第5話 苟(いやしく)も其の人に非ざれば、道は虚しく行われず

 第4話 苟(いやしく)も其の人に非ざれば、道は虚しく行われず


 2022年1月14日 V.1.01

 2022年3月13日 V.1.03


「苟(いやしく)も其の人に非ざれば、道は虚しく行われず。」

 事業の成否は人による。

 適確・適当な人を得ていなければ、その道だけがうまく行われるというものではない。

 男がいないわけではないのに女性を主将に抜擢するとは、こちらの学校も思い切ったことをしたものですが、その結果「道は正しく行われ」た。

 大学日本拳法のエポック・メイキング、新しい時代を拓いたといえるでしょう。

 この人は、どんな相手にも積極果敢に前へ出て、自分から攻撃する、前向きで・強い意志と素晴らしい運動神経の持ち主ということは、試合を見ればわかります。

 しかし、この山は単に高いばかりではない、切れのあるストレートな拳法をするだけではない。Something different何か違ったものを持っている。

 単によく切れるというだけでなく、きちっとした鞘に入っている刀。

 鞘に入った刀だが、抜き身の切れ味を持つ。


「山は高きに在らず、僊(せん)あれば即ち名あり」(古文真宝)

 山はその高さによって尊ばれはしない。僊、即ち仙人が住んでいれば、その名も高くなる。

 強いだけではない、徳があってこそ山として尊敬・畏敬・敬服される。目に見える金や肩書きではない。人の心に訴える・働きかけるような形而上的ちから(僊)が備わって初めて、そこに名(声)が生じる)。


「山高きが故に尊からず、木あるを以て尊しとなす」日本映画「けんかえれじい」

 一本々の木に主体性と個性あってこそ、山全体としてのしっかりとした存在感が出てくる。お名前は「高橋」ですが、単に高いばかりではない。彼女のチーム(山)を構成する木々にもそれぞれ個性がある。それは彼女が、各人の個性・彼や彼女という器の力を発揮させるための道を示してきたから。


「次郎長ばかりが偉いんじゃぁねえ、話し相手も偉いのよ。いい子分がいるんだよ次郎長には。」(広沢虎造)


 < 愛 >

 このキャプテンの愛は「母の愛」か。

「辛い時は無理しないで、たまには弱音を吐いてもいいんだよ。」

「負けて悔しがれる奴が強くなると誰かが言ってたのを、齋藤が勝負練で負けて泣いているのを見て思い出しました。」 → まさに、弟の飛雄馬をやさしく見守る姉明子。

 双方同じ兵力であれば、怒りや悲しみという感情の強い方が勝つことを、中国では[哀兵必勝]というそうです。



 ○ 坤(こん)は元(おお)いに亨(とお)る

 坤(こん)は乾(けん)に対する言葉。乾の意とする強さ・剛健という男性的なるものに対する大地・母であり、柔順・女性的な優しさの意。(元(おお)いに亨(とお)るは、すべてうまくいくの意)


 ○ 子を養いて、方(まさ)に父母の恩を知る

 同期の女性からは「高橋はきつすぎる」といわれるくらい、男勝りの厳しい指導をされていたようですが、一方で、母として部員たちを見守る女性的な気配りと優しさが、この人の重要な指導力のひとつであったのか。

 漫画「巨人の星」における、主人公・星 飛雄馬を鍛える、厳父・一徹と、彼らをやさしく見守る飛雄馬の姉・明子。この厳しい父と優しい姉(母親は亡くなって、いない)の二役を、一人で演じられていたようですが、いずれにしても部員たちを自分の子供のように育てようとしていたのでしょう。

 これは女性(キャプテン)の強みかもしれません。男が男女二役はできない?

 男が「辛い時は無理しないで、たまには弱音を吐いてもいいんだよ。」なんて言えません。まあ、西洋では「男は強くなければ生きていけない。優しくなければ生きている資格がない。」なんて、ハードボイルド小説で言ったりしてますが。


「もっと島田の成長を見ていたかった。」

「入部当時から一番の努力家で、練習外でも沢山トレーニングしていたね。」

「ハートに秘めた情熱と、拳法部への愛は部内No.1のたえちゃん。」

「拳法部大好きです!と愛を振り撒いてくれて本当に嬉しい!!」


 < 楽しむ >

 ○ 天を楽しみ、命を知る、故に憂えず。

 天命を知ってこれに安んじ、これを楽しむ。

 その心の状態ができたとき、人に憂いはなくなる。


 ○ 水寛(ひろ)ければ、魚大なり

 水が深く広ければ、大魚が棲む。大きな精神的環境には大きな人物が生じる。

 自由闊達にその人の個性・特性・徳性を引き伸ばすことができるから。だから、楽しい。楽しい環境だから活気が出る。この方の器量の大きさ、そして「荒を包む」度量の深さ。

 ○ 荒を包む

 人の欠点をも包み容れて、それを楽しみに変える度量。

 ○ 十指長短あり

 十本の指はそれぞれ長さが異なる、活用の道もちがう。

 ものや人にはそれぞれ独自の特質がある。それを生かして指導する。


 ○ このキャプテンの凄いところは、後輩や同期たちの言葉や行動、態度や姿勢に感情移入し、(上から目線ではなく)一緒になって楽しむことができる点。彼らが頑張っているのを見て楽しむ、その成長を楽しむ、そして何よりも、彼らが心から楽しんでくれる姿を見るのが幸せ、という天使みたいな方です。


