第7話 時間も、場所も超えて伝わっていること
Sが職場にピアスを付けてきた。
いつもは透明のピアスをしていたらしい。かなり目立つ。純金とのこと。
「アナナイノカ?」
「私は、ピアスしてない。最近の若い人はよくしてるけどね。日本人、年齢が高い人はあまりピアスしてない。」
「ワタシノオカアサン、オバアサンピアススル」
ピアスは欧米の文化かと思っていたので驚いた。
ピアスと聞くといつも「親からもらった体に傷を~」という呪文のようなことばが自動で浮かび上がってくる。
仏教か儒教かの教えからくるものだったはず。
自宅で調べてみると、儒教の経典、孝経の中の文章がもとになっているようである。
身體髪膚、受之父母。
不敢毀傷、孝之始也。
Sにこの文章を見せてみた。
「私、ピアスしない。理由はこれだ。古い中国のことば。」
「アー。コレシッテル。センネングライマエノモノダナ。」
中国から伝わってきた話が、日本に暮らす私の生活の中で残っている。
私の先祖やこれまでかかわってきた人たちの中で継いできたものを思う。
誰に言われた!とは覚えてはいないが。私の親だけでなく、親せきや学校の中でも、私に伝えられたのだろう。
自分の外見を選択する基準となる考え方が生まれた国。
中国語を勉強し始めて、中国と自分のつながりに気づく。
長い歴史を思い、訪れたことのない海の向こうの国を思う。
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