第49話 原子分解フィールド(1)
第二艦隊A3G部隊は、
アガメムノン級航宙戦艦八隻、
ポセイドン級航宙巡航艦八隻、
アルテミス級航宙母艦八隻、
アテナ級航宙重巡航艦一六隻、
ワイナー級航宙軽巡航艦三二隻、
ヘルメース級航宙駆逐艦四八隻、
ホタル級哨戒艦四八隻、
タイタン級高速補給艦八隻で編成されている。
更に、航宙母艦毎に補用一八機を含む二一〇機のアトラスが搭載されている。
僕達が率いる自律航宙戦闘機部隊アテナ大隊を搭載する航宙母艦アマルテアは、このA3G部隊に一時的に組み込まれた。
他の航宙母艦と違うのは、発着管制システムが僕達のアトラスⅣ型以外は、すべて自動だということだ。
アマルテアの発着管制官に任命された岡田少尉はなんか、寒々しいなと感じていた。
通常であれば、発着管制室は、八人の管制官が三交代で行う。アトラスの発着の度に緊張を強いられるからだ。
ところが、人が操縦するアトラスはこの艦では、僕達の二人だけ。後は、無人機だ。
故にアマルテアの発着管制室は岡田を含めて五人しかいない。人間の発着管制官は岡田少尉一人だ。
幸い、発着管制室以外は、整備担当も含め、他の航宙母艦と同じなので、艦全体としては、搭乗員はそれほど変わらない。
食堂に行ってもレクルームに行っても他の艦と同じようにいる。
だが、河井少佐は所属がラインなのでいない。それも岡田少尉には、寒々しさを感じさせる一因かもしれなかった。
他の航宙艦と最も変わったのは、パイロットウエイティングルームも航宙機指揮所もないところだ。
従来のそこは僕達のウエイティングルーム、モニタールームそしてコントロールルームが兼用になっていることだ。
「ミコト、二人で使うには広いね」
「うん、でも仕方ない。僕たちだけだもの。でもレコーダールームが一緒になったのはいいね。それに航宙状況も把握できるし」
「そうね、確かに便利だけど」
二人で話していると突然、ウエイティングルームの天井近くの壁にあるランプがブルーの点滅を始めた。他の航宙母艦のアトラスと同時訓練が始まったのだ。
「ミコト行くよ」
「うん」
二人は、すぐ隣にある発着庫に行くとラインから一緒の整備員が、二人を待っていた。整備員は、顔が緊張の中にほほ笑みを醸し出しながら待っている。
すぐにアトラスのパイロットシートに滑りこむとパイロットスーツの二か所のインジェクションにケーブルが差し込まれたのを確認して、自分もヘルメットにあるインジェクションにケーブルを差し込んだ。
アトラスのパイロットシールドが閉じられるとアトラスのカバーシールドが両脇からせり上がる。
「アテナワン、カレン少佐、他四八機、発進準備完了」
「アテナツー、ミコト少佐、他四八機、発進準備完了」
「アテナワン、エアーロック解除、発進どうぞ」
「アテナツー、エアーロック解除、発進どうぞ」
岡田少尉の可愛い声がヘルメットに届くと、いつもながらの強烈なダウンフォースで射出された。
「ミコト」
カレンは、いつもと同じように自分の意志をミコトにつなげた。
カレンの率いる無人機アトラスは、ジュンとサリーを含めて二四機だが、電子クローンカレン二世が率いる二四機もいる。ミコトと電子クローンミコト二世の中隊も同じだ。
僕達率いる四八機とカレン二世とミコト二世率いる四八機が同時に左右に分かれるとデルタフォーメーションのまま、急上昇した。
五千キロ上昇した後、五万キロ前方に展開する八隻の隻の模擬航宙戦艦目指して急降下する。
まるでコピーしたように両方に分かれた四八機がアトラスⅢ型とは次元の違う速度と編隊で四万キロまで接近すると僕達の編隊がシンクロモードに入った。
それぞれの電子クローン編隊も同様にシンクロした。カレンはジュンとサリーと一緒にシンクロすると他の無人機が三機一組でシンクロした。
一二組が密接しながら三角形を四つ作る。ミコトの編隊も同様だ。直後信じられない太さの荷電粒子の二本の束がトルネードのようにそれぞれ二隻の模擬航宙戦艦に向って行った。
側面に全展開しているシールドがいつもなら少し耐えるが、あっけなく敗れると装甲に突き刺さった。
一瞬にして内部に侵入したと思うと一瞬艦が膨らんだ。そして間をおかず反対側に突き抜ける。
残されたのは大穴を側面に開けられ、機能しなくなった模擬航宙戦艦が二隻横たわっていた。
旗艦シューベルトのスクリーンビジョンを見ていたコーレッジ司令は言葉が出なかった。
射出されてから一〇分、アトラスⅢ型はまだ模擬航宙戦艦に取りつくこともできないうちに二隻を沈めた。
コーレッジは、恐れを感じていた。強すぎる。そんな感情が心に芽生えていた。
「アッテンボロー大佐、ミッションコンプリート。現宙域で待機します」
アッテンボローは、カレンからの報告に言葉が出なかった。私の部下、八四〇機は、まだ、攻撃もしていないのだぞ。ここまで差があるとは。
圧倒的な強さを見せつけるアテナ大隊に言葉を完全に失っていた。
『ミコト、ちょっとやりすぎたかな』
『うん、僕もそう思う』
『次の訓練からは、もう少しやり方変えようか』
『そうしよう』
二人が、いつもの会話でフレイシア星系のカイパーベルトの付近の訓練宙域を航宙していると
『カレン』
『ミコト、直上』
アテナ大隊は二四機毎に四方に急激に前方展開しながらその場から遷移すると巨大な光が今までアテナ大隊がいた場所を通り過ぎた。
―――――
次回をお楽しみに。
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