「どの技も惚れ惚れしたよ。」


「素晴らしい試合をありがとう!」


「「練習できない間に動画見てイメトレしました!」って得意げに移動稽古してたり、教わってすぐの組技を試したりと、拳法をすごく楽しんでくれてるのが伝わってきたよ。」


「自信持ってこれからも頑張ってね。次会う時にどれだけ強くなってるか楽しみにしてるね。ファイト!」

「授業やバイトで大変だと思うけど、拳法部で過ごす時間をどうか楽しんでね!これからの成長を楽しみにしてるよ。」


「これからの島田の活躍を大いに楽しみにしてるよ!!頑張ってね!」

「澤田のおかげで、コロナ禍でも楽しい思い出をたくさん作ることができたよ!本当にありがと!!」


「コロナ明けの去年の秋、練習辛くない?と聞いたら「部活楽しいです!」と笑顔で返してくれたね。めちゃめちゃ嬉しかったなぁ。」


「表情が無さすぎて怖いと思ってたこともある桑原、最近はよく笑っていて話しやすくなりました(笑)」


「強い人から一本取れて嬉しそうにしている桑原を見て、私もすごく嬉しかったよ。」


「主将になっても気負わずに、今まで通りの桑原でいてね。最後の一年、拳法や仲間との時間を目一杯楽しんで!拳法部をよろしく頼んだよ!」


「楽しむことが一番大事だよ。また応援に行くからね!」


「誰より楽しそうに戦う姿が印象的で、私は髙見の戦う姿がすごく好きでした。」


「最後の一年、拳法を楽しむことも忘れずにね!また部活に顔出すね。」


「同期や拳法のことを楽しそうに語る八木を見て、そして何より大会で活躍する八木を見て、拳法部に入ってくれてよかったなと心から思いました。」


「人生うまくいくことばかりじゃありませんが、桜を散らす雨のように、物事の見方を変えて何事も楽しんでいけたらいいですね」

 https://ameblo.jp/rikkyo-kempo/entry-12668761329.html


 < 成長 > 

 ○ 君子は豹変し大人(たいじん)は虎変す

 「態度を変える」という意味ではなく、元は、日進月歩・進取の気性で生きよ、男子三日会わざれば括目して見よ、の意であったようです。

 

 ○ 先王以て方を省(かんが)み、民を観て教えを設(もう)く

 同僚や部下の風俗(人となり・習俗)を観て、それに適当したアドバイスやコメント・声援を設ける。

 ○ 地は名なきの草を長ぜず

  大地はすべての草を恵み養う考えはあるが、さりとて自力で繁茂する力のあるものでなければ、育てようもない。


 → だから、このキャプテンはどうしたか。

 愛によって、やる気を起こさせた、自分からがんばろう・成長しようという気になるように、さまざまな工夫をして心を引っ張りあげた。


「今まで練習してきたさまざまな技を繰り出し、果敢に攻める姿勢に胸を打たれました。勝ちたいという気持ちが前面に出ていて素晴らしかったです。強くなったね、齋藤!!」


「得意の組技ではなく立技でも一本が取れるようになり、彼の成長ぶりがうかがえました。」


「一年間真面目に部活に取り組み、沢山努力した成果だね。本当によく頑張ったね。」


「今後の活躍がとても楽しみです!」


「気づけばせりなの成長を見るのが私の楽しみの一つになってました。これから、楽しいことも辛いことも沢山あると思う。全部満喫して、拳法部での時間を楽しんでね!また練習行くからね!」


「その後入部してくれたみゆかはめきめき成長してくれて、最強で最高の仲間になってくれました。」


 < 和を大切にする >

 ○ 龍は雲に従い、風は虎に従う

   同声は相応じ、同気は相求む。

 自分自身が大自然の理に適った生き方をしていれば、自然と善き仲間が集まってくる、人の心はなびいて来る。


「4年生4人、個性はバラバラだけど補い合ってここまでやってこれた」


「最強で最高の仲間」


「現役のみんな、今までお世話になったOBOGの皆様、他大学の拳法部の皆様、陰ながら支えてくれた家族など多くの方々の応援の中最後の試合ができたことが心から幸せでした。

