奏多




僕は、喜んだ。彼女の名前を見つけた瞬間に。




トニカク安堵した。




とてもワクワクした。




恋している相手と同じクラスだったことに、この一年で全てが始まるか、終わるのか。


彼女も喜んでくれただろうか、それともモブ程度としか見られていないのか。


おそらく後者だろう、彼女がこっちを見て笑い返してくれたことは一度もない。






でも不思議と悲しくはない、なぜなら、まだきっと、この物語は始まったばかりで、まだまだいくらでもチャンスがあるからだ。




クラス発表をよく見ると彼女だけではなく、去年同じクラスだった人がちらほら見受けられた。




でもクラスに行ってみないと始まらない、とりあえずクラスに行こうとしたその時、声をかけてきた人がいた。




「おはよう、奏多。今年は、別のクラスになったけど仲良くしてくれよ」




話しかけてきたのは、夜桜久遠だった。


少しチャライ様に見えるが、それが今どきっぽい。




去年は、一組で同じだったが、二年生では、二組と三組で別れてしまった。




そして、ウザいことにもてる。




だが、久遠には何度も相談に乗って貰ってるので、実は感謝している。




「もちろん、今年も相談に乗ってもらわないといけないしね」




久遠は、僕以外にも相談には乗っているみたいだが、こいつの恋バナ一度も聞いた事がなかった。


でも、今後も聞くことはないのだろう、人間関係を壊すことになりかねない、ことは分かっている。




「いいぜ、俺が暇なときに、まだお前が付き合ってなかったら聞いてやんよ。じゃあ俺このクラスだから、またな」




「ああ、また」




久遠と歩いていたら教室の前まで着いていた。


不思議なことに本当に信頼してる人と過ごす時間は早い。




一年前と違い、教室に入るのに緊張も躊躇いも感じなかった。


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