落ちこぼれ王女とケモ耳魔術師

@tokino_kanata

第1話

「おい!そっちに逃げたぞ!!」

「捕まえろ!!」


そんな物騒な声が聞こえて来る。


またか…

この国ホワイリアは今日も今日とて荒れている。

強盗事件などもってのほか殺人なども度々起きているのだ。

面倒ごとに巻き込まれては獣人である私も危ない。

予定とは変わるがここから早めに立ち去らないと…

この国では獣人は身分が低い。

街中を見渡しても綺麗な服を着て健康的な身体付きをしているものなど誰1人いない。

目に入るのは奴隷として酷い扱いを受けている者。

物乞いをしている者。

そんな光景だ。

獣人は殺されても文句を言う人はいない。

いや、文句を言えないのだ。


「あーあ…何でこんなことになっちゃったんだろ」


私は誰に言うでもなく一人で呟く。

この国、この世界の情勢はかなり悪い。

全てあの王女が勝手に行動したのがいけないのだ。


そろそろこの街を出ることにしよう。

面倒ごとに巻き込まれる予感がする。

獣人の勘はかなり当たるのだから自分を信じるしか無い。

この世界で信頼できるのは自分だけだ。


耳を隠すためのフードを深めに被り顔が見えないように俯くと私は門の方向へ歩き出した。


ーーーーーーーーーーー


「ファイヤーボール!!!!!」


何で私がこんな目に。


面倒ごとには巻き込まれまい。と行動したつもりが絶賛巻き込まれている。


「炎の精霊よ。シルフィ・フォード・フランソワが告ぐ。ファイアウォール!!」


魔術で炎の壁を造り時間を稼ぐ。

先程の物騒な会話は今私の後ろにいる赤髪の女の子を殺すためのものだったらしい。

面倒ごとは嫌いだが目の前で困ってる人を見捨てはしない。

父に昔から目の前で困ってる人がいたら身を挺してでも助けろ、と教わってきたのだ。


(あーあ、これで私もお尋ね者か。)


そんな今更な事を考える。

これからどうしよっかなぁ…。


これからの事は後で考えるとしてとりあえずこの子を連れて逃げないとだね…!


「ねえ赤髪の君!私が時間を稼ぐから城門へ向かって走って!後から私も行くから!!」


後ろを振り返らずに声を張り上げて伝える。


「あ、ぁりがとうござい…」


ボソボソと聞こえるお礼を聞きながら私は杖を構える。


(大丈夫。これくらいの敵。今まで全部一人でやってきたんだから!)


ーーーーーーーーー


「お、終わった?」

あ、まずい。この台詞を言うときっと…


「こっちだ!!魔力感知器が反応している!!!」


沢山の人がこちらへ走ってくる音がする。

ほら、やっぱり…。

獣人の勘はこう言う時には凄いのだ。

もう一戦と行きたいが魔力は故欠しているし不利だ。

ここは逃げないと負けてしまう。

さらばホワイリア。

さらば、私の安泰な暮らし…



ーーーーーー


結論から言うと赤髪の女の子は無事だった。

城門に着くなり神聖魔法をかまされた事以外は…


「え、ちょっ、え???」


動揺が隠せない。私この子を助けたんだよね?


「貴方何者??敵なら容赦しないから!」

とりあえず和解をしないと…!


「落ち着いて!私は君を助けただけだから!!」


誤解されたままだと困る。慌てて弁明をするのだった。

私の運とてつもなく悪くない?!

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