第15話 婚約者の職場見学[中](メリル視点)
「お嬢様!あぁ、なんてことを。すぐに殿下を追いかけてください!」
ラサーラが私にマクリッド様を追いかけろというがそんなことをする必要はない。彼は私の大切な人であるラサーラを泣かせた最低の人なのだ。ラサーラが今のことでペンルイス家に不利に働くとでも考えているのだろう。
確かに、こんなことをしでかした以上、王家との婚約は破棄となり、ペンルイス家は厳しい立場に立たされるかもしれない。私も、責任を取って家から追放されてしまうかもしれない。それでも、私は彼女を泣かせたマクリッド様だけは許すことが出来なかった。
「ラサーラ、いいのよ、私のことなら心配しないで。こんなことをしでかした以上、私だって覚悟はできているわ。それでも、私はあなたのことを傷つけたマクリッド様を許すことが出来ないわ。」
すると彼女は私の肩を掴みながら心苦しそうに話し始める。
「お嬢様は誤解されています!私は悲しくて泣いていたのではありません、感極まって泣いていたのです!」
「えっ、」
私はラサーラが何を言っているのか分からなかった、頭が働かず何も考えられない。
「あの方はお嬢様の本当の気持ちを理解されていたのです。顔を合わせれば不愛想などというような表面的な者たちと同じではなく、お嬢様のちゃんと理解されていた方なのです!
それで、私はようやくお嬢様のことを理解していただける男性が婚約者になられたと嬉しくて泣いていたのです。ですから、お嬢様が考えられているようなことはされていません。お嬢様の誤解なのです!」
えっ、何それ。マクリッド様が私の本当の気持ちを理解してくれていた?私と関わった人は上辺だけの付き合いしかせず、私の本当の気持ちを理解してくれない。みんな私の内心を知ることなく、私の元を去っていく。それが普通だった、でもマクリッド様は理解してくれていた?
じゃあ、私が彼にした仕打ちって・・・。私はすぐにでも彼を追いかけるべく、部屋を飛びだすとお父様と遭遇する。
「ん?メリル、そんなに慌ててどこへ行く気だ?今は殿下のお相手をしているはずだろ。」
「お父様、私、私、マクリッド様になんてひどいことを、ううっ。」
私は自分がしでかしたことの恐ろしさから泣き崩れ、お父様に先ほどの出来事をすべて話す。私は、私のことを理解してくれたマクリッド様に対して一方的に私の感情を押し付けて追い出したのだ。
彼が私のせいでどれだけ傷ついたのかは計り知れない。それでは、私のことを上辺だけでしか見ない彼らと同じではないか!私は気づけば、最も嫌っていた彼らと同じことをマクリッド様にもしていたのだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます