「デスクトップアイドル」wotaku

ニコニコ:https://www.nicovideo.jp/watch/sm39255963


YouTube:https://www.youtube.com/watch?v=C4qdxZht93U&t=1s


 三曲目はこちら、『デスクトップアイドル』だ。2021年8月31日投稿、製作者はwotaku、使用音源は初音ミクである。『ジェヘナ』『シャンティ』などの楽曲で知られるwotakuだが、今回の楽曲は先に紹介した『アンリアル』と同様、初音ミクの誕生日に合わせて投稿された初音ミクの楽曲となっている。

 まず、この楽曲の特徴の一つとして、80年代のシティポップを彷彿させるような曲調が展開されるという点が挙がる。シンセサイザーのメロディーに、ミクの歌声が響く。まるで、ミクがタイムスリップしたかのような感覚に陥る。サムネイルのイラストも、この曲調に合わせたものに仕上がっており、知らないはずの当時を思わせる雰囲気をより一層強くしている。少し曲調や年代は異なるが、個人的には大黒摩季の『あなただけ見つめてる』に近い何かを感じた。

 しかし、曲の持つ雰囲気とは裏腹に、歌詞は明確に"初音ミク"を歌い上げている。そこには、初音ミクから発せられる言葉が連ねられている。

 

「LOVE あなたの曲は

 それを歌うけれど

 その意味をまだ

 私は知らない」


「音楽で人を救いたいとか

 そんなのどうでもいいから

 私だけを見ていて」


 感情を持たない、機械であるはずのミクが奏でるその歌詞は、紛れもなくその所有者に向けられた感情がある。歌うために作られた存在が「音楽なんてどうでもいい」と歌う、この矛盾しているような言い回しが、最近のボカロ曲には見られない"初音ミク"の曲であることを強調する。サビの一部にはこんなフレーズもある。


「なんで 分かんないよ

 心臓が無いのにこんなにも痛くて

 待って 行かないで

 電源を切ってもずっとそばに座ってて」


 機械なのだから、心臓を持つはずがない。それなのにナニかが痛む。一緒に居てほしい。たとえPCの電源を切っても。初音ミクの感情をこんな風に表現する力に、私は思わず鳥肌が立った。最後にもう一か所だけ、フレーズを紹介したい。


「DAW 私の歌に

 意味は無いのだけれど

 それしか会える

 方法が無いの」


 初音ミクとクリエイターの関係を、こんな書き方で表現するのは、あまりにも強烈すぎる。歌に意味はないけど、歌でしか繋がる方法がない。何故なら「デスクトップアイドル」だから。

 この令和の時代だからこそ、このアイドルの曲は一層強烈な印象を与えるのではないだろうか。この曲は間違いなく"初音ミクの曲"であると、私はそう感じた。

 

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