第50話 原子分解フィールド(2)
光が通り過ぎた宇宙空間に有った小さなデブリが、きれいになくなっている。
「アッテンボロー大佐、RA。直上です」
カレンはコムに叫ぶように言うとA3Gの艦隊へ機首を向けた。信じられない光景がそこに有った。A3Gが攻撃を受けている。
A3Gの真上から七本の太い光が降り注いでいる。その光を浴びた航宙駆逐艦は、まるでナイフで切り取られたように艦の半分が消滅した。
航宙重巡航艦もただでは済んでいない。光に触れた部分のミサイル発射管が綺麗に消えていた。
「全艦応戦しろ」
A3Gのはるか上方一〇万キロから巨大な光の束が撃ち込まれている。A3G司令コーレッジ少将は叫ぶと
「敵は」
コーレッジはスクリーンビジョンに映る巨大な繭(まゆ)の様な艦が七隻で一つの輪を構成している。
その輪が七つある。その七つの輪が光を放っていた。その周りには、無数の謎の物体が護衛のように付いていた。
「全艦、直上の敵を撃て」
「第二艦隊本隊に連絡。我、交戦中。敵は謎の物体。すぐに連絡しろ」
「アッテンボロー大佐、待機の航宙戦闘機部隊を発進させろ。訓練中のアトラスは全機、敵に向かわせろ」
「いったいどこから来たんだ」
謎の物体の突然の出現にA3Gは混乱していた。
訓練中のアトラスは謎の物体まで一五万キロは離れている。その間にも巨大な光で航宙艦が消滅させられていた。
「主砲斉射」
コーレッジの声に攻撃管制システムが反応すると各戦闘艦に装備されている主砲が一斉に荷電粒子砲、レールキャノンを放った。
巨大な荷電粒子の束が、七つの輪を構成している謎の物体のいくつかに当たると謎の物体はシールドが無いように見えるほど、いとも簡単に消滅した。
「やったあ!」
管制フロアで歓喜の声が飛び交う前でスコープビジョンに映る謎の物体は、七つの各輪が攻撃を受けて動かなくなった艦を補うように新たに輪を構成すると光の束を放った。
「何っ!」
コーレッジは驚きの声を出すか否や。艦全体に光を受けた数隻の航宙駆逐艦と哨戒艦が消えた。
A3Gからも攻撃をするが、その度に残った謎の物体で輪の構成を変えて攻撃してくる。
何射目かの光が放たれようとした瞬間、いきなり横から図太い荷電粒子の束が謎の物体を串刺すように突き抜けた。二射続けて。
「アテナ大隊」
言葉を言うが早いか、再度荷電粒子の束が謎の物体の列を突き抜けた。直後、小さな謎の物体の群れがアテナ大隊の方向へ向かった。
「ミコト、近接戦闘。三機一隊で散開」
カレンの指示に無人アトラスが三機一隊で散開した。数えきれない程に無数の謎の物体が向かってくる。
僕達は二機で謎の物体向かった。アトラスの五倍もの大きさがありながら機動性はアトラスⅢ型と変わらない。
「すごい」
カレンは、攻撃をしかけながらその機動性に感心していた。数千機はいるのではと思うくらいの数に九六機のアトラスⅣ型が奮戦していると
「野郎ども。アテナだけにかっこいいところを取られるんじゃね。航宙軍には、俺たちもいるってところを見せてやれ」
「「「おうーっ」」」
アッテンボローのヘルメット一体型のスピーカに一六八〇機のアトラスのパイロットの声が聞こえた。戦場はまるで数千機の戦闘機が飛びまわる様相を呈していた。
「A3G2、右舷展開」
「A3G3、左舷展開」
「A3G4、下方展開」
「撃てーっ」
コーレッジの声にA3Gの全艦が大きく食虫花のように広がったと思おうと一斉に主砲を斉射した。
巨大な荷電粒子の束が七つの輪を構成している巨大な謎の物体に向かった。すでに一つ一つの輪は、幾度のかの攻撃を受け、七隻の構成ではなくなっている。
一瞬、スコープビジョンが光量を落としたのかと思われる位の光が輝くと少し経って七つの輪の光景が現れた。
ほとんどが半壊状態になっている。それでも輪を再度編成しなおそうとしている。
「間をおくな。編成し直す前に攻撃しろ」
コーレッジの声に、再度巨大な食虫花の様なA3Gが主砲を斉射すると、また、強烈な光が輝いた。
「これは」
とても荷電粒子による爆発とは思えない程の光だった。
やがて、その光も消えるとほとんど構成できなくなった巨大な謎の物体が残っていた。スコープビジョンの右方向を見るとアトラスと戦闘していた謎の物体も大方が片付いていた。その映像に満足感を覚えると
「全艦、少しでも敵が、また輪を構成しようしたら、遠慮なく攻撃しろ」
そう言ってからコーレッジは、
「第二艦隊本隊に連絡。我、敵を攻撃。七割を撃破。残り三割は、攻撃の意志が見えず。指示を乞う。すぐに送れ」
「はっ」
二時間後、第二艦隊本隊が到着した。それまでにA3Gは、攻撃を仕掛けようとした巨大な謎の物体二隻を撃破した。
四九隻いた巨大な謎の物体はA3Gからの攻撃で六隻まで減らされていた。
―――――
次回をお楽しみに。
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