第3話【メインスキルとサブスキル】
「――お待たせしました。
では登録にあたりあなたのお名前と
「スキルの確認?」
あの後、新規登録の手続きをするために必要な魔道具の準備を終えたサーシャが僕に説明をしてくれた。
「はい。私達は誰しも女神様の加護を受けており、それぞれに
それらの中からメインスキルとサブスキルの2つが与えられますのでその
これから確認させて貰うのがあなたの
(なるほど、あの女神が言っていたのはこの事だったのか……)
「まずはお名前から宜しいですか?」
「
「ミナト様ですね。
では、この魔道具に手をかざしてみてください。
色が黒から白に変わったら確認終了ですので結果をお待ちください」
僕はサーシャの言われるままに魔道具に手をかざすと黒い光を帯びていた魔道具が徐々に白い光へと変化していった。
「はい、手を戻しても宜しいですので少しお待ちくださいね」
サーシャはそう言うと魔道具を操りながら報告書の作成をしていく。
やがて、サーシャの手が止まり結果を記した一枚の用紙が魔道具から排出される。
「まるでパソコンとプリンターのようだな」と思いながら彼女が説明をしてくれるのを待っていると、内容を確認したサーシャが表情を曇らせた。
「どうかしましたか?」
嫌な予感しかしなかったが聞かない訳にもいかずサーシャに確認する。
「い、いえ。ちょっと珍しいスキル構成でしたので驚いただけです」
「珍しいスキル構成……ですか?」
「はい。順を追って説明しますが、まずあなたの
メインスキルが『カード収納』でサブスキルが『鑑定』です」
「それのどこが珍しいのですか?」
スキルの内容を理解出来ていない僕は何が良くて何が悪いのかさっぱり分からず彼女の説明を待つしかなかった。
「どちらも補助系のスキルですが、カード収納スキルがメインになった人は今まで見たことがありませんでしたので……。
もしかして、スキルの詳しい説明が必要でしょうか?」
サーシャの言葉に頷く僕を見て彼女は近くにいた別の職員に応援をお願いした。
「少しお待ちくださいね。カード収納のスキル持ちはあまり多くないので説明するのに適した人を呼びましたので……。
で、先にサブスキルである鑑定スキルから説明させて貰いますね」
サーシャはそう言うとペンを一本取り出した。
「鑑定スキルは文字通り何かを鑑定する(調べる)事が出来ます。
調べる事が出来るのはスキルレベルによって変わりますがレベルが高いほど多くの情報が読み取れるようになります」
「すみません。レベルって何ですか?」
「スキルにはレベルがあって上限も当然あります。
メインスキルは最大レベルが10レベルでサブスキルは5レベルになります。
サブはメインの半分までしか育たないと言うことですね。
私もサブスキルに鑑定を持っていますので使い方を教えますが、このペンを持って『鑑定』と唱えてください」
「それだけですか?」
「はい、それだけです。
そうするとペンの情報が見れるようになりますのでやってみてください」
僕はサーシャの言われるままにペンを持ってスキルを唱えた。
「――鑑定」
【ペン――よく使い込まれている】
スキルを唱えると頭の中に結果が浮かんできた。
「いかがでしたか?
まだレベルが低いのでほとんど情報は分からなかったでしょうがそれが鑑定スキルになります」
「レベルはどうしたら上がるのですか?」
「とにかくどんどんスキルを使う事ですが、スキルを使うと精神力――魔力とも言われていますが……消費されますので使いすぎると倒れます。
ですので頭が痛くなってきたら止めて休む事をおすすめします」
鑑定スキルの説明が終わる頃、彼女の後ろからひとりの男性がやってきた。
「君がカード収納スキルの持ち主だね。
僕はカード収納スキルをサブに持っているけどあまりレベルは高くないから使い方だけ教えるよ」
男性はそう言うとサーシャのペンを掴んでスキルを発動させた。
「
スキルの発動と共に男性の握っていたペンが一枚のカードに変化していた。
「これがカード収納スキル――通称(ストレージ)だよ。
まあ、要するに物質をスキルで圧縮してカードに変換してるんだ。
こうする事によって大量の荷物を簡単に運ぶ事が出来るようになるって訳さ。
そして戻すにはカードを握ってから
それを見た僕は興奮して叫んでいた。
「それって凄いスキルじゃないですか!」
その言葉を聞いていた周りの人達がクスクスと笑い出す。
「何が可笑しいんですか?」
周りの態度を不満に思った僕は笑う人達に向けて問いかける。
「ぷっ……。こいつはお笑いだ。
おい、可哀想だから教えてやれよ、カード収納なんて全く使い物にならない最低な駄目スキルの本当の姿をよ」
見た目にいかにも剣士ですといった装備の男が先程まで説明してくれていた男性に向かってそう言い放つ。
「どういう事なんですか?」
僕はたまらず彼に聞くとその男性は暗い表情で説明をしてくれた。
「このカード収納スキルでカード化出来るのは他のスキル同様、レベルによって変わるんだよ。
僕のスキルレベルは1だ。
そして、それだとこのペンをカード化するのが精一杯なんだよ。
もちろんレベルが上がればそれなりに大きい物もカード化することが出来ると聞いているがサブスキル最高レベルの5レベルでも人が両手で抱えられる程度が限界なんだそうだ。
でも、確かにそこまでレベルを上げればそれなりに仕事はあるだろうがそこまでレベルを上げるには相当な時間と努力が必要になるんだ。
それをするくらいならば他のスキルを上げた方が効率もいいし、早く仕事がこなせるのでわざわざカード収納スキルを上げる人はほとんど居ないんだよ」
「――まあそう言う事だよ。分かったかよ? 最低スキルを引き当てた残念君。
まあ、もしも運良くスキルレベルが上がったら荷物持ちとして使ってやってもいいから死ぬ気でレベル上げを頑張ってみるんだな。ははははは!」
その男はそう高笑いを残して去っていった。
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