(24)羞恥

~紗彩目線~



 目を覚ますと、ぼやけた白い天井が見えた。



 何か、夢を見ていたような…………あれ?

 なんの夢を見ていたんだっけ?


 上半身を起こして首をかしげていると、膝に置いていた手の甲に何か冷たいものが落ちたのを感じた。

 手の甲を見れば雫がついていて、頬を触れば濡れていた。


 …………私、泣いていたの?


 いや、本当になんの夢を見ていたんだろ?


 周りを見回してみれば、白いシーツのベッドに私はいるようで周りは白いカーテンで覆われていた。

 なんていうか、学生時代の保健室を思い出す。


 キョロキョロと周りを見渡していると、ふと思ってしまう。

 …………私、なんでベッドの上で眠っているんだろう?


 よし、思い出そう。


 確か、私は気付いたら異世界にいた。

 変な牛みたいなのに襲われて、狼さんたちに助けられた。

 それでその後狼さんに保護されて、医者のジョゼフさんに診察することを言われて…………思い出した。


 子供みたいにピーピー泣いたんだ。


 思い出すと同時に恥ずかしさが込み上げてきて、思わず顔を両手で覆ってしまった。


 人前で泣くなんて、成人女性にあるまじき行動。

 しかも、いろいろと迷惑をかけているであろうジョゼフさんにおもいきり慰めてもらっていたし。


 本来する必要のなかった診察に加え、泣いている成人女性を慰める。

 どんだけ、迷惑を掛けているのだろう私は。

 『穴があったら入りたい』ってこういう時に使うんだと、身をもって知った瞬間な気がする。



「…………とりあえず、ジョゼフさんに会ったら土下座して謝罪しよう。ただでさえ、本来ならしなかった私の診察と言う無駄作業をすることになったんだから」



 そう呟くと、ガチャリという音が響いた。

 音からして、たぶんこの医務室のドアを開ける音だと思う。

 誰かが入って来たのだろうか?


 よくよく考えれば、ここは医務室だ。

 学校で言う保健室のような部屋。

 怪我か体調不良の人が来たのかもしれない。


 それなら、早くおりてベッドを譲らなきゃ。

 怪我でも体調不良でもない私が、ベッドを占領するわけにもいかない。



 そう思いながらベッドから降りて、カーテンの布を掴んで横にずらせば茶色の何かを見つけた。


 よく見れば、茶色のなにかは茶髪の茶色の尻尾の人だった。

 …………人と言うよりは、たぶん狼さんの同類だと思うけど。


 私が見ていることに気が付いたのか、その茶色の人(?)はこちらを向いた。




『…………誰だ?』


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