冒険は続く

「とおみん?」


カナンの言った言葉を、セリは繰り返す。既に海は遠く、川の景色が続いていたのも夕暮れの時間まで。


豪華な広い馬車に揺られて、王都に入っていた。

景色も暗くなってきて見え難い。外の景色に興味が向かなくなったセリに、今向かっている拠点の話をしていたところだ。


「十眠、な。10日ほどの連続した眠りのこと」


それを、ロードに勧めていた。言われた本人に視線を向ける。


「冬眠って言葉もあって、寒い時期ずっと寝てることを指してたんだが。まとめて寝るって意味になってる」


セリへと丁寧に捕捉する。


先祖や一部の部族にはまだ残る冬眠、それとは違い魔力を大幅に使った後に体調を整えるため行う。トカゲや蛇の獣人にたまにあるとも聞いた。


「ここいらじゃ、習性を持っているヤツは少ないけどお。魔力が大きいと特別、休息が必要ってこと。」


王都に到着していた一向は、馬車で竜の翼の拠点に向かっていた。


灯りが所々にあるものの、人通りはない。乗っている馬車の音だけが響いていた。もう日が暮れ、辺は暗くなってきている。眠るには早いが、拠点に着く頃には真っ暗らしい。


「特大の魔法を連発してたもんなあ。そろそろ本格的に寝たほうが良いらしい。」


ロードは北の砦、魔木への特大魔法を短期間で使っていた。普段の眠りとは違う。自身の縄張り、安全な寝床で深い眠りに就く。


「セリと寝る!」

グッと抱き締められる。


「セリはそんなに寝れねーだろ。」


獣人で魔法は身体強化の特化であるカナンは、別の方法で解消していた。


「人族はそんなに連続して寝れないわヨ」


セリの体調を心配して、シュルトが口を挟んだ。


一緒に寝る、部屋を用意する

と話している中で、


王城に近づき、逸れて森の方へ馬車が入った。


「夜そのまま一緒に寝れば良い。」

「朝まで囲うだろうが」


ロードとカナンの言い合いに、シュルトがツッコむ。

「朝に起きないとセリが体調を崩すわよ」


セリの発言がないまま、ウトウト移動の疲れで眠くなってきたところ。してきたところで馬車は停まった。


「ようこそ、セリ。」


扉が開き、広間と上に続く階段。貴族の別荘として作られた家を竜の翼が拠点としている。


左の部屋へ荷物が運ばれていく。

「それはあっちへ」


キースとグスタフは、自室へ荷物と一緒に消える。

他はキッチンへ、紅茶を飲んでひと息吐くことにする。


「セリの部屋はあるワ」


「今日は一緒に寝る。」


初日だ。十眠は明日からでも良いだろう、急ぐことないとなった。


「風呂にするか?」

「お湯を浴びて寝た方がいいんじゃない?」


セリは眠気が限界そうだ。



ロードが世話をして、ふわふわしているセリの寝支度を済ませた。


「おやすみ」

ベッドに入ったセリがロードのほっぺに、ちゅう。


悶えて静かに耐えきったロードは、セリにおやすみの接吻キスを額にして、眠りに入ったのだった。

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