第4話 妹系美少女の名はアスカ
ふー、やばいやばい、変な妄想モードに入っていたようだ。
少女が手を貸してくれと言うので、地面から顔を出した少女を見ると、何故か首を必死に前後左右に振っていて、美しい銀髪が風に揺らめく稲穂のようにも見え……なくもないが注意深く観察するに……そう、ヘッドバンキングやな!
「あの……何してるんですか?」
「うぅぅむぅぅうぐぐっ、見れば分かるだろ! 早く引っ張り上げるのだ!」
「あっ、すいません! ちょっと楽しそうだったので!」
「ころすぞ!」
はい、何となく分かっていました。気になる子に
俺は素早くしゃがみ体勢を整えると、少女の頭をむんずと両手で掴み思いっきり上へと引き上げた。
「ふんぬぅぅぅぅぅ!! そいやさぁぁぁぁぁ!!」
「ぐぐぐ、ぐるじいぃぃぃぃぃぃぃぃ……ち、ちぬぅぅぅぅ……ぐぽぽっ……もごもご♂×△〇□#……や、やめ……ひょ、ひょ」
なかなか抜けない! 早く引っ張り上げないと苦しそうだ。もう少しの辛抱だ! がんばれ!
前後左右に彼女の頭を動かしていると、抜けそうな手ごたえを感じたので、大根の様に一気に引っこ抜いた!
「よっしゃ抜けたぁぁぁぁぁ!!!」
地面から抜けた少女は土に埋まっていたからか服や体が所々汚れていた。そして気絶しているのか涎を垂らしてだらーんとしていた。
ちょっ怖っ! 大丈夫か!?
マンドラゴラを収穫した気分てこんな感じか!? 知らんけど!
このままじゃ可哀想なので彼女を俺の膝枕で寝かせる。
顔色が悪いが息をしている。どうやら生きているようだ。
危ないところだった!
もう少し救出が遅れていたらやばかったかもしれない。
少女はぐったりとしている。もしかして酸欠か?
うーん、これからどうしたら……はっ!
これはお約束のアレでは!?
仕方ない。これはやらなければならない展開だ。俺は仕方なくやるのであってだな、決してやましい気持ちはないと断言しよう!
マウストゥマウスするしかないよな。
だってやらないと先に進まないやつだよねこれ?
俺は覚悟を決めて、彼女を地面に仰向けに横たわらせると、少女の顔にゆっくりと自分の顔を近づけていく。
少女は目を閉じており、俺も合わせて目を閉じ、少女のぷっくりと小さな唇と俺の唇が触れ合おうとした正にその時――鈍い音が。
「んぎゃあぁぁぁぁぁ!?!?!?♂%#△×÷」
突然マグマが押し寄せる様な激痛が俺を現実世界に呼び戻す。目の前がチカチカして何が起こったのか理解が追い付かない。
激痛で四肢が震える中、次第に目が回復してくると……。
「ひっ!!!」
少女と眼がばっちり合いました。
何故か非常にお怒りの様子の少女が顔を赤くし、こちらを睨み上げてプルプルしていらっしゃる。
「ご、誤解です! な、な、何もしてません! いやしようとはしてましたが、違います! 応急処置をしようと。酸欠で気絶してるようだったから! やましい気持ちはこれっぽちもないと断言しますです! はいっ!」
俺はビシッと敬礼を決めた。
「……そろそろそこをどくのじゃ、この変態めが……」
どうやらお怒りの様子だ。はっとした俺は、ようやくこの状況が客観的に見て、裸の男が女の子を襲っているようにしか見えないことに思い至る。
しかし少し恥ずかしそう見えるのは気のせいか。もしかして、キスは未経験なのかもしれない。いやまあまだ若そうだから当たり前か。
そういう俺も実はまだキス未経験者だったりするのだが……。
ちょっと俺もはにかんでいると、
「はよどくのだぁぁぁぁぁ!!! 変態! うらぁ!!!」
「ぐぎゃっっ!」
俺の体がフワリと浮き、あっという間に投げ飛ばされてしまった。
小さな少女の体のどこにそんな力があるのか不思議だったが、巴投げのような形で数メートル先まで投げられ、腰をしたたかに打ち付けた。
少女を助け出したのに全く踏んだり蹴ったりだ。
だがしかし神は俺に褒美をくれた。
なぜこんな所にと思ったが、なんと白いバスタオルが落ちていたのだ。それもかなり仕立ての良い肌触りだった。
まだ汚れもほとんど目立たないからきっと最近誰かが落としたのだろう。
よく見ると端の方に『L』と刺繍がされている。
誰かは分からないがLさんありがとうございます! 借りておきます!
