9話セツナと戦う
「本当にやるの?ワタル」
「あぁ、男にとって退けない時があるんだ」
先程の追いかけっこからセツナは相当な速さを自慢とする暗殺者に類似する技術を持ってるのだろう。
相手はスピード重視なので長期の戦闘は不利だから短期決戦で決めるしかない。
「
「で、てすがマスター....」
「準備はよろしいですか?あなた、人間なんかに姫様を渡さない」
本当にフランの事が好きなのだろう。その好意は何処かずれてるような気がするが、フランがワタルに取られたと怒りに燃えている。
「あぁ、俺もフランを渡すつもりはない。どこからでも掛かって来るがよい」
わざと挑発する様に人差し指を上に向けクイクイと挑発を繰り返した。
二人共に瞳の中がメラメラと「「フランは絶対渡さない」」と燃えている。
ワタルとセツナは同時に駆け出した。
「桜流組手術・第一・剛の型・胡桃割り」
「氷の爪アイス・クロウ」
二人の技がガキンと当たり、ビキビキと二人の周辺に衝撃波が発生し二人以外の者を寄せ付けない一種の台風の様な状況になっている。
「「うおぉぉぉおぉぉっ!」」
バキンと一旦離れた二人はお互いを見詰めると口元がニヤリと笑った。
今はこの戦いが楽しくてしょうがなく、何時までも続けていたい。
ワタルはこの気持ちを何時から忘れていたんだろうか。
幼少時は桜流武術を習う事が楽しくて時間も忘れて没頭していたのに、大人になると仕事が休みの時にしか、やらなくなり心から純粋に楽しめなくなっていた。
でも、今は目の前の敵と戦う事が楽しくて純粋に思っている事が嬉しいのである。
セツナもワタルと戦って、最初は人間は弱い生物としか見ていなかった。
しかし、目の前の人間、ワタルは違うと拳を正確には違うが合わせた時に強いと実感した。
「はぁぁぁっ、桜流組手術・第三・蹴の型・桐、椚、杉、梛、棗....」
ワタルは拳から蹴り技に切り替えて次々と繰り出していく。
「くぅ、氷クナイ、氷手裏剣」
セツナも技を繰り出し防御するがワタルの技の方が手数が多く、徐々に押し負けていく。
「はぁぁぁっ、ラスト!
ワタルの蹴り技がセツナの技を打ち破り、セツナの腹に見事に命中した。
「きゃーーーっ、グヘェ....¥#?!@¥*」
フランが蹴り飛ばしたよりも距離は伸び、太い木々や身長の倍以上はある岩も破壊しぶっ飛んだ。本当に一般人なら即死でしょう。
「はぁはぁ、これでどうだ。死んでいないよな?」
最初のフランの一撃で死ぬどころか喜んでいたのである。
死んでいないと思っているが、戻ってくるまで心配だ。
何故なら、相手はフランを取り合ってはいるがフランの部下なのだから。
セツナがぶっ飛んで一時的に中断になったので、フランと
「まぁ、あいつはちょっとの事では死なないから大丈夫よ。むしろ、喜びそうで怖いんだけど」
本当に有りそうで身震いする。フラグを立てた様でもう遅い気がする。
「大丈夫ですか?マスター」
「あぁ、ケガはないし大丈夫だよ。むしろ、組手は久しぶりにやったから筋肉痛になるかもだけどね」
ポンポンと
一方、ワタル達が和やかに談笑してる中、セツナは木や岩の瓦礫を退かして、うっとりしながら感激していた。
「あぁ~ん、姫様とは違う痛みに快感、気持ち良いよ。確か、あの人間の事をワタルと呼んでいましたね。
今、決めました。ワタルと姫様と一緒に旅に出る事にしました。おじいちゃんに怒られそうだけど関係ありませんね」
セツナはワタル達と行動を共にする事を決めると颯爽とワタル達がいる場所へと駆け出した。
「あ、ほら大丈夫だったでしょ」
フランが走ってくるセツナを指差して言う。
「ハァハァ、姫様、ちょっとおは....」
まだ、戦いの途中だと勘違いしたワタルに技をかけられて、言葉が最後まで続かなかった。
「桜流組手術・第二・柔の型....」
走って来たセツナの力を利用して投げ飛ばした。
「うぎゃーーー!」
投げ飛ばしたセツナは逆さまにワタルの目の前に落ちて来たところを回転させた右手を土手っ腹に当てた。
「コルク抜き」
「ぶへぇ!?」
訳が分からずぶっ飛んだセツナは気持ち良さそうにうっとりしながら起き上がった。
「しぶといな。まだ、やるのか?」
手と首を振って否定する。
「いえいえ、ちょっと待って下さいよ。私としては嬉しい提案ですが、少し話させて下さい」
(あ、まさか話そうとしてた?やべー、やっちゃったかな)
ワタルが攻撃する前にセツナが何か話そうとしてたのに、つい攻撃してしまった感じである。
「話そうとしてたのに、いきなり攻撃なんて気持ち良かったけど酷いじゃないですか」
表情や態度と言葉が少し合ってるけど違っている。
「あぁ、ごめんごめん。何かハァハァと言って怖かったから」
「それは走って来たからですよ。私が変態みたいな言い方やめてもらいますか!」
ワタルとフランが顔を見詰め合うと驚愕な声で言う。
