ABRAM
「よし、急だけどアブラム。お前は国を出て、家族と別れて、お父さんの家から離れて、これから私が示す地へ行け。
お前はこれからめっちゃすげぇ人として名を広めて、祝福の基になってもらう。
お前が祝福する者は私も祝福する。お前を呪うやつがいれば私が呪う。
そしてお前が祝福すると言えばどんな輩だらうがお前によって祝福される。
どうだ? いい気分だろ?」
「え? あぁ、はい。分かりました……」
──────────────────
アブラムは妻サライと弟のロトと、全財産と、ハランで獲てきた人々を携え、カナンの地に到着した。
「よし、という訳でこれからこの地をお前の子孫に渡す!」
「おお、かしこまりました。なら私は貴方のために祭壇を築きましょう。えーっと……あと、東西に2つほど……これで良いかな!」
おぉう……なんかすげぇ即席感あるけどまぁ良いか。
「ここはネゲブか……んーでもここはちょっと気に入らないな。エジプト辺りに行こう。よし」
††††††
「あーサライ。これからエジプトに入るわけだが、一つだけお願いがあるんだ」
「ん? どうしたの? アブラム」
「私はお前のことはとても美しいと思っている……だからこそエジプトに入ったら、『私は彼の妻です』ではなく、『私は彼の妹です』と答えてくれ。
なんでかって? 今から会うのはエジプトの王様だ。つまりどどいうことか分かるよな? 多分、いや絶対私は殺されるッ!! そしてお前を私から奪い去るだろう……。
お願いだ! 私はお前が奪われるのも嫌だが、まず死にたくない!」
「すごい早口ね……わ、分かったわ。それで助かるなら……」
††††††
エジプトに入ると、エジプトの人々とまたその高官は、アブラムの妻サライの美しさに惚れる。
「私は彼の妹です」
「ほう……妹とな。ぐへへへへ。よろしい入ると良い。妹さんは私の家に来なさい。手厚く手厚くもてなそう」
エジプトの高官パロは女サライを手厚くもてなしたので、アブラムは多くの羊と牛、 雄雌のロバ、男女の奴隷にラクダを得た。
いやちょっと待てぇい! え? 何パロ君? 人の奥さん娶ろうとしてるとかどういうつもり? 殺されてぇの?
いや、処す? 今すぐサライから離れろおおおお! 疫病ぶちまけんぞゴラァア!
「ゲェッホ……! ゴホゴホ! あああああ! 神様、申し訳ありません! そんな、まさかアブラムの妻だったなんて……! アブラムウウウウ……どうして妹だなんて言わせたんだ! 正直に妻だと言ってくれれば、サライを娶ろうとすることも無かったのに!
もういい! もう良いから、お前の妻は返すから! 帰ってくれ!」
「いやぁ、自分殺されたくない一心だったんだけど……なんか、ごめん」
「思いっきり騙されたけど、このままで良いのかしら……」
「騙したのは悪かったけど、ね! 悪意は無いから!」
──────────────────
そうして高官パロは踠き苦しみながら人々にアブラムのことを伝え、その全ての荷物を持たせて送り去らせた。
次回『RIGHT and LEFT』
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