第4話 ウッドマンを倒し、木材を手に入れる
俺達の目の前にウッドマンが姿を現した。ウッドマンは大して強いモンスターというわけではない。LVで言えば10程度のモンスターだ。だが、戦闘用ではないスキルを持った俺が相手にするには十分すぎる程の強敵であった。
「……くそっ! やっぱり北の辺境は甘くなかった! タダで木材が手に入るわけがなかったんだ! こんなところだろうと思ったよ!」
俺は嘆いた。
「どうしましょうか? グラン様? 逃げますか?」
「逃げてどうなるんだ……こいつを倒さないと木材は手に入らない。これから野宿でもするつもりなのか?」
「それもそうですが……倒せるんでしょうか?」
「やってみないとわからないだろ……」
不意打ちをしたからあのウォーウルフを何とか倒す事ができた。だが、このウッドマンはこちらが不意打ちをかけられた形だ。相手は万全の体勢である。ニヤニヤとした笑みを浮かべ、余裕綽綽といった様子だった。
だが、闘うより他になかった。闘う事以外で活路を見出す事はできないのだ。俺は【建築(ビルド)】スキルを発動する。
「『ビルドハンマー』」
俺は巨大な木槌『ビルドハンマー』を作り出した。
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」
俺は『ビルドハンマー』を両手に襲い掛かる。しかし――だ。
ペシッ! 俺はウッドマンの触手に弾かれた。
「うわああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!」
ドーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン!
俺は弾かれた。ゴロゴロと転がり……やっとの事で止まる。
「グラン様ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!」
無様にやられた俺に、リノアが駆け寄ってきた。
「だ、大丈夫ですか!? グラン様!?」
「だ、大丈夫じゃない……痛い……全身がズタボロだ」
なんて無様な恰好なんだ。女の子の目の前で、やられるなんて。恥ずかしくて死にそうだ。俺が実家を追い出されたのも納得できる理由だった。
俺はそう、闘いにおいて余りに弱いのだ。こんな敵、『剣神』のスキルを授かった義弟——ヘイトであったのならば一撃で倒している事だろう。
「待っててください……今、癒しますから」
「癒しますって……どうやって」
俺は今の攻撃により、大きなダメージを負っていた。20あるHPが残り5まで……瀕死の状態まで落ち込んでいたのだ。
しかし、癒そうにも回復薬(ポーション)の類は0だったのだ。
「回復魔法(ヒーリング)!」
リノアは俺に回復魔法(ヒーリング)をかけた。みるみるとHPが回復していき、全回復する。失われた力が戻って来て、漲ってきた。
「ありがとう……リノア。でもどうしてだ? どうしてリノアはそんな魔法が使えるんだ……」
「私は魔法が使えるスキル……【大賢者】のスキルを神より授けられているのです」
「な、なんだって! 【大賢者】だって!」
そうか、スキルを授けられるのは人間には限らないのか……エルフにも。もしかしたら、獣人だってスキルを授けられるのかもしれない。神はスキルを授ける……という機会だけは公平に設けているのかもしれない。その結果授けられるスキルは不公平極まりないものではあるが……。
ちなみに【大賢者】とは一通りどんな魔法でも使える、レアスキルだった。成長し、LVが上がっていけばさらに強力な上位魔法も使えるという、強力なスキルだった。
どうしてこうも、俺の周りには良いスキルに授かった人間が多いのか……。いや、彼女は人間ではなくエルフではあるが……。
「はい……辺境の森に辿り着く頃にはMPが底を尽き、まともに使えなくなっていましたが……多少は休めたので自然回復しました」
リノアはそう語る。俺なんかより余程彼女の方が闘えそうだった。
「炎魔法(フレイム)は使えるのか?」
「一応……威力に自信はありませんが」
ウッドマンは木で出来ている怪物(モンスター)だ。見た目通りよく燃える。火属性が弱点なのだ。
「使えるなら上等だ。俺が奴を引き付ける……だからその間に炎魔法(フレイム)で攻撃してくれ」
「わ、わかりました」
俺はビルドハンマーを手に持ち、立ち上がった。そして、奴に襲い掛かる。
「うああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!」
破れかぶれの特攻をしかける。先ほど一撃貰った事で、俺は何とか即死せずに耐えられる事を知った。【大賢者】というレアスキルを持っている彼女ではあるが、高位魔法である蘇生魔法(リザレクション)はまだ習得できるレベルにはなっていないであろう。
即死させられたら復活する手段はないと見た方が良さそうだった。
キケエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエ!
ウッドマンは奇声を上げて、俺に触手攻撃を仕掛けてきた。
ペシーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー----------------------------------------ン!
俺は成す術もなく、触手攻撃をモロに食らう。
「うわああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!」
俺は攻撃を食らい、再び吹き込んだ。悲鳴を上げ、無様に転がり続ける。
「グラン様!」
「……何をやってるんだ! リノア! 俺に構うな! ウッドマンが攻撃した後、隙が出来る! そこに炎魔法(フレイム)の魔法を放つんだ」
「は、はい! わかりました! 炎魔法(フレイム)!」
リノアは慌てて炎魔法(フレイム)を放った。燃え盛る紅蓮の炎が矢のようになり、ウッドマンに襲い掛かったのだ。
グオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!
ウッドマンが長い悲鳴を上げた。
「やったか……」
「グラン様、今、回復魔法(ヒーリング)をかけます……」
「……ああ。ありがとう、リノア」
「回復魔法(ヒーリング)」
俺は回復魔法(ヒーリング)で治療される。
……だが、甘かった。炎で燃え盛りつつも、ウッドマンはニヤリと笑みを浮かべた。まだ生きていたんだ。
「どくんだ! リノア!」
「えっ! きゃっ!」
俺はリノアを尽き飛ばす。触手攻撃がリノアを貫かんとした。
俺は再度、ビルドハンマーを手に取り、ウッドマンに攻撃を仕掛ける。
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」
俺はウッドマンに叫びつつ、襲い掛かった。いける! 炎魔法(フレイム)の攻撃でダメージを負ったウッドマンの動きは鈍っていた。もう俺を触手攻撃で叩き落す事はできなかった。
ドーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン!
俺のビルドハンマーがウッドマンに炸裂する。
グオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!
ウッドマンは長い断末魔を上げて、果てた。
変わりとして、木材のアイテムをドロップする。
俺は木材を入手した。
そしてアイテムポーチに入れる。
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入手アイテム
アイテム名、木材×10。詳細。基本的な建築材料。建物の建築など、様々な用途に使用できるアイテム。レア度低。
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「やりましたね! グラン様! お見事ですっ!」
リノアは喜んだ。
「ふう……何とかなかったか。色々あったけど、無事に必要な量の木材を入手する事ができたな」
「はい! そうですね!」
「拠点となる場所を決めて、家を作ろうか……三日も工事すれば作れると思うよ」
ウッドマンを倒し、木材を手に入れた俺達は早速住居を建設する事にしたのだ。
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