「「えっ!変態じゃないの?」」
「ひどっ!姫様まで!」
さすがにドMなセツナでも親愛してるフランに言われたら涙目になっている。
「それで話とはなんだ?」
話が進まないのでワタルがセツナに聞いた。
「それは、私も一緒に連れてもらえませんか。お願いします。姫様、ワタル....いえ、ワタル殿お願いします」
土下座してワタルとフランに一緒に旅に行きたいとお願いする。
「はぁ、セツナは私を魔王城に連れ戻しに来たのでないか?」
「いつかは戻って貰うつもりですが、私も姫様が退屈に過ごしてきた事を知っています。それなら、旅に出て退屈しのぎに成ればと考えた次第です。」
(後は姫様とこの人間、ワタル殿と一緒にいれば面白そうだし、魔王城にいるより絶対こっちのが楽しいよね)
「グリムはどうするのよ」
「あぁ、おじいちゃんですか?うーん、伝えるしかないですかね」
セツナが氷で小さな狼を作り、その氷の狼に手紙を咥えさせると森の中に消えていった。
「これで大丈夫ですよ。待ってる間どうします?」
「あの~、ここで待つつもりですか?」
ワタルの言葉に周りを見渡すと討伐依頼でワタルが倒したレッドブルの残骸が異臭を放つ。
「「....場所変えようか」」
近くに魔物がいなく拓けた場所があったので、フランの部下でウォーウルフであるグリムが来るまで、ワタルが懐から出したトランプでゲームする事にした。
「ワタル、今回は何やるの?」
「そうだな。大富豪(大貧民)にしよう」
ワタルはトランプを切って公平に配り、ルールを説明した。
大富豪は3から順に数字が高いほど強く2が一番強く、そのターンに誰も出せず最後に出した人が次のターンで最初に出せる。
配られた手札を先に無くしたら勝利である。他にはマークが同じ順番通りに3枚以上出す階段や同じ数字4枚出す革命は今回ルールに含める事にした。ローカルルールはあるが今回はやめることにする。
「ルールは分かったよ。早速、大富豪とやらをやろうよ」
最初は一番詳しいワタルが出すことになった。
「まずは、3を1枚で。次はフランだよ」
「む~、これにしよう」
フランは5を出し、次は桜花ロウカで普通に6を出した。最後にセツナ順番になり、いきなりAを出して親になった。
「やったー。親になったよ。さて、何を出そうかな」
順調に大富豪を進むと正確が出るのか、
セツナは目立ちたがり屋なのか最初の方で強いカードを出してしまうので、後々出せなくなってしまう傾向である。
「あぁーん、負けちゃったよ。でも、負けたのに痛みとは違う快感があるかも」
セツナは負けたのに、うっとりと頬を紅く恍惚している。
(((へ、変態がここにいるよ)))
「快感だけど、負けたのは悔しいからまたやろう」
セツナの提案に時間はまだあるから、ワタルがトランプを集め切った。そして、みんなに平等に配り再度やることにした。
ウォーウルフのグリムが来るまで今日初めてやる大富豪が面白いのか何回も繰り返した。
勝率だが大富豪を教えたワタルが五割で一番高く、フランと
セツナは全敗なのに気持ち良さそうに恍惚な表情をしている。やはり、セツナは変態だったかと皆で思った。
「セツナよ。探したぞ」
何処からか老人の様な声が聞こえる。
「あ、お、おじいちゃん」
誰から見ても遊んで見えるのでセツナは冷や汗をかいて動揺している。
「フランシスカ様、魔王城に戻りましょう。そちらの方は人間に見えますが殺しますか?」
実はグリムとセツナは魔族ではないが、 魔族の女王であるフランの忠実なる部下のグリムは魔族の敵の人間を同じく敵と認識しているのだ。
「いや、彼はわ、妾のお、夫なのじゃ」
グリムの前なので魔王の口調に戻り、緊張してるのか噛んでいる。
「はっ、も、もう一回お願いします。な、何とおっしゃいましたかな?」
フランの冗談だと思い、もう一度聞くがグリムも動揺しているようだ。
「だから、彼、ワタルは妾の夫で契約したのじゃ」
「なっ!!!契約もですぞ!本当ですか!そこの人間に脅迫されたんですか」
フランは首を振り否定した。
「妾は...妾はワタルの事が好きなのじゃ」
「み、認めぬぞ。フランシスカ様」
「それなら、俺の強さを認めさせたら、フランとの仲を認めてください」
フランとグリムの言い合いにワタルが口を挟む。
「何を言うか。儂が人間ごときに負けるわけなかろう」
「ほうー、言ったな。グリムよ、その言葉に偽りはないな。もし、負けたら認めよ」
フランは今、使い方は難しいが言霊魔法を使い、グリムの行動をある程度強要した。魔法をかけられたグリムは気づいてない。
「良いでしょう。人間が勝ったら認めましょう」
こうしてワタルとグリムが決闘する事になったのである。
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