ブラック

「可愛いってあれでしょ、ブサかわとか言われてるペットみたいな、愛嬌あって逆らわなくてニコニコしてるそういうんでしょ? 私知ってます、言われたことあるから!」

「お、おい」

 

 戸惑う力也。でももう止まらない。私の中のドロッとした鬱憤うっぷんを堰き止めていた壁が、一気に崩壊する。

 

「高校入って、地味な私に友達出来るかなって不安だった時。初めて声かけてくれたのが真由香だった。真由香は人気者で、化粧も上手くて可愛くて。コンプレックスだった赤い頬もこうしたらいいよっていっぱい化粧も教えてくれて『ほら可愛いじゃん!』って褒めてくれて、嬉しかった!」

 

 ぼろぼろ流れる涙も止まらない。

 

「だけどいつからか距離取られちゃって、何かしたかなって聞いても教えてくれなくて。真由香が友達繋いでくれてたから、そうなってからはみんな私の周りから居なくなって……結局友達なんて嘘だった。私が光也と同中だから、光也と仲良くなるためだけに利用されてただけだった」

 

 俯いたままの私に、力也は何も言わなかった。

 

 拭っても拭っても涙が止まらない。ああ……こうなると私の顔、鼻まで真っ赤になっちゃうのに。

 

 急にこんなこと言って、力也は今どんな顔をしているだろう。うざがってるかな。そうだよね、いきなりわけわかんない話されても困るよね。

 

「本当にそうかな」

「え?」

「真由香ちゃんだっけ? その子に茜の気持ち、ちゃんと話したことあんの? 今言ったこと伝えてみた?」

「そんなの言えるわけないよ。こっちが友達だって勘違いしてただけなのに、馬鹿みたいじゃん」

「そうだな、茜はバカだな」

「なっ!」

「だってそうだろ、友達つったって何もかも理解出来るわけじゃないんだ、会話しないと。さっき自分の周りから人が居なくなったって言ったけど、お前のことだからそん時も強がってツンとした態度とってたんじゃねえか?」

「だって誰も話しかけてこないから」

「なーんでそこで受け身なんだよ。なんも悪いことしてないならなおさら、自分で話しかけろよ、攻撃しろよ! ぶつかり合わなきゃわかんないこともあるだろうが。だから茜はゲームも下手なの」

「は? ゲームは関係ないから」 

「いや、あるね。冒険しないで無難な道選ぶじゃん、お前」

 

 

 ピンポーン

 

 

 その時、麻生家のチャイムが鳴った。

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