君に恋して、雪が散る

もちこ先生

第1話

誰でもよかったのかもしれない

私が、その日を生きれるのであれば

別になんだってする

「今日、時間ありますか?」

少し、谷間をちらつかせてこうやって質問すれば

「困ってるみたいだね。どこか店寄ろうか」

そして、軽くご飯を食べた後ホテルに行く流れ

慣れすぎて、最近は自分の演技力が低下してるのでは

なんて、思うことがあるくらいの余裕ができてしまった

「さむ」

12月に入り、雪がちらつき始めた

私には、帰る家なんてないから冬場は命懸け

こんな人生、生きてる意味なんてあるのかな

なんて、最初は思ってたけど、もう、どうでもいい

私が死んでも誰も悲しまないし、気付かれもしないだろうな

別に悲劇のヒロインを演じたいわけでもない

私がこんな人生を歩くようになったのは

他でもない、あの両親のせい

母親はホスト通い、父親は無職のニート

なんでこの二人が結婚して、私が生まれたのか

ほんとに意味がわからない。

「今日はどの人にしようかな」

外はマイナス3度らしいから、早く見つけないと

私が今日寝る場所を勝手に用意してくれる人

「今日はあの人にしようかな」

見た目は30後半くらいのサラリーマン

仕事終わりで、疲れたって顔してる

いい鴨見つけた、そう思っていつもの

「今日時間ありますか?」

「何君?高校生?」

「はい、でもお兄さんかっこいいから声かけちゃった」

ここで、谷間を見せつけてゲームセット

「今日はもう遅いから、早く帰んな」

あれ、いつもは引っかかるのにおかしいな

それもそうか、私はまだ高校生

普通に犯罪だし、今までがラッキーだっただけ

調子に乗ってたんだな、

それでも、この人逃したら今日は野宿

それだけは避けたい

「私、家出してて帰る場所ないの」

「今日だけ泊めてくれない?」

「家出か、高校生を俺んちになー」

もう、そういうのいいから早く泊めてよ

「やっぱ無理だわ。普通に捕まるし」

「まあでも、これで」

そう言って、渡してきたのは一万円

「これだけあれば、十分だろ」

私を見るその目は、とても冷たい目だった

あの人達と同じ目

「いらない」

そう言って私は、お金を受け取らずその場から逃げ出した

そんな目で私を見ないでよ

「くしゅん」

寒い、やっぱり冬の野宿は無理があるかな

受け取ればよかった一万円。

でも私は後悔はしてない。あんな目で渡されるお金なんて

いらないよ

「ったく、こんなところで何をしてんだよ」

聞き覚えのある声

「なんでここにいるの?」

それは、さっき声をかけた人だった

「そりゃ、あんな顔で逃げ出されたらな」

「ほっといてよ」

正直、追いかけてきたことにはびっくりしてるけど

「今日はここに泊まるからいいよ」

あの目を思い出すから、この人とはいたくなかった

「今日、俺の家に泊まるか?」

「ほっといてって言ってるじゃん」

そうだよ、私のことなんてほっとけばいいんだよ

誰にも迷惑なんてかからないんだし

「風邪引くだろうし、今日は俺の家に泊まれ」

「だから、、いいって」

「これは命令だ。今日のお前のホテルは俺の家だ」

命令ってなに。誘い方めっちゃダサいけど

そう言ったこの人の目は、とても優しかった

「じ、、じゃあ、お願いします」

今日はなんとかなりそう。だけど、明日はどうしよっかな

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