第10話 軟派なんて呼ばせない
第9話 もう軟派だなんて呼ばせない
2022年 4月11日 V.2.03
① 40年前、私の学生時代に毎年の学園祭で少林寺拳法部が歌うのが「大学数え歌」でした。
(各歌詞の後ろに「そいつぁ剛毅だね、そいつぁ剛毅だね。」が入る。)
二つとせ、不良学生のたまり場は、○○に巣を持つ○○大、
三つとせ、見れば見るほど田舎っぺ、肥桶かつぐは農大生、
四つとせ、夜の夜中に飛び起きて、悪さをするは青学よ、
五つとせ、いつの間にやらそつぎょして、世に出て恥かく○○大
六つとせ、昔ながらの伝統を、鼻にかけるは早慶よ、
七つとせ、涙ながらにそつぎょして、世に出りゃ○クザの○○大
八つとせ、やっと出ましたお茶の水、よく見りゃ○スの集まりよ、
九つとせ、ここで一番、○○大は、大きいばかりの○○学校、
十っとせ、とぉっと出ました東洋大、よく見りゃバカの集まりよ、
「よく見なくても、バカじゃねえか!」
「バカは少林寺だけだろ!」
なんて、合気や空手部なんかからヤジが飛ぶ。
まあ、お祭りですから、みな和気あいあいとやってました。
こんな戯れ歌にも登場するくらいですから「青学は軟派」というのは(所在地が高級・派手・ファッショナブルというイメージが強い分、ひがみや羨望もあるでしょうが)一般的な感覚としてあったのかもしれません。
② 20年前、鎌倉で聞いた話
ある大寺で、深夜、警報機が鳴った。
警備会社から寺へ何度も連絡を入れるが、誰も出ない(この寺は大きな観光寺院で、勤務する坊主10名のうち一人が毎晩寺に泊り込むことになっていました。携帯電話が普及する前の話)。
駐車場に観光バスが10台も停められるくらいの寺ですから、山門の前には消防車3台、パトカー4台、野次馬がワンさと集まり、大騒ぎとなりました。
1時間後、大船の繁華街からほろ酔い気分で、愛車(2人乗りのスポーツカー)を運転して戻った宿直の坊主、これが青学出身(体育会系ではなく、一般学生)でした。
私がこの寺に勤務し、初めて宿直をする時に聞いた話ですが、この話をしてくれた坊主と「数え歌通りじゃないか」と大笑いしました。
①大学数え歌という一般的な話と②個人的に知った実話から「青学は軟派」というのは、私自身の中では「常識」となっていたのです。
ところが、2019年
AAA 2018年 日本拳法全日本学生拳法選手権大会(女子団体) 準決勝戦 関西大学VS青山学院大学(のビデオ)
2018年当時、青学3年生の大熊さんが、関大の4年生相手に果敢に挑んでいる姿を見て、それまでの「青学のイメージ」が消え去りました。
これは男性にも言えることかもしれませんが、関西と関東の(大学日本拳法)選手で、なにが違うかと言えばパンチの質です。
関西人は子供の時から道場で鍛えてますから、いかにも「ぶん殴る」という、ど迫力がある。 関東(の女性)の場合は、いくらパンチが強くても速くても、一本を取るための(ジェントルな)パンチです。決して、ぶっ飛ばすとかぶん殴るという「凶暴さ」は感じられない。いかにも淡白な感じの突きなのです。
ですから、そんな関西風の「ぶちのめしたる」といわんばかりの激しいパンチを、自分の面で(正直に)受け止めながら、大熊さんは素直なパンチを懸命に打ち返している(相打ちの連続)。
私の高校時代の親友はハンドボール部のゴール・キーパーでしたが、1メートルくらいの近距離から、ものすごいスピードで投げつけられる硬いボールをしっかりと見て、分厚いグローブをつけた手というか、身体全体で弾き飛ばしている。それを見て私は、ケンカより怖いと思いました。
浅草の大工の息子でしたが、殴られることを怖がらないのでケンカも強かったし、体中アザだらけでありながら頭もよかった。しかも、運動会のアトラクションで女装した時には、1・2年生からラブレターがごっそり届いた(男子校)、というくらいの美形でした。
彼の活躍もあり、都立高校ながらベスト8まで行きましたが、二年生の後半、試合中にボールが目に当たり、左目を失明してしまいました。
(日本拳法が危険だなんていう人は、野球やラグビー、ハンドボールやサッカーの方が、よほど怪我をする確立は高い、ということを知るべきでしょう。)
(拓大の人から聞いた話ですが、水球なんて優雅なスポーツのように見えますが、水面下では、蹴りの応酬で下半身はアザだらけ、海水パンツも引っ張られて破られるので2枚着用、なんていう激しい格闘技なんだそうです。)
大熊さんの激しい打ち合いを見て私は、(高校時代に)ハンドボールのゴール・キーパーをやっていた(ブログでの自己紹介)だけあるな、と思いました。
BBB 2019年11月 東京で行われた総合選手権、女子個人戦での大熊さん
1回戦は見逃しましたが、2回戦は東洋、3回戦は明治。両校の選手とも、ほぼ組み打ちのみの攻撃ですが、大熊さんはそれを真正面で受け止めながら、パンチで勝ちます。それを見て私は、私の高校時代の友人と同じで正直な人なんだな、と思いました。組んでくる相手を適当にいなせるのに、がっぷり四つに組んで受け止める。そして、勝負は得意の面突きで決める姿は、まるで横綱相撲です。
