったと認識させるにはどこまで開示するのが良いか……)
僕はそう考えながら「そうですね。ただ、僕自身もよく分かっていないことだらけですので」と前置きをしてから話を続けた。
「まず、レベル5までは単純にカード化出来る容量が増えました。
そして、レベル6になりカード化した物の劣化が無くなりました」
「劣化が無い?
それは時間が止まっていると言う事かい?」
「その表現が正解かは分かりませんが、物質の劣化が見られなくなった事は間違いないと思われます」
「なるほど、だからマースが生きたままカード化されていたんだな」
ランスロットが先ほどの件に関して納得するように何度もうなずいた。
「いえ、マースが生きていたのはそのおかげではなくレベル7になった時の恩恵になります。
それまでは生きた魚などはカード化出来ませんでしたから」
「むう、そうか。
魚を生きたままカード化するにはレベルが7にならなければ無理なのか、ならば確かに今は君しか出来ない特別な方法という訳だな」
「はい。
今のところはそうなります。
そして、レベル8では無形物のカード化が出来るようになりました。
具体的には『魔法を封じ込める』事が出来ます。
もちろん全てを検証した訳ではありませんので『どんなものでも出来る』とは言えません。
以上がいま僕が理解しているスキルの情報となります。
これで宜しくですか?」
「ちょっ、ちょっと待ってくれ。
いきなりそのような説明をされても信じる事が出来ないぞ」
淡々と説明する僕の話を必死に理解しようとするランスロットだったが、もはや僕を『何をふざけた事を言ってるのだ』的な目で見ているのは明白だった。
「僕は説明を求められたのでお答えしただけですので、信じるかどうかはランスロットギルドマスターの判断になります。
これでギルドに対する義務は果たしたと考えますので水槽の準備をお願いします」
「う、うーむ。
真偽の程は君にしか分からないから信じるしかないのか……?」
まだ完全には納得のいっていない表情のランスロットだったが思わぬところから援護の声がかかった。
「ミナトの言っている事はおそらく本当だと思いますよ」
その声の主に注目が集まるとそれは壁際に立って次の報告を待っていたヤードだった。
「ヤードか、どうしてそう思う?」
ランスロットがヤードに質問すると彼は王都までの旅で起こった様々な事から思い当たる事を話し始めた。
「ミナトに対しては情報の守秘義務があるので全てを話す訳にはいかないですが、今の説明を肯定する出来事は彼の説明の信ぴょう性をあげるためにも話しても良いのではないかと思うのだがこの場で話してもいいか?」
ヤードは詳しい話をする前に僕の方を見て意思の確認をしてきた。
「せっかく僕の信用を上げようとしてくれてるのを拒否する理由はないよ」
僕がうなずくのを確認するとヤードが言葉を選びながらランスロットに説明を始めた。
「まず、カード化出来る容量の増大の件は道中で盗賊団が馬車を止めるために倒した巨木をカード化した事によりおよそ3メートル四方と言えます」
「なんと!? 3メートルだと?」
「はい。次に時間の劣化が無い件ですが、野営時の食事に食堂で作ってもらった出来たての温かい食事を目の前で出されました。
これはつまりカード化した際の時間的経過が無いという証拠になると思います」
「なに!?
旅の野営に食堂と同じ温かい食事だと?」
「はい。最後に魔法のカード化ですが、これも盗賊の襲撃時にメトルの打ち漏らした盗賊を彼が水魔法で吹き飛ばしたのをこの目で確認しました。
その時は詳しい説明は求めませんでしたが今の話で合点がいきました。
それと霧の滝付近にて猛獣レッドボアと遭遇して交戦の末、非常に幸運が重なり無傷にて討伐致しました。
その死体も彼がカード化して運んでくれました。
自分が分かるのはそのくらいです」
ヤードは雇い主であるマグラーレには既に同様の事を報告していたがランスロットにはまだ報告をしていなかったのでこの場を借りて説明報告とした。
「ううむ。
その話が本当ならば使い方次第で凄い功績を上げることが出来るかもしれんな」
実際は『凄い功績』程度ではないのだが、まだランスロットはスキルの有用性を理解しきれていなかったのでそのような感想となったのである。
「ギルドへの報告事項は以上となります。
では次にマグラーレ様へのお願いになりますが、ノエルお嬢様との交際を認めて頂きたいのです」
ランスロットへの報告が終わったのを期に僕は単刀直入にマグラーレにノエルとの交際を認めるようにお願いをした。
――ジロリ。
僕の言葉にすぐには答えずにマグラーレは僕の顔を値踏みするようにジッと眺めながらゆっくりと口を開いた。
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