一時はどうなる事かと

ゆりえる

第1話 看護師時代の失敗から見えた闇

 少しドン臭かったけど、私、畑田美帆子は、普通に看護師の仕事をこなしていた。

 あの時までは......


 あの日は、当直で睡魔が何度も襲う中、下の階にウィルス検査用綿棒入った箱を運んでいた。

 アクビしながら階段を下っている時、階段のまだ上の方で足を滑らせ、思いっきり尻もちつきながら降下し、踊り場でやっと止まった。


「いたたたたた......」


 ぶつけて痣が出来てそうなお尻を何とか起こすと、運悪く、綿棒の入った箱は、私のお尻で下敷きになってしまっていた。


「やってもうた......」


 給料から損失分カットされないといいけど......。


 潰れた箱を開けると、個別のビニールパッケージに入った綿棒のほとんどが、ひん曲がってしまったり、ビニールが破けていた。

 潰れた箱を何とか綿棒を全て収納できる形に戻し、折れて散らばった綿棒を集めた。


 集めた綿棒を廃棄しようとゴミ箱に向かったが、夜勤で、他に人もいなく、急患も無く、暇だったから、つい好奇心がひょっこりと顔を出してしまった。


 折れた綿棒は、患者用には使用できないから、当然、廃棄処分だけど、そのまま、廃棄してしまうのはもったいない。

 せっかくだから、こんな機会でも無かったら出来ないから、ずっと気になっていた噂の真相を確かめてみるのも良いかも。


 今、世界的に猛威を振るっているのは、2020年くらいにパンデミック状態を迎えていたといわれる新型コロナウィルスによく似た『コロロウィルス』。


 噂というのは、何本かのPCR検査用の未使用の綿棒には陽性反応が示す『コロロウィルス』があらかじめ付着されているという事。

 ロシアンルーレットのようにその綿棒に運悪く当たってしまった人だけが、陽性となってしまうという仕組みらしい。

 なんでも、その疑惑の綿棒とやらは、陽性患者の鼻水のみならず、実は陰性の患者の鼻水はおろか、水や果物や野菜でも、陽性反応を示すとの事だった。

 

 もしも、噂が真実だとすると、そのロシアンルーレットのターゲットになった陽性患者があまりに気の毒過ぎる。

 

 看護師として働いている自分が、自分の仕事に対し誇りを持って携われるよう、兼ねてからその疑惑を何としても晴らしたいと思っていた。


 綿棒を全て個別のビニールから出し、そのままの状態で検体処理液に漬け、50本を横に並べてみた。


 15分後、全てが等しく無反応となるに違いない!


 その間、暇つぶしに、尻もちついて痛かったお尻をかばいながら、エクササイズをして待った。


 15分経過すると、なんと、50本中3本が、陽性反応となった!


 思い当たる節が有った......


 今まで、検査数に対し3/50という比率以下に、陽性患者が発覚する事は無かった。

 しかも、濃厚接触者として検査した、どう見ても無症状の健康な人も陽性となっていた。

 中には、本物のコロロウイルス感染者もいただろうが、本来は陰性のはずの人々もこの検査により、陽性患者扱いされる事となっていた事が、この実験で証明された!


 2020年の新型コロナウイルス感染症の爆発的な流行以来、まことしやかにささやかれ続けて来た疑惑だったが、ただのデマではなかったという事が判明した。

 私が、階段から落ちて、検査用綿棒の上に尻もちなどつかなかったら、気付かなかったはずだった。


 この事をどうしよう......?


 まずは、当直明けに、医院長に話そう!

 信じてもらえないかも知れないけど、伝えなくてはいけない使命感に駆られた。

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