魔法少女マッシヴ★チョコリーナ 〜何をしても痩せなかった私がこの方法で痩せました!〜

宇部 松清

第1話 千代子、振られる

「ごめん。おれ、モデルみたいにスレンダーな子が好きなんだ」


 そんな言葉で振られた。

 私の名前は『松渋まつしぶ千代子ちよこ』、二十一歳の大学生だ。

 

 毎週のようにラーメンの食べ歩きに行ったり、新作コンビニスイーツが出たと聞けば競い合うように買って、感想を述べ合うような関係だった私達は、周囲からも「食べることが趣味のベストカップルだね」なんて言われていて、彼の方でもまんざらでもなかったはずだった。


 友人達との飲み会の後、二人だけで締めパフェ目的でバーに行き、そのまま彼の部屋に泊まったこともある。もちろんそういうことはしなかったけど、メイクを落としても全然引かなかったし、部屋着も貸してくれたし。「彼シャツだねー」なんて冗談めかして言ったのも否定しなかったくせに。


「どちくしょう! んなぁにがモデルだ、スレンダーだ!! お前、いっぱい食べる女の子って可愛いよねっていってたやろがいぃっ! 痩せの大食いなんてな! リアルにはそうそういねぇんだよ! あんなもんファンタジーだわ!」


 レディースデーで二時間食べ放題千五百円(ソフトドリンク付き)のビュッフェの帰り道である。


 人気のない路地を歩きながら、パンパンに膨らんだ腹をさすりつつ(最後のアップルパイはさすがに余計だった)、近所迷惑なんて知るか、とばかりに声を張り上げた。こちとら失恋しとるんじゃい。あっ、次の戦隊ヒーロー、『傷心戦隊失恋シトルンジャー』なんてどうだろアハハ、なんて思いながら、素面しらふのくせによたよたと歩く。


 確かにちょっと、いやかなり肥えたという自覚はある。

 高校生まではどんなに食べても太らなかったのに、地元(田舎)を出て都会の大学に進学したら、テレビや雑誌でしか見たことがない有名店があるもんだから、あっという間に趣味が『食べること』になってしまったのである。


 それに加えて、毎日自転車で片道三十分の高校に通い、定期的に体育の授業もあったあの頃とは違い、大学はアパートから徒歩五分もかからないし、体育だってない。まさかそれくらいのことで、とも思ったが、その『それくらいのこと』が案外大きかったことを痛感した。


 あっという間に体重は、二キロ、三キロと増え、服のサイズも上がった。ブラジャーがきつくなって、「やだ、成長期!?」なんてるんるん気分だったが、成長したのは主にトップではなく、アンダーだった。カップはむしろダウンした。つまり、ただただ胴回りが太くなっただけである。クソが。


「こうなったら、何が何でも痩せて、あいつを見返してやる!」


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