第13話 「"地底雷獣 FC"は次にどこへ出現すると言うんですか?」

「番組の途中ですが、ニュースをお知らせします!…T電力は先ほど、政府及び防衛省の要請により、都内東部5区への送電量を大幅に削減すると発表しました !! …これは、昨日突如として都内中央区に出現し、地下鉄を浸水させた後に自衛隊と激しく交戦して再度地下に逃れ潜伏した、怪獣への対策措置ということです !! 」

 …その日の夜、僕は自宅のテレビでそのニュースを見た。

 日中のホテルでの「極秘機密会議」は一時間足らずで終了し、僕たち調査隊はその後解散したが、政府と防衛省側は会議の結果を踏まえて、その後大急ぎで「地底雷獣 FC」への対策や攻撃作戦を練った上でのマスコミへの発表となった。

 テレビの画面では、女性キャスターが、続けて怪獣に関するニュースを伝えていたけど、そのほとんどは僕たち調査隊が掴んだ情報をそのまま発表しているような感じだった。

「…なお、このあと午後8時50分より、防衛省庁舎特設ブースより、氣志田総理、国尾防衛省幕僚長、古池東京都知事による怪獣対策発表と、合同記者会見が行われる模様です!」

 テレビ画面を見ながら僕は、今回の政府側の対応の速さに驚いていた。

 しかし考えてみれば、それだけあの"地底雷獣 FC"が首都東京に与える脅威が大きいというのと、僕たち調査隊への信頼度が確固たるものになったってことなんだろうな、…と、僕は今日午後の「極秘対策会議」の時の甲斐路の言葉を思い出しながら感じていた。

 …あの時の甲斐路には何だかオーラがかかってたというか、一種の凄みを感じた。


「…仮に甲斐路さんが言った通り先ほどの都内5区への送電を2日間停止したとして、"地底雷獣 FC"は次にどこへ出現すると言うんですか?…具体的な出現地点が想定出来ないといずれにしても攻撃態勢がとれません… ! 」

 極秘対策会議中のモニターの中から国尾幕僚長が質問してきた時、甲斐路はキッパリと答えていた。

「T電力、三ヶ尾変電所 ! …千葉県野田市です!」

「 !! …」

 …あまりにも明快な回答っぷりに、メンバーはなぜか一瞬言葉を失った。その「三ヶ尾変電所」の所在地も咄嗟には全くイメージがつかない。


「甲斐路 ! …奴がそこに出現するという根拠は?」

 思わず今度は僕が質問をぶつけていた。

「"地底雷獣 FC"は、餌の電力を求めて杉並世田谷の城西エリアから、中央区の都心部に移動し、そこで自身に有害な海水を地下に浸水させてしまった ! … そして城東エリア足立区に移動した ! … 奴は警戒心も学習能力も高いことを考えると…東京は南側が海なので、となると進路は地下鉄や海が無い北東方面になります ! …足立区から北東方面に向かうとすると、次に襲う大きな規模の変電所はこの野田市の三ヶ尾変電所しかありません ! …この変電所は地上施設ですし、市街地から外れた場所なので、攻撃することが可能だと思います!」

「 ………… !! 」

 再びメンバーたちの言葉が出なくなる。


「甲斐路 ! … ところで君は何でその三ヶ尾変電所の存在や場所を知っているんだ?…」

 僕はまた質問をぶつけた。

「私の家から茨城県自然博物館に向かうルートの途中にあるからよ ! …何回か私のモンキーですぐ脇を走ったから…いつも流山街道で運河を渡ったら、三ヶ尾変電所の脇を通って目吹大橋で利根川を越えて行くのがマイルートなの ! 」

 甲斐路がちょっと得意げに答える。

「あっ ! … 茨城県自然博物館といったら、松花江マンモスと恐竜ヌオエロサウルスの原寸大骨格標本が常設展示されてる所じゃないの!…さすが優ちゃん、良い所行くわねぇ !! 」

 掛賀先生がマニアックなフォローを入れる。


「…なるほど、分かりました ! …甲斐路さんの見解を元に、防衛省と自衛隊は"地底雷獣 FC"を討つべく、準備配置して三ヶ尾変電所にて迎撃態勢をとります! …奴を何としても倒す !! 」

 氣志田首相と古池都知事が思案顔を示す中、国尾幕僚長が決意を込めて意気高く言った。


 …そしてその夜、8時50分から始まった政府発表と合同記者会見を、僕は家の自分の部屋のテレビで見ていた。

 発表会見は予定通り防衛省庁舎の特設ブースで行われ、壇上には氣志田首相、古池都知事、国尾幕僚長の三人が並んで臨んだ。

 まずは氣志田首相が発言を始める。

「え~国民の皆様に申し上げます ! 昨日、突如として東京都心部に出現した怪獣について、日本政府として一刻も早く駆除することと決定致しました ! … ついては、防衛省及び東京都と連携のもと、都民の皆様にもご協力頂きまして駆逐作戦を遂行致します ! …作戦概要につきましては、国尾防衛省幕僚長より発表致します」

「え~、防衛省幕僚長の国尾 護です、作戦発表の前に、現在までに判明した、怪獣の特性について申し上げます ! …まず、形態は2本の触覚を持つ甲虫と言った外見であり、体長は推定50メートル、外皮は硬く戦闘ヘリの機銃掃射は効果なく、頭部の触覚より超高圧電流を伴う稲妻状の破壊光線を武器にする生物です ! …なお、防衛省では以降、怪獣を"地底雷獣 FC" と呼称し、その武器の破壊光線を"雷擊弾"と呼称します ! 」

 …始まった発表会見に、僕は何だか身体がぞわぞわして来るのを感じていた。





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