(56)甘味②
~ノーヴァ目線~
サーヤは、不思議な子。
全然子供らしくない、まるで大人みたいな子供。
年上のはずのジャックの方が年下に見えるぐらい、サーヤは大人しくて静か。
子供らしくなくて、礼儀正しい。
そして、仲良くできるかわからない子。
俺は、仲良くできる気がしない。
何を話せばいいんだろう?
セレスみたいに服が好きなわけでもない。
副団長みたいに教えるのが得意なわけじゃない。
ジョゼフみたいに大人じゃない。
団長みたいに安心感があるわけじゃない。
何も共通点がない。
俺は、仲良くなりたい。
興味がある。
でも、どうすればいいのかわからない。
ラーグに相談する?
でも、ラーグは関わりたがらない。
わかっているのは、甘いものが好きなこととあの子は自分から人に関わろうとするタイプじゃないこと。
「ここには、どんな甘いものがあるんですか?」
サーヤと話していれば、サーヤが首をかしげながらそう言ってきた。
聞いてきた内容が、俺の好きなことだったからうれしくなった。
「う~ん…………みんな手の込んだものばっかり。【神人族】の人、天才だよね」
「【神人族】?どういう種族なんですか?」
「…………ジョゼフが教えてくれる。まあ…………文化の根っこみたいな人?」
副団長が教えていないんなら、たぶん言語の時に教わるんだと思う。
【神人族】の人は、いろいろなものを教えてくれた。
でも【神人族】の人が教えてくれたお菓子は、みんな難しいものばかりでそれを作るにはある程度修業がいる物ばかり。
ケーキとかいろいろ。
ケーキなんてとっても綺麗だけど、自分では作れない。
それが、かなり悲しい。
自分で作れば、きっともっとおいしいだろうに。
「…………手の込んだものばかりというのは?」
「うーん、必要な道具が多い…………作るより買った方が簡単」
「え、ホシガキとかサツマイモの蒸しパンとかは?」
サーヤが何を言っているのかわからなかった。
サツマイモは、お菓子じゃなくて野菜。
硬くて、あんまり好きじゃない。
それに、ホシガキって何だろう?
柿っていう果物があるのは知ってる。
熟せばとっても美味しいけど、形が崩れやすいのが難点なんだよね。
硬いのもおいしいけど、熟しているものの方がもっと甘い。
渋いのもあって、あれはおいしくないから捨てる。
それに、ムシパンってなんだろう?
パンって、朝食に出てくるパンのことだよね?
あれ、お菓子じゃないよね?
「サツマイモ…………芋だよね?お菓子になるの?あと、ホシガキって何?柿の種類?」
「ホシガキは、紐と柿さえあれば簡単にできます。サツマイモの蒸しパンは…………まあ手の込んだというよりは子供でもできるものです」
「へ~、サーヤすごい」
サーヤはすごい。
俺が知らないお菓子をたくさん知ってる。
子供でもできるってことは、俺にもできるかな?
ラーグでも?
ラーグは、普通に料理はできるけど手先が器用ってわけじゃないからお菓子は作れない。
お菓子って、細かいものが多いから。
ラーグは、俺が甘いものを好きなの知っていて申し訳なさそうだった。
ラーグもサーヤと仲良くなれば、元気になるかな?
「あとは…………チョコレートを使ったお菓子とか?」
「すごい!サーヤ、すごい!チョコレートって、板の形の奴以外にも食べ方あるの!?」
すごいことを聞いた!!
チョコレートは甘いけど、板の形しか無くて食べにくい。
任務の時とかも食べたいって思うけど、板の形だから動くと割れたりして余計に食べにくくなる。
そんなチョコレートを使ったお菓子!?
どんなものだろう?
もし今の形よりも持ち運びしやすかったら、任務でも持っていけるかな?
そしたら、もっと任務頑張れちゃう!!
「ねぇ、サーヤ。休みの時、一緒に作ろうよ!ラーグには、許可貰うから!!」
そうだよ、ラーグにも手伝ってもらおう!
簡単だって言っていたし、もしかしたら手先が不器用なラーグでも覚えれば作れるかもしれない。
「ラーグ…………さん?」
「あ、会ったことなかったっけ?ジョゼフの義理の息子で、料理人。サーヤのゾウスイもラーグ作。ラーグ、甘いもの好きなのに甘いものを作るのだけは不器用なの。だから、簡単なのがあるのなら教えてほしい」
「え、あ、はい」
ちょっと興奮してサーヤがびっくりしちゃったけど、それぐらい嬉しかった。
ラーグは…………うん、どんなことでもいいから頑張って説得しよう!!
だって、ラーグにも得になるだろうし。
それにサーヤの反応からして、ラーグはまだサーヤに挨拶していないみたいだし。
ラーグの過去は知っているから気持ちはなんとなくわかるけど、さすがに挨拶無しっていうのはよくない。
ラーグはいい子なんだから、サーヤが嫌われてるって勘違いしちゃうかもしれない。
それにセレスのことも聞いたけど、サーヤならラーグのことも気にしないかもしれないし。
よーし!
気合いを入れて、ラーグを説得しに行くか!
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