第4話 嘆き

 確か、死組の出席番号九番の火神と三十三番の山本は付き合ってたんだっけ。

「恋愛事情なんてこの非リア代表の伊奈平には関係ないのだ」

 仲良く非リア同士で下校を共にする伊奈平陽介いなだいらようすけは恋愛についてポンコツである。

 過去に『どんな彼女が欲しいか』みたいな話をした時、伊奈平が下した答えは「可愛くて優しい人」と、誰でも思いつきそうな事を言い始めた。

 まぁ、僕らの周りに居る女子なんてみんな二次元に恋をして僕らとは友達という関係をいつまでも築き続けてるけど。

「あ、そうだ。この前平林のお見舞い行ったんだけどなんか楽しそうに『この病院に来てから夢に出てくる女の子がめちゃくちゃ可愛い』とかほざいてたぞ。」

 平林……お前僕の知らないところで伊奈平とそんな話してんのかよ

 

 最後の信号機に引っかかり、交差点の向こう側には例の火神と山本がイチャイチャしながら立っていた。

 伊奈平は二人を指差しながら、口を開いた。

「あそこトラック突っ込まねぇかな…」

 不謹慎すぎるだろリア充にどんだけ怨み買ってんだよとツッコミたくなったが、こればっかりは同情しよう。

 

 そんな事考えている間に信号機は青に変わり、横断歩道を渡る。二人のリアルに充実した奴らも横断歩道を渡るが、その刹那、二人はガス会社のトラックに突っ込まれてトラックは横転。倒れた街灯の電気コードから出た火は漏れたガスに引火し、当人二人を巻き込んで大きな爆発と共に燃えていた。

 

「ええ……」

 なんか驚きよりも呆れるような表情の伊奈平を横目に僕は事故現場を眺めていた。

 両手を広げて伊奈平は言った。

「神が俺の望みを叶えてくれた」

「伊奈平。お前は自重しろ」

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