第7話 「恋愛感情がなければ、ストーカーじゃない」この考え方、早く、変えたほうが良いんじゃない?

 ストーカーを、やめて…。

 「あの男が、私に近付けないようにしてください!近付いちゃいけませんよっていう命令を、法律的に、出してください!お願いします!」

 「申し訳ございません」

 「え?」

 「あなたの気持ちは、わかるですが…」

 「え?」

 警察は、接近の禁止命令というものを、出してくれなかった。

 「…どうして、命令を出してくれないのですか?」

 「いや、その…」

 「あなたは、警察でしょう?」

 「それは、そうですが…」

 「役立たず!」

 「しかし…」

 「しかし、何ですか?」

 「その男の付きまといは、恋愛感情からのものだったのかまでは、わからないわけでしょう?」

 「ええ、まあ…」

 「ですから、命令を出せなかったのです」

 「…」

 その女性は、泣いた。

 「…私、怖い。また、あの人が、私を傷付けにやってくるかも、しれないんだし」

 被害者の気持ちは、どこへやら。

 「被害者は、真剣に悩んで、付けねらってくる人を捕まえてもらいたいのに、恋愛感情があるのかどうかを警察が判断するのって、何?付けねらってくる人が、俺、あの子のことなんか知らないよ?別に、好きじゃないんですけどって言えば、ストーカーにはならないの?…それって、どうなの?」

 いや、ホント。

 どうなの?

 「恋愛感情がなければ、ストーカーじゃない」

 この考え方、早く、変えたほうが良いんじゃない?

 専門家も、悩んでいる。

 「ストーカー行為を、恋愛に限定する。それも、仕方がないかもしれない。恋愛感情がなくても、ストーカーになるというのなら、新聞記者や芸能レポーターの取材活動も、捕まってしまうことになっちゃうわけだし。政治家を追いかけて、不正をあばいて、世の中を正しましょうっていう週刊誌のスクープ活動も、捕まることになる。しかし…。これでは、芸能人や政治家はホッとするかもしれないけれど、一般人が、救われない」

 困ったなあ。









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