大学日本拳法の新セイバー・メトリクス V.3.1
@MasatoHiraguri
第1話 はじめに
2023年8月23日 夏の甲子園で、慶應義塾高等学校が優勝しました。
これまでの「甲子園(高校野球)」における「スポコン・スタイル」ではなく、「もっと知的に・もっと楽しく・もっと自主的に野球を楽しもう」という新しいスタイルが、この学校の優勝に刺激されて、巷では大いに脚光を浴びています。
大学日本拳法においても、これまでの上から下へというトップダウン形式の「パワー拳法」から、青山・立教・日大・関東学院といったミッション系の学校(日大は蛮カラ系)が、「一人一人の個性を引き延ばす」というボトムアップ・スタイルで、関東の大学日本拳法界においては、その存在感を示してきました。
去年は関西学院大学という、やはりミッション系の大学が、パワー拳法スタイルの明治を全日本選手権の団体戦(準々決勝戦)で敗り、決勝戦まで勝ち進みました。
この「大学日本拳法の新セイバー・メトリクス」という一文は、アメリカで起こった新しい野球の見方・戦いの組み立て方の一つの大きな潮流である「セイバー・メトリクス」が、日本の大学日本拳法界においてもジワジワと浸透している、という私なりの観点がベースになっています。
彼らニューエイジ(新世代)とも呼ぶべき、既存の常識にとらわれない若者たちが、どのように大学日本拳法を楽しんでいるのか・楽しもうと努力しているのか、を私なりの視点で分析したものです。大学日本拳法そのものも、また、それを見る視点も、もっともっと広がっていってほしいと願っています。
2023年8月25日
V.2.2
平栗雅人
2022年3月22日 V.1.05
はじめに
2020年の全日(府立)をビデオで見ながら、私は米映画「マネーボール」(2011年)を思い出していました。
1970年代、一人の数学者(数学の得意な、しかし、あまり世渡りの上手でない男)が、食品会社のガードマンをしながら、暇に飽かせて「セイバー・メトリクス」と呼ばれる統計学的手法を用い、野球を(数学的に)分析する方法を考え出しました。
それまでの大リーグで常識とされた、プロ野球選手に関する視点や基準(打撃率や出塁率といった数字で、選手の価値判断をする)を、より深く・よりマトリックス化して分析する手法を編み出したのです。
彼の編み出した分析手法は、2000年、オークランド・アスレチックスのGM(ジェネラル・マネージャー)ビリー・ビーンと、彼の補佐でエール大学経済学部出身の男によって、現実のプロ野球チームで初めて運用され、そこで発揮された大きな成果は、ファンや業界関係者たちを驚かせました。
この手法に反対する、旧来の慣習や固定観念(常識)・価値観で凝り固まった人たちと戦い、さまざまな困難を排除しながら「理論を現実化させるプロセス」を描いたのが、この映画です。
ラインと呼ばれる、実際の試合で選手たちを采配する監督の役割は、昔も今もほとんど変わっていないようです。「監督の経験と直観力」こそが、プロ野球の現場で求められる指揮官の重要な能力です。
しかし、スタッフ(チームに必要な選手を集め、戦力として育てる、いわば参謀本部)の部分は、野球のファンというだけの素人でもできることが証明されたのです(GM ビリー・ビーンは、元プロ野球選手)。
そして、なによりも「セイバー・メトリクス」という手法(考え方)によって、野球の新しい楽しみ方がもたらされたということに、注目すべきでしょう。
ここで日本拳法に戻りますが、私は、大鑑巨砲主義的な大学日本拳法(筋骨隆々の選手が、ものすごいスピードのハードパンチをガンガンぶっ放す)という楽しみ方が主流の中で、どこかの大学が「セイバー・メトリクス」的発想で、新しい大学日本拳法の魅力を見せてくれないものかと期待していたのです。(特に、青学・立教・立正・日大といったインディーズ系{伝統をベースにしながらも、革新的な発想を柔軟な姿勢で現実化できる、巨大戦艦ではなく軽快な駆逐艦・巡洋艦タイプの組織}に関心を持っていました。)
私の「2020年府立(全日)観戦記」で散見できるように、私自身は、試合時間内に於ける後拳の本数、なんていう数学(算数)によって選手の良し悪しを決めたり、なんていう楽しみ方をしていました。
ところが、2021年11月の立教大学日本拳法部キャプテンのブログを拝見させていただき、もっと違う「セイバー・メトリクス」の存在に気づかされました。
一言で言えば、彼女は「人を育てる・人を生かす楽しみ方」を教えてくれたのです。これは日本拳法をやる側での楽しみであって、観客として日本拳法を見る側の楽しみには、直接にはなりません。
しかし、この「人を育てる楽しみ」が各大学で定着すれば、部員数が増え、部の活気が増し、それによって大学日本拳法全体がもっと面白くなるにちがいない。
自分の子供を自分で育てることなく、学校や役所に洗脳されるがままに、丸投げしてしまうという時代風潮の中、
① まっさらな1年生に、手取り足取り日本拳法を教え、育てる(育てる側の)楽しみ。
② いつでも自分のことを気にかけ、心配し、喜んでくれる先輩がいるという(育てられる側の)安心感。
③ また、そうやって自分が教えられ・教えた経験を、次の世代につなげていく(伝統の継承という)充実感。
を体験できる場としての大学日本拳法(部)。
日本拳法という真剣勝負(思いっきり本気で蹴って・投げて・ぶん殴る)の世界であるからこそ、育て・育てられる側ともに、濃い心・熱い心になれる。
それを現実に「見せて」くれたのが、彼女の熱いブログであり、本書は、そんな彼女のキャプテンとしての様々な機能・役割の内、ブログから知ることのできるメンター(Mentor:善き助言者)としての確固たる存在、その方法論を浮き彫りにしてみようという試みです。
追記
3歳から英会話やってますという人と、18歳(大学)から始める人を同じクラスで教えるわけにはいかない。
しかし、大会や昇段級というマクロの目標のために「十数年のギャップ」をいかに埋めるか、どう追いつくか腐心すると同時に、大学で日本拳法をはじめた自分や後輩たちの成長をミクロの目で楽しむ(心の機微を紡ぐ)ことで、四年間の自分の存在意義(中身の濃い大学生活)を思いっきり実感できる。それを彼女は証明してくれました。
「灯りは燭台に置く」
灯りだけを見ていた私たちに、明かり全体を見ることを教えてくれたのです。
平栗雅人
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