第12話 ちゃんと分ってるって
そんなこんなで、彼女と二人が部屋から出ていき、部屋の中には俺とおばちゃんの二人となった。さて、こうなったら俺がここへやってきた目的を果たすとするか。
「すこし、聞きたいことがあるのだが聞いていいかい?」
「あら、もしかしてお嬢様の昔話のことですか?私としては話してもいいのですけど、お嬢様がダメと言われたのでいくら王子様と言えどもお教えすることはできませんよ?あっ、私の名前だったらラサーラと申します。申し遅れました。」
いや、確かにそんなこと言ったけど、あれは冗談だからね?まぁ、聞けるのなら聞きたいけど。あとこの人、しれっと自己紹介を入れてきたな。
「いや、そのことではないんだ。一つだけ、質問したいことがあってね。これから言うことに正直に答えて欲しい。」
俺は真剣な表情で彼女に言い張ると彼女もその空気管を察したのだろう。先ほどのおどけた雰囲気ではなく、真剣な表情になる。
「分かりました、私がお教えすることが出来ることであればお話ししましょう。ですが、内容によっては私からは話せないこともあります。」
もしかしたら、俺が商売のことに関することを聞こうとしたと考えていたんだろうか?おばちゃんは商人の顔をし、警戒した雰囲気を出し始める。まぁ、警戒するのは仕方ないかもしれないが、そんなことを聞くはずないじゃないか。
こっちは一応これでも王子だぞ。はっきり言って生活には困っていないから商人から商売のタネを盗み取る必要なんかない。
「俺が聞きたいことは彼女のことなんだ。はっきり言うけど、彼女って普段からあんな感じで真顔なのか?」
「はい?」
俺の質問が予想外の質問だったのだろう。おばちゃんはポカーンと呆けた表情をしている。
「えっ、お嬢様のことですか?他のことではなく?」
「いや、それ以外に何を聞くんだよ?」
もはや、彼女には先ほどの警戒した雰囲気はない。こいつ何言ってんの?というような感じで俺のことを測りかねているような顔だ。
「えっと、お嬢様のことですよね。もしかして、お嬢様のことを不愛想で印象の悪い女と思われていますか?
そうであるならば誤解なんです!確かにお嬢様は真顔で冷たいような印象を受けるかもしれませんがやさしい方ですよ。侯爵家の娘であるにもかかわらず、私たちにも同じ立場のように接してくれますし。」
おばちゃんは俺が彼女のことを婚約者として不満を持っていると思ったのだろう。彼女が普段からどれだけやさしい人間かを俺に説明してくる。しかし、その必要はない。今の話を聞いてすべてを理解した。
「あぁ、もう分かったよ。それ以上話す必要はないよ。」
俺がそう答えるとおばちゃんは絶望した表情を向け、再度弁明を行う。
「王子様、どうか聞いてください。王子様はお嬢様のことを誤解なさっています!」
「いや、分かっているよ。これ以上、言われなくても分かっているよ。」
「そうではないのです、お嬢様は普段から表情を表に出しませんが内心では、」
いや、本当に分かっているんだって。この人、何か誤解していないか?俺はおばちゃんの話を聞いて今までメリルに抱いていた感情が正解だと分かると未だに彼女のことに関して弁明を行っているおばちゃんの会話をさせ切り、自らの考えを言葉にする。
「ちゃんと分かっているよ、彼女はクール系なタイプなんでしょ!」
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