ベギットゥ

久徒をん

暗闇のプロローグ

 暗闇の空間。本来見えるはずの星空がない空間──

 そんな闇を漂う一隻の銀色の宇宙船。

 「おい、全然動かないぞ」

 「船の中の設備は大丈夫ですが操縦系統が壊れているようです」

 二人の男が話している。

 「我々の知らない異空間に入ったのでしょう」

 「くそっ!他の船はどうなったんだ。交信できない」

 そこでは会話が残響と共に響いていた。

 「どうして……」

 少女のようなか細い声が響く。

 「このままだと全ての機能が停止するかも知れません」

 「俺が出口を探す!」

 「ダメです。はぐれたら助けられません」

 「そんなのいやよ!一緒にいて」

 声が深い残響を残して暗闇に広がる。

 「船の機能を最低限度で稼働して我々は冬眠装置で眠りましょう。出るのを待つしか方法がありません」

 「そうだな。船が動かないのでは何も出来ないからな」

 「ああ、お父様、お母様……どうかご無事で……」

 「ああ祈ろうぜ。無事に目覚める時が来る事もな」

 会話が終わり、空間に沈黙が訪れた。

 光のない空間はただ無限に広がっていた──

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