第16話
「で、あんた本当に零式使えるの?」
「一応……多分?」
「今見せて」
ノルが両手を握りじっと見つめてくる。
解析しようとしているのか?
確かにリンよりノルの方が昔からそういった細かい作業は得意だった気がする。
だが、俺はここで実力を発揮するつもりはない。
それは俺がこの零魔団に入った理由にも関係する。
──
ぼんと指先から魔力塊が出るだけ。
「……この程度?」
だからあえてごく僅かな零式を発現させるだけ。
「ごめんなさい……」
「あのレイって名乗る男の正体は?」
「師匠です、でもここに来てから少し教えてもらっただけでほとんど話したことなくて。一応零式の基礎?みたいなものは身につけていたみたいなんだけど……」
「はぁ!?少しって1日よね!?それで零式が……クォーターエルフだから?何にせよ才能はありそうね」
俺は生前、2人に教えられなかったことがあった。
零式を完成させる上で重要であり、当時は伝えられるなかったこと。
零式は詠唱、発現の段階で停止させる為、その完成には素質以外に自身の強い意思、感情が必要だ。
「いいわ、その年で使えるだけ素質はあるわ。これから教えればいいだけよ」
それは言い換えれば想い、つまり……《愛や憎しみだ》》。
そんな馬鹿なと思うかもしれないが、自分自身の経験として確認していた。
俺の目的はリンとノルに愛を知ってもらう事、わざわざ憎しみを教える必要はないだろう。
2人から全く好かれることの無かった俺では出来なかったが、成長し周囲から信頼されているリンとノルなら可能だ。
今はまだ特定の相手はいないらしいが俺になら出来る。
最強の魔術を生み出した俺になら、恋のキューピッドなど簡単。
俺に出来ることは2人を陰から支え、真の零式に目覚めさせること。
それ以外もまだ完全ではない。
「これから色々教えて欲しいです、よろしくお願いします」
「かわ……じゃなく!仕方ないわね、どうしてもって言うなら教えてあげるわ」
「私はいつでも」
「何甘やかそうとしてんのよ、団長としての立場を考えなさいよね」
「嫌、私は好きなようにする。飴は私、鞭はリン」
「勝手に決めないで!私だって本当は飴を……とにかく!レイズは私が面倒見るから!」
「うわっ!ちょ!?痛い痛い痛い!!」
脇に抱かれて連れていかれようとするのをノルが足を引っ張り上半身と下半身がちぎれようとしていた。
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