しかし私は、彼女が準決勝に勝った時点で、決勝戦では負けるのではないかと思いました。それまでの戦いですっかり体力を使い果たしたかのではないかと思ったからです。
ところが、結果は彼女の優勝でした。激しい面突きの打ち合いになりましたが、ここでも彼女らしく、真正面から相手のパンチに向かっていく「ハンドボールのゴール・キーパー」スタイルで、打ち勝ちました。
このときから「軟派」というイメージは、私の中から完全に雲散霧消しました。
そして、
CCC 「四年主将の佐藤です」
https://ameblo.jp/aoken-wakiwaki/entry-12709840081.html
ここで2021年度のキャプテンが述べられた「青山学院大学 日本拳法部の精神」によって、女性ばかりでなく、男性陣もまた
「そぞろ歩きは軟派でも、心にゃ硬派の血が通う」
ということを知りました。
このブログは、キャプテンの同期たちがどんな人物なのか、彼らの持つ個性を組織の運営にどう生かしてきたのかという寸評なのですが、彼が仲間たちのどんなところをどう見ているのかという「目の付け所」から、彼が代表を務める青学日拳の組織論を、ほんの少しですが垣間見れたようで、楽しめました。
○ 2021年度 青学キャプテン名語録
<引用開始>
こだわりがある奴
優しい大澤がバランスをとってくれていたからこそ、部員がついてきてくれた
先輩や同期と話しているのを見ても、人付き合いがうまいなと感じました
人当たりのいいみうちゃんには部内の人間関係について助けられることが多かった
我が同期は男子も女子も曲者揃いで、お互いをなかなか理解できない事もあった気がします。でもみうちゃんは女子と衝突も少なくて緩衝材のような役割を果たしてくれたと思います。みうちゃんがいなかったら今みたいに仲良くできてない
後輩の面倒見の良さにも助けられました
女子部員は自分に話しかけられると(自分はどちらかというときつい性格だと思うので)萎縮してしまうんじゃないかなと思いますが、みうちゃんみたいに優しくてコミュニケーション能力の高い先輩がいると上下関係も厳しくなりすぎないでいられます。そうした面倒見の良さという面でも助かりました
入学当初は50キロもなかったみうちゃんが先輩方に果敢に立ち向かう姿をみると自分もまだまだだなと感じ日々の練習を頑張れました
強い気持ちを持っている人
一見ふわふわしてますが強い意志を持ってる
負けず嫌いで勝負に妥協しないところは我々同期にとっても、後輩にとってもいい見本
男子相手の勝負練だろうと、大舞台の試合だろうと強い気持ちで一本を狙う戦い方は青学拳法部にDNAとして流れて欲しい
練習では打ち込みから自分で考えながら練習をして
女子のやらない筋トレを1人でやっているのを見かけた
真面目に拳法に取り組む姿勢は同期としてみてきたからこそわかったものですが、後輩にも受け継いで行って欲しい
自分の将来を決める時期に部活のために学連の仕事もこなさなければならなかったモコちゃんには本当に感謝しています
自分に厳しく練習は妥協しない強い気持ちを持っている漢
自主練でランニングも筋トレも欠かさない竹本は確実に部員にいい影響を与えてくれた
練習中の声出しも人一倍で、部活中のボルテージをあげてくれました
後輩への技術的指導、部員間のコミュニケーションにも積極的
なかなか周りからでは理解されないタイプだと思いますが、部活動をする上で大事にしなければならないものをたくさん持っている
竹本がいてくれて部活の雰囲気は本当にいいものになった
マネージャーという立ち位置での入部となりました。ためもとからすれば部活のことに関しては右も左もわからないのに、我々部員もマネージャーの経験がなく、何をしてもらえばよいかわからないという難しい状況だった
マネージャーのありがたさ
自分の練習に出来るだけ集中できる環境を作ってもらえることがどれだけ大事か
1人も欠けることなく最後まで部活をやり切ることができたのでそれが何より
次の四年は自分たちが何を一番大事にして部活に取り組みたいかを決めて、それだけは部員全員譲らないような気持ちを持って欲しいです。そうすれば部活全体まとまると思うし、他のことにも一緒に取り組みやすくなると思います。
千里の道も一歩から
やるべきことを一つずつこなしていって、自分たちよりいいチームを作って欲しい
<引用終わり>
異なる個性を持つ新しいメンバー(曲者たち)が、来年(度)は「古い酒袋に新しい酒」の如く、この大学の伝統をベースに、どこまでその存在感を示してくれるのでしょうか。
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