飛ぶことを夢見ていた
シヨゥ
第1話
「魔法を使えたら何がしたいか」
そんな質問に僕は、
「空を飛んでどこまでも遠くへ行ってみたい」
と答えていたと思う。小さな頃の話だ。村の中が僕の世界の全てだった頃の純粋な夢。
そんな受け答えをした僕がまさか魔法の才能に恵まれていたとは思わなかった。
「まずは何をしたい」
そんなにお師匠の質問に、
「どこまでも高く、そして速く飛びたい」
と答えた。飛びたい欲求はそのままに若干変化した夢の形。
「なら、やってみろ。魔法は願いが力だ。その姿を想像してみるんだ」
「分かりました」
指示通り高く速く飛ぶ姿を思い描く。すると体が浮き上がる。
「骨は拾ってやるから」
そんな不吉な言葉が聞こえた瞬間には空を舞っていた。想像とは違い、くの字で上下左右に振り回される。
「ゆっくりでいい。力を制御するイメージで」
そんなことを言われてもできるわけがない。そのまま為す術もなく地面へと叩きつけられた。その瞬間何かがこぼれ落ちた気がした。それはきっと空を飛ぶ夢だったのだろう。この日以降飛びたいと思う気持ちを持つことはなかった。
飛ぶことを夢見ていた シヨゥ @Shiyoxu
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