12話セツナに襲われる!


 ワタルが自室のベッドに寝てから数十分経つ頃、自分の上に重さを感じ目を開けるとセツナが乗ってた。


「セツナ、上に乗って何してのかな?」


 うふふふっ、本当は分かってるくせにと微笑みながら答えた。


「えーと、夜這い?」


 何故、疑問系?


「ふざけてないで、上から退いてくれ....」


 暗闇から目が慣れて、セツナの姿がベッドに運んだ当時の服装ではなく、どうやって用意したのか透けそうなネグリジェを着ていた。

 くノ一の服装からでも分かったが、スタイルが出るとこは出て引っ込んでいるとこは引っ込んでいる。ネグリジェでそれがさらに強調されている。

 ワタルは透けそうなネグリジェ姿のセツナを見て言葉が最後まで続かなかった。


「別にふざけてないよ。ワタル殿に抱っこで運ばれいる時、ドキドキしっぱなしだったんだから。それに....」


 起きていたのかよ。後、それにって何だ?


「それに、知ってるんだよ?姫様と性的な事したって。ふふふっ、良いな。気持ち良いんだろうな。ゾクゾクしちゃうな」


 すみません。ここに、変態がいます。誰か助けてください。お願いします。


「それなら、フランに頼めよ。フランの事好きなんだろ」


 上手くいけば、ここは乗り切れる。


「確かに、姫様の事は好きだよ」


 よし、乗り切れるか。乗りきってみせる。


「でも、ワタル殿の事も好きになちゃったんだもん」


 ダメだった。乗り切れなかった。言葉でダメなら力ずくでも、ここを脱出してみせる。


「くっ、この!なに、腕が上がらない」


 自分の両腕の手首周辺を見ると、暗くて良く見えないがロープかタオル状の何かでベッドの手摺に結ばれている。


「い、いつの間に!」

「ふふふっ、この私が何の対策してないと思った?甘いですね。砂糖よりも甘甘ですよ。ワタル殿」


 どうにか手首に縛られた何かを引き千切るため、思いきり力いれるが千切れる様子もない。


「こんなことして、フランに嫌われても知らないよ」


 フランの事を言っても余裕の笑みを崩さない。


「姫様には予め許可済みですよ」


 な、なにー、最初から負けゲームだったのか!


「おや、どうやら諦めたようですね?頼みの姫様も使えない今、どうしようもないですね。それに、私ショック受けてるんですよ」


(え、俺何かやったけ?)


「わ、私の今の格好を見て欲情しないんですか。これでも恥ずかしんですから」


 頬を紅くして、とんでもない事を言いやがった。欲情だと!こっちはしそうだから、我慢してんねん。


「うふふふっ、欲情しないなら、しやすい様にしてやります」

「い、一体なにをやる気だ」


 セツナはモゾモゾと怪しく手を動かし、ワタルの服を掴んだ。


「世の中には既成事実と言う言葉があります。後で愛を育てれば良いのですよ」


 おい、どこでそんな言葉を覚えた!この世界にあるとは思えない。


「さて、服を脱ぎしましょうね」


 何で赤ちゃん言葉ぽい話し方?....そんな事考えてる隙にセツナの手がワタルの服のボタンを外しにかかる。


「おい、止めろ」

「うふふふっ、そんな事言って否定しても身体は嬉しがってるようですよ」


 セツナが何処かに視線を向ける。

 おい、どこを見てるんだ!


「さすが、男ですね。腹筋割れてますよ。ハァハァ」


 ワタルの故郷・地球でも男性の鍛えぬかれた筋肉に興奮する女性はいるが、セツナの目がそれよりも怖い。

 セツナの手がいよいよワタルのズボンに手をかけた瞬間、目眩を感じるとワタルは気絶してしまった。


「うっ、んーー。ここは、精神と魂の狭間か。そうなると、シズカがいるはずだが、探してみるか」


 重い腰に力を入れ立ち上がり暗闇の中を歩きだす。

 相変わらず、周りは闇しかなく、方向感覚が狂わされる。

 シズカはいつもこんな場所にいて、よく精神が正常に保っていられると思ってしまう。

 ワタルも含めて、通常の人間に関わらず生物全般がここにいれば精神に異常になるだろう。


「お、明かりが見えてきたな。きっとあそこに....」


 近寄ってみたら、巨大な....巨大なカバとサイを足した様なモンスターがいた。サイの角が光っている。どうやら、提灯アンコウみたいに誘われたみたいだ。


(ヤバイ、今は桜花ロウカもないし、丸腰で組手術だけでは無理そうだな。いかにも、固そうだし)


