第4話 守る

「……………………………」


都立空宮小学校校長 炎道 快は何も言わずに見ていた。

素手で割られたシールドをだ。由良を疑うわけではないがやはり実物を見ないと信じれなかった。だから教室でやったことを再度実演してもらった。

そして間違いなく、わずかにだが『纏っていた』

優秀な由良ですら気づかないほど微弱に、炎道がかろうじて感じれるほどの魔力で。

流石に流の親子にこのことを告げないわけにはいかない。


「お父様、お母さま、落ち着いて聞いてください。お子さん、流君は間違いなく『纏う』が使えています。しかも無意識で」


「やっぱり…」


滝がため息をつく。

花はもう不安でびくびくしている。それでも流のことを案じて聞く


「『纏う』って何かデメリットがあるのですか?体に負荷がかかるとか…」


これには炎道が応える


「いや、特にデメリットはありません。体への負荷は多少かかりますが運動しているようなものと言われています。」


これには花は胸をなでおろした。


「しかし珍しい能力であることに変わりはありません。他の人からも好奇の目で見られたり、嫉妬をうけたりするでしょう。できるだけ私も気にかけますがやはり家族の方が支えてあげてくださることが何よりです。」


由良もあまり不安を与えすぎないように言葉を選びながら今後の課題について告げる。


「わかりました。今後ともよろしくお願いします」


そういって花は頭を下げた。滝も合わせる。


「今後の方針としては隠すことはもう無理でしょう。クラスメイトとその親には見られてしまっています。すぐ広まっていると考えます。なのでいっそのこと使ってください。使いこなせるのがベストです。すごい人と他の子達に思ってもらえればいいと思います。怖いのはマスメディアですね。そこに関しては学校内なら私たちの守れる範囲ですが、登下校中の見回りはすきを突かれる可能性が大いにあります。家族の方の送り迎えが一番の安全策だと思いますがご都合は大丈夫ですか?」


「私が行きます」


名乗りを上げたのは花だった。


これには滝も驚きそして心配する。


「大丈夫なのか?」


「任せて」


「では校内では我々が、登下校中などはお母さまが流君を最大限見守るということで。由良先生もお願いします」


と炎道が締める。


「了解しました」


由良も応じて、衣手一家、由良、炎道の話し合いはお開きとなった。


が、衣手一家が退出した後の校長室では先程よりさらに重苦しい空気となっていた。


由良が切り出す


「炎道校長、大事なところを、最大のデメリットを隠しましたね」


「6歳の子に、子を大切に思う親に、聞かせる話ではないと判断したのですよ」


「私もその考えを責めれません。正しいと思いますし、実際気づいていながら黙っていましたから。でも、何も知らずに襲われることになるのでは…対策を少しでも家族の方と協力して練れたら…とも思います。」


「確かに、最大のデメリット…『纏う』はデメリットがなく貴重な能力であるがために世界中から暗殺誘拐等の危険がある。この魔法が軍事力につながる世界では。しかし我々教師の役割は子供を守ることです」


「わかってます、でもこれで十分な対策とはとても…」


「あと二つ特大の手を残しています。『剛氷の鬼』のライバル、校長という立場、フルに使います。」


「何する気ですか?」


「まず国からの護衛を依頼します。これは校長の私が事情を話せばまず間違いなく通るでしょう。日本政府も流君という逸材は逃したくないはずです。そしてもう一つ、この空宮小学校の学区には、そして今年の入学生には白雪姫がいます。」


「…!!!??まさか…!」


「私の親友でありライバル、『剛氷の鬼』こと雹霧 剛にもできる限りの護衛、支援をお願いします。現役を退いたとはいえ日本最強です。そしてそのための架け橋が運よくいます。剛の孫娘、雹霧 白雪しらゆきが」


「つまり私は担任という立場から流君と白雪姫をくっつける、仲良くさせる小人みたいな役割をしろと?」


「はい。お願いします。物語の小人は7人いましたがこの白雪姫にはそして王子様にはあなた一人しかいません。頑張ってもらいます。と言っても白雪姫は1組ですから2組の流君と合同授業で組ませればいいでしょう。根回しならぬ、風回しをお願いしますよ。」


「今度飲み奢らせますね」


「魔法の稽古もつけてあげますよ。面倒かけますね由良先生」


「次こそ吹き飛ばします」


「楽しみにしています。アッちなみに校長室から最悪逃げようと画策していたようですが私の火のほうが早いと思うのでお勧めはしません。」


 なんでわかるんだよ!!!

由良は冷や汗かきながらも平静を保ち


「それでは失礼します」


校長室を後にした(逃げた)。


一方の衣手家では滝が浮かない顔をしていた。

当然花に感付かれるが濁した。そしてベッドの中で考える。


「デメリットがない…プロでも『纏う』が使えるのはほぼいない。しかも若くて40過ぎだ。6歳はぶっちぎりの最年少…。そして魔法の力がリアルに軍事力につながるこの世界であの才能は…波乱をもたらすのでは?」


炎道と由良が隠した最大のデメリットに薄々気づき、そしてその上で、妻と息子には話せなかった。皮肉にも炎道と由良の二人と同じ判断をしたのである。







そして…







日本政府直轄暗部魔法部隊 護衛任務命令 

メンバー

リーダー:佐藤さとう 光矢こうや

副リーダー:殻野かくの ひじり

構成員: 第1~3部隊


任務内容

都立空宮小学校に通う衣手 流を陰で極秘護衛。



「おっもしろい任務ですね光矢さん。しかもこの流ってやつすこしだけど『纏う』ができるって。会ってみたいなー、模擬戦できないかなー。」


「お前は極秘という文字を読んでないのか?護衛対象の前に出ていって良い訳ないだろ。大切な人材の護衛だもっと真面目にやれ聖」


「相変わらずお固いな~。こんだけメンツ揃えてるなら大丈夫ですよ。てか俺がいるなら大丈夫ですよ守り切って見せます。」


家族が、学校が、日本が流という才能を守るために、それぞれの思惑を信念を抱き動く。


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