俺は痛む腰を
流石にずっとフルチンはキツイわ。
その後、彼女に誠心誠意謝罪すると、何とか誤解が解けてお許しを頂いた。そこで改めて自己紹介をした。
「俺の名前は
親指を立ててかっこよく決めた。少女には俺の歯がキランと光って見えただろう。
「我はアスカグランなのだ。アスカ様と呼ぶとよいわ。あ、あと、さっきは助けてくれて、か、感謝する……のだ」
彼女はお礼を言いなれていないのか顔を真っ赤にしていた。
ツンデレきたぁぁぁ!!! やっぱ美少女のツンデレ最強過ぎる! しかも妹系や!
俺のハートがブレイクしそうだ!
「お、おう、今度は一人遊びは気を付けろよ? はははっ」
俺も礼を言われなれていないから挙動不審になってしまった。
「そういえば着るものあったのだな」
恥ずかしかったのか話を変える様にアスカは俺が腰に巻いた仕立ての良いバスタオルを指差して不思議そうに尋ねる。
俺がそこに偶然落ちていたことを説明するとアスカは首を捻りながらもスルーすることにしたようだ。
さて、落ち着いたところで改めて少女をまじまじと見てみると、全身汚れてはいるが身だしなみを整えたのか、マンドラゴラには見えない。知らんけど。
身長は小柄で俺より幼く見える。
恰好はラフな感じで、上は質の良さそうな革製らしき薄手のノースリーブみたいなデザインだった。
薄い皮を丁寧に
下もやはり革製らしき短パンに革製ショートブーツと至ってシンプルだが似合っていてとても可愛らしい。
短パンから伸びる脚が健康的で眩しい。
腰になにやら蛇柄の様なベルトを付けているのがやや特徴的か。さらに腰には小さな革袋が下がっている。
顔は、地面から生えた生首の時はびっくりしたが、小顔の妹系だな。
目はくりくりの黒目で、耳がやや尖っているのが勝気な性格の印象を与えている。
髪はサラサラ。光の当たり方によりライラックの花の色にも見える綺麗なシルバーで腰まで伸びていた。
トップコスプレイヤーも腰を抜かす程の美少女だ。
それにしても美少女が荒野に独りでコスプレしながら地面に埋まっているとか違和感が半端ない。
「さあ自己紹介も済んだし、お礼も兼ねて我が家へ招待しよう。付いてくるとよい」
そう言うとアスカはスタスタと歩き出した。
先程も思ったが、見渡す限り荒野で、近くには人の背丈程の岩やら、枯れ木、かなり遠くの方に森やら山々が見えるくらいだ。
本当にこんなところに家があるのだろうか。
もしかして二、三日歩いた所にあるとか。そんな不安に駆られていると、
「着いたのだ」
ん? まだ、三十分も歩いていない所で立ち止まった。
「何も見えないですが……ま、まさか……野宿。流石にそれは家とは言わないのでは……アスカさん?」
俺は彼女に失望と僅かな恐怖を感じながら恐る恐る尋ねるとなぜか殴られた。
「な訳あるか! 見てるのだ」
俺は涙目で痛む頭をさすりながら彼女に注目した。
彼女はその場にしゃがむと地面に手を当て、何やら呟いていた。
「あの……具合でも悪くなったんですか?」
心配になった俺はそう声をかけて優しく彼女の背中をさすってあげた。
俺が優しく介抱していると突然足元から淡く青い光が溢れ、まるで魔法陣の様なものが現れた。
俺が唖然とその光に驚愕していると、また殴られた。
「いつまで撫でているのだ!」
「ずびまでん……」
どうやら俺の誤解だったらしい。彼女の具合は悪くありません。
二個目のたんこぶを摩りながら足元を確認すると、既に光は収まり何やら地下に続く階段の様なものが出現していた。
つっ!? これって魔法だよな!? まじか!!! 薄々感じてはいたがやはりだった!!!
「やっぱここ……異世界やぁぁぁぁぁ!!!」
異世界でスロー生活をしてみたいと思っていた俺は、興奮して拳を天に向かい高く突き上げながら叫んだ。
はい三個目のたんこぶ頂きました。
「騒がしい! さあ降りるのだ!」
「はいっ! おじゃましまっす!!!」
興奮でわくわくの俺とアスカは、さっそく階段を降りようとしていた。
その時だ――
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