 相手が気づかない内に逃げるしか無さそうだ。音をたてずに、そっとそっと足を少しずつ動かすと、相手の目がギョロリとこちらを向いた。気づかれた。

 息良いよく、こちらに走ってきた瞬間、もうダメだと思ったら、どこからか声が聞こえてきた。


極氷の世界ニヒルヘイム


 いつの間にか側にはシズカが立っていて、あのモンスターはカチコチに凍っており、直にヒビが入り崩れた。


「シ、シズカ、ありがとう。助かった」

「どうもいたしまして。間に合って良かったよ。それより、あゆむ座ったままでどうしたの?」


 ははははっと笑った。


「いや、腰がぬけちゃって」

「ぷっクククク」


 あゆむの間抜けな返答にシズカが笑った。あゆむはシズカの手を借りて立ち上がった。


「それにしても、よく俺の場所が分かったな」

「あゆむの気配がしたと思ったら、ヤバい気配もして急いで来たのよ」

「それに、あれは一体なんだ?」


 最もな疑問をぶつける。


「あれは夢魔バクの一種よ。魂を食らう化物なの」


 そんな危険生物がここにはいるのか


「でも、倒したから当分は出現しないはずよ。極稀にしか現れないから」


 それを聞いて今は安心するあゆむ。次来た時は保証は出来ないが。


「あゆむ、さっきから気になっていたけど、酒臭いのよ」


 鼻を摘まんでソッポを向く。


「あぁ~、あっちで酒飲んだんだ。ごめんごめん」


 そんなに臭いかなと自分の息を嗅ぐがよく分からない。まぁ、自分の匂いは分かりずらいものだ。


「本当よ。もし、夢魔バクが出現しなかったら、すぐに帰してるわよ」


 ゲッ、今度からほ気を付けようと心に誓った。


「約束通りに娯楽とやらは持ってきたの?」


 前回来た時は時間がなく、そのまま帰ってしまったのである。


「あぁ、持ってきたよ」


 フランの契約で使用可能になった宝部屋アイテムルームからオセロを取り出した。


「これは、オセロと言ってルールは....」


 フランと同じ説明をする。


「簡単なルールだね。分かりやすくて良いよ」


 うふふふっ、そんな簡単にいくかな。だが、あゆむの方が罠にはまる事になるとは、あゆむ自信少しも思わなかった。

 あゆむが黒で先手になり最初に置く。次にシズカが白を置いていき、ゲームは続いていく内にあゆむは違和感を覚えた。


(これは、シズカは素人のはずだ。だが、この打ち方はまるで何回もやった事がやり方だ。どういうことだ?)


 あゆむは失態をした。この精神と魂の狭間では、心で思った事も相手に伝わってしまう事を忘れていた。

 実はシズカには精神と魂の狭間からあゆむの生活を覗き見が出来るのだ。

 だから、あゆむが説明しなくてもシズカは分かっていたのだ。演技で知らないフリをし、油断を誘うために。

 どうにか、僅差であゆむが勝ったが勝った気がしない。

 何故なら、シズカの手の上で踊ってる感覚があるからだ。勝ったのではない。勝たせてもらったんだ。


「惜しかったよ。もう少しで勝てそうだったのに、悔しいよ」


(ほ、本当にそう思ってるのか!)


 再度、オセロやるがターンが進むにつれ今度は優劣がはっきりと分かれた。あゆむがシズカの獲物になった様に追い詰められていく。


(こんなはずではないのに!くそっ、勝てない。シズカの方が一枚上手だ。最初のは演技だったか。騙されたぜ)


「....」


 シズカが無言で肯定し、ニッコリと微笑む。


「やった!勝てたよ」

「何を言う。最初の勝負も僅差だったではないか。演技だったんだろう」


 あはっと笑ってシズカは答えた。


「てへ、ばれちゃった。そうだよ。この、オセロと言うゲームは知ってたよ。

 この場所はいつもは私一人だから、あゆむの世界をたまに見てるの。そうして、寂しさを紛らわしてるの」


 あゆむは、そんな事情とは知らずに少し言い過ぎたと感じた。

 だが、あゆむの世界を見ただけでルールを理解し、あゆむを上回るのは容易ではないはずだ。容姿とは相反して相当頭はキレル様である。


「まぁ、また来たときには他のものも持ってくるよ」

「本当?やったー。あ、そういえば、あゆむが持ってる刀と言うんだっけ?人に変わる様になったんでしょ」


 シズカの問いに少し驚くが前回のことがあるし、そこまでは驚かない。


「シズカがやったのかい?」


 だが、シズカは首を横に振り否定する。


「違うよ。人に成ったのは、あの刀自体が元からあった力だよ。あの刀を作製した誰かがそういう風に作ったんだよ。

 ただし、その誰かはこの世界の住人ではないね。他の異世界だよ」


 確かにフランもそんな事言ってたな。


「私はそんな力を感じとっただけだよ」


 なるほど、シズカも魔法に関しては相当巨大な力を秘めていそうだし納得だ。


「あ、もう時間の様だね」


 白い光が広がっていき、あゆむを包まれるて起きると、ワタルは両腕をベッドに拘束され上半身が脱がされいる状態だった。


(そうだ。忘れてた)


 ワタルが顔を上を向くと、涙を浮かべているセツナの顔が近くにあった。


「ど、とうしたの?」

「ぐすっ、ワタルー、どずぜん、ぎぜづしぢゃっでー」


 少し涙声で聞きづらいが、俺が気絶して泣いてくれたのか。可愛いとこもあるな。


「大丈夫だって。泣き顔でいつもの笑顔が台無しだよ」


 普通は今の格好で言っても説得力ないが、今のセツナには効果抜群の様で涙を拭き笑顔をワタルに見せる。


「それに、この腕の物取ってもらえませんか。もう、逃げようとしないからさ。セツナの事受け止めるからさ」


 ビクンとワタルの言葉に驚愕している。


「え、それって!つまり....」


 最初の大胆さが嘘の様で頬を紅くなり、モジモジと指をいじっている。


「セツナの考えてる事と同じと思うよ?」


 セツナはワタルの拘束を解くと、解かれたワタルの両腕はセツナを抱きしめワタルの上にセツナが倒れ込む状態になる。


「ワ、ワタル?!」


 急な出来事に混乱している。だが、いつまでもこうしていたいと安心感がある。


「心配させて悪かったな」


 ワタルの右手が優しくセツナの頭を撫でる。


「ワタルー」


 セツナは少し涙を流すが今度のは嬉し涙だ。


「さて、ここまで言ったのだから、覚悟はいいか?今夜は眠らさねーぞ」


(イヤ~ン、嬉しいけど怖いよ。でも、どんなにされるか楽しみ♪)


 こうして、ワタルとセツナは結ばれ、初夜を迎えることになったのである。


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