 沢山の温かいお言葉をありがとうございました。今日という日を一生忘れません。」


「一人では絶対に見られない景色を、みゆかが見せてくれました。」


「齋藤がいい試合をできたのは開米のおかげでもあると思います。」


「大会で勝つたびに開米が嬉しそうに声かけてくれたこと、本当に嬉しかったよ。」


「これからもみんなのことよろしくね!」


「コロナで大会が無くなって私自身目標を失いかけたとき、無人の道場でトレーニングする井上を見て私も頑張ろうと思えたんだ」


「みんなを沢山笑顔にしてね。」


「後輩への指導もたくさんしてくれたし、私にもいろんなアドバイスをくれたね。」


「誰かが怪我したら真っ先に心配しに行く優しい一面があって、人間味あふれる髙見」


「優しさとコミュ力で後輩のみんなを引っ張っていってね。」


「一緒に過ごした時間は他の人より短かったけれど、すごく濃い時間を過ごせた」


「まりあがいるだけで、周りの人はみんな笑顔になっていたね。私も何度も元気をもらったよ。」


「過去には二人とも空乱が下手でボコボコに殴りあってめっちゃムカついたり、さっむい真冬の道場で形の動画撮影中に押さえ面で殴られてめっちゃムカついたりしたけど、今となってはいい思い出です。」


「練習中は沢山私に声をかけてくれて、いつも心配してくれました。」


「部のみんなには見えにくかったかもしれないけど、拳法部の中で一番多くの仕事をしてくれました。きょーちゃんがいなかったら拳法部は回ってませんでした。」


「試合のたびに誰よりも熱心に応援して、誰かが勝てば自分のことのように喜び、負ければ悔しがりながらも寄り添って励ます」



 < 謙虚であれ >

 ○ 謙は亨(とお)る。君子は終わりあり。

 謙遜の徳を持っていれば、どこに行っても万事がよくおこなわれ、終わりを全うすることができる。


「沢山の方の支えがあって今があります。至らないところばかりの自分に2年間もついてきてくれて、本当にありがとうございました。」


 「歴代の立教拳法部主将の方々に比べて、自分はとても弱く、精神的にも未熟です。沢山の迷惑をかけてしまいました。」

 (私の商社時代の上司は上智でしたが、「神の味噌汁(神のみぞ知る)」と「Be Modest.」が口癖でした。)



 < 伝統の継承という意識 >

 ○ 往くとして復(かえ)らざる兂(な)きは、天地の際(きわ)なり

 天地の間の交わり、天地の間の自然は、いったん行けば必ず帰るもの。

「私が拳法部で目標にしていたことは、自分のプレーで人を感動させることです。1年生の時に見た新井先輩の総合の決勝戦で、私は心を動かされ、拳法の素晴らしさを知りました。その時から、新井先輩のように、私も自分のプレーで拳法の素晴らしさを伝え、後輩に「拳法部に入ってよかった」と思わせることが私の目標になりました。


 新井先輩のように最後を綺麗な勝利で締め括ることはできませんでしたが、試合が終わった後のみんなの表情を見て、少しは目標を達成できたのかなと思いました。


 大好きな先輩方が築いてきた拳法部を、無事に後輩たちにつなげることができて本当によかったです。」


 ○ 天道は盈(みつ)るを虧(か)いて謙に益す

 天道は、満ちたものがあれば、必ずそれを欠き、不足にあって謙遜の態度を守っている者に対しては、それを補い益すもの。「満ちれば欠け、欠ければ満ちる月の道理」

 よき伝統(人やその言動)は繰り返される。


「歴代の立教拳法部主将の方々に比べて、自分はとても弱く、精神的にも未熟です。沢山の迷惑をかけてしまいました。この2年間で幾つもの大会が中止になりました。1年生の頃から目指していたブロック対抗戦には参加することすら叶わず、なんのために部活をしているのか見失うこともありました。大会にかける思いが大きければ大きいほど失うものは大きく、主将という立場でありながら前を向けない自分がとても情けなかったです。」


「それでもここまで歩んで来れたのは、隣で励ましてくれた同期や、同じ目標を目指して共に歩んできた他大学の同期、コロナ禍でも入部してくれた今の2年生、変わらず道場に来てくれた今の3年生、指導に来てくださった皆様のおかげです。沢山の方の支えがあって今があります。至らないところばかりの自分に2年間もついてきてくれて、本当にありがとうございました。」


 ○ 労謙す、君子は終わりあり

 労すれども謙譲(骨を折って働いても謙遜してそれを誇らない)であれば、万事がよく行われ、終わりを全うすることができる。

 これが君子の徳であり、謙遜の徳を持っていれば、正しく閉じ、再び開くことができる。

 よき終わりを全うした者には、新たなる始まりが約束されている。

 日本では「終わりよければすべてよし」と。


 ○ 彼は解き、また結ぶ(ドイツ小説 「こおろぎ遊び」)


「入学前に思い描いていた大学生活とは全く違った4年間でしたが、毎日殴り・殴られて、悔しくて泣いて、全身怪我だらけで、心から尊敬できる先輩方に出会って、かけがえのない仲間と笑って、立教拳法部の約70年の歴史に名を残す、そんな全力疾走の4年間も悪くなかったです。

 むしろ最高の4年間でした。

 拳法部に入ってよかった!

 拳法部の未来に幸あれ!」


 

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