EP1 Re:遠い幼馴染
西暦2041年
我々とは違う"地球"。そこは我々より少し発達した科学と、我々には無い"法術"という魔法によく似た物によって営まれている世界が形成されていた。電子レンジが魔素と呼ばれるエネルギーで動き、銃口が文字通り火を吹く。相反する様に見える二つの技術が奇跡的な調和を果たし、人類はこれまで衝突と分裂を繰り返しながらも発展の道を歩んでいた。
その世界に存在する国"サンノマル"。海に囲まれた島国であるそこは小さな国土でありながらも独自の文化や技術を育み、大国の支配を跳ね除け国際的に強い影響力を持ち続けてきた。
大国と戦う事も何度かあり、二度目の世界大戦では陣営のトップとして戦った事もある。その戦いに負け、軍事的な力は大きく削がれてしまったものの直接的な植民地支配は辛うじて避けられ、独立国としての地位は健在であると言えよう。
その国の士官学校に通う少年"レイ・ラース"。思春期特有の大きな悩みを抱えて日々を過ごしている16歳の男の子だ。その瞳にいつも映っているのは一人の女の子、幼馴染である"サナエ・カミゾノ"。
彼らの関係が大きく動く所から、この物語は始まる──
*
眼前で閃光が弾けたと思った時には、すでに俺は光の槍に腹を貫かれていた。消えゆく意識の中で、俺は微かに声を聞いた。
「勝者。サナエ・カミゾノ!」
相手の勝利を宣言する声と、十数人程度の歓声。耳にするのも何回目か忘れたそれを聞きながら、俺の意識は暗転していった。
*
目を覚ますと、俺はグラウンドの隅に寝かされていた。
グラウンドといっても、その大きさは首都圏の競技用ドームのそれに勝るとも劣らないサイズを持ち、そのグラウンドを囲うように観客席が備え付けられている。俺が通う、サンノマル国立第一士官学校が誇る、国内有数の巨大スタジアム。
そして、俺ことレイ・ラースはその学校に通う二年生だ。
「試合時間11分4秒か、前よりは持ったんじゃないかな」
俺にそう言う人物の名前はレオン・ミツルギ。中学生の頃以来の知り合いだ。このサンノマル国の皇族の分家出身で、優秀な人間だ。
余談だがこの国の皇帝は苗字を持っておらず、絶対の権限があるわけではない。ただ議会の決定に対して拒否権がある。
「やっぱり死ぬってのは良いもんじゃないな。」
「同感だ。俺も慣れそうにない。……殺す感覚にもだ。」
一見すると物騒極まる会話だが、俺たちが戦った場所では拡張現実法術"オーギュメント・ペイン"というありとあらゆる事象が仮初のものとなりどんな傷害を受けてもしばらくしたら元通りになる、そんな法術が発動している。激しい戦闘訓練をしても大きな怪我やそれによる後遺症の心配がない、便利な法術だ。
もっとも傷を受ければ深さ相応に痛いし、死ぬ様な攻撃を受けたら生命活動も一時的だか停止する。とはいえ実戦に限りなく近いどころか実戦そのものな高度な訓練ができるのだ。
「相手が悪かったんだよ。サナエ・カミゾノは学年主席の成績を持つ、天才少女だからな。」
「わかってるよ……でも俺はアイツの……」
「彼女の幼馴染だ……だから勝ちたい……か。いつまでそれに固執して……いや、分からないわけではない……失言だったな。すまん。」
「気にするなよ……」
俺はサナエに視線を向ける。スラリとした髪は背中の中間まで伸び、女子にしては割と高めな身長、そしてたおやかで美麗な容姿は、実年齢より少し大人びた印象を見せる。
彼女の周りを多くの生徒が囲う様は、彼女が人気者であると誰もが理解できるだろう。熱心なファンクラブまであるとは恐れ入る。
小さい時は近かった距離が、疎遠となった今ではものすごく遠く感じる。ふと、彼女と目があった。俺はすぐに目をそらしたが、その顔はどこか淋しさを纏っていた気がした。
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