七つの御先、人となる

りょうすけ

鯛は大位なり、鯉は小位なり

雲一つない晴れた今日は三崎大島の中学校の卒業式


慣れ親しんだ場所を最後に、また新しい場所へと進んでいく日




そんな最後の晴れの日を過ごしたのは俺だけだった


他の奴らはいつだったかこの島を去っていき自分だけが残っていた


しかも遠く遠く、まるでこの島をなかったことにしたいかのように早々と出ていった




そんな島に残った最後の子供が俺だった


別にこの島に不満はない、本島が近くにあるから定期船で届く物資は決して少ないわけじゃない


住んでいる人たちも多くなく、ほぼ全員が知り合いみたいなもので居心地も悪くない




だけどこの島には高校がない、だから本島の三崎へ行かざるを得ない


しかしこの三崎に島で一緒に育った友達はいない




いくら島と近いとはいえ通うことはできないから明日から引っ越しの準備をする


窓にもたれかかり部屋の隅にある古いノートが目に留まった


【きさらぎ あざみ】と表紙にひらがなで書いてあるノート




「これいつ書いたんだっけ」




とノートを広げるとところどころ破かれていて真っ白なページだけが残っている


真ん中あたりのページに何か書いてある




【みさき大島のかいぞう計画】


そこには島にプール、ホテル、ゲームセンターなど島の地図にこんな場所があったらいいなというものが書かれていた




「こんな形にはならなかったし、これからもなることはないぞ過去の俺」




いつ書いたかの記憶も定かではないが、不思議とこれを書いていた時の気持ちが流れ込んできたかのように少し楽しくなってきた、だが現実は変わらない




「...さて片付けるか」




そう言ってノートを閉じ【持っていく箱】にそのノートを片付けた

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