7 ギルドマスター
冒険者ギルドに戻る道中、暇なので自己紹介しながら色々を教えてもらった。
リーダーらしき人はやはりリーダーだった。
この街を拠点にしている、Bランクの冒険者パーティー『希望の弓』。そのリーダーをしているのがライザックさん。
ギルドからの依頼で、魔獣の生息範囲がおかしいとのことで森の調査をしていた途中、ブラックベアーに遭遇したとのこと。
今までは低ランク冒険者の目撃証言だったが、今回のことで森の異変は確定だろうから、森への出入りは原因がわかるまで制限される可能性があるらしい。
制限されると、折角見つけたヒール草の納品ができなくなるから勘弁してほしいけど。
「森の調査については報告がある。ギルドマスターはいるか?」
「今お呼びしますのでお待ちください。…あの隣の方は何か関係が?」
「危ういところを助けてもらってな。それも含めてギルドマスターに報告したい」
「えっ、その方々はFランクになりますが、本当ですか?」
「はっ?Fランク!?」
驚いた声をあげたライザックさんが、確かめるようにこちらを振り返ったので素直に頷く。
「そうですよ。昨日登録したばかりです」
「…そういうことか。ならそれも含めて報告しよう」
昨日街に着いたことは伝えた筈だが、うまく伝わってなかったよのかな。
何かを思案したライザックさんは一拍おいて、息を吐き出すように呟いた。
「戻ったと聞いたが、メンバー変わったのか?」
微妙な空気を壊すように声をかけてきた黒髪短髪の人。
マッスルとまではいかないが、それでもがっしりとした鍛えられた筋肉が服の上からでもよくわかる。
この人がギルドマスターかな。
「他のメンバーは治療に行っている。詳しくは別室でいいか?」
「あまりいい状況じゃなさそうだな」
ライザックさんの言葉があまりいい報告ではないことに気づいたのか、訝しげな表情をするギルドマスターに案内され、会議室のようなところに通された。
「探索した結果、ブラックベアーが確認された」
「っ本当か?!」
Cランク推奨の地域に複数のBランクパーティーで討伐するはずのブラックベアーが出たんだから、思わず問い質したくなる気持ちもわかる。
「あぁ、こちらに助けてもらわなかったら全滅していただろう。」
「こちらが現物になります」
「うおっ!」
さらっとじいじが切り落とされた頭を取り出して、証拠だと言わんばかりにギルドマスターに見えるように持ち上げた。
ギルドマスターは「アイテムボックス…」と呟いて、その頭を確認する。
「間違いなくブラックベアーだな。…これは貴方が?」
「一撃で首を落としていたぞ」
「それは凄い!高ランクとお見受けしますが、お名前を聞いても?」
「それについての相談だ。この方昨日ギルド登録をしたばかりで、さらにまだFランクだそうだ」
「え、F…」
ギルドマスターは目を見開いてじいじをガン見している。
あーBランクパーティーを助ける実力があるのにFランクなのが驚かれるのか?
それともFランクがCランク推奨地域にいたことかな?
「早めにランクをあげるべきだと思ってな。一気には無理だが今回の討伐でDランクくらいはどうか?」
「…そうだな。Fランクのままではギルドにとっても損失だな
おや、いつの間にか目標にしていたDランクなりそうだけど、それはじいじだけなのかな?私のこと視界に入れていないような。
「今回ブラックベアーの首を切り落としたのはリサ様ですが、リサ様のランクをあげるというお話ですよね?」
「「その子!?」」
じいじの発言にギルドマスターとライザックさんが一斉に私を見て声をあげた。
「じいじの指導の賜物だよ」
「リサ様の努力の成果ですよ」
おぉ!じいじに褒められた!
じいじの修行は厳しいけど、ちゃんと結果が出るから諦めずに続けられるんだけど、その努力も誉められるとやっぱり嬉しい!
なんて考えていたら。
「「いやいやいや!」」
「うん?」
「その嬢ちゃんがやったのか?!本当に!?」
「そうですよ~。やっぱり気づいてなかったんですね」
救助の声かけも私がしたはずなのだが。
なんだ、アイテムボックス持ちであることを示せばいいのか?
なんか出せるものあったかな。
「リサ様、少し静かにしておいてくださいね」
「はい!」
またじいじが念を押してにっこり笑うので、元気よく返事をする。
このお話が終わるまでは余計なことはしない方がいい、と経験からわかる。
「それより今は森の調査の方が大事なのではないですか?」
「「はいっ!」」
じいじの冷静で最もな言葉に大人2人は反射的に即答した。
もしかしたら今も被害が出ているかもしれない状況で、ランクの話はなかったよね。
じいじもそれで恐い笑顔を浮かべているのかな?
証言もしたし現物も見せた。昨日来たばかりの私達は助言もできない。
これ以上私達がすることはないので、そそくさと退席させてもらう。あとはギルド内で協議して判断してください。
受付で採取した薬草を納品して、中断していたお昼ご飯を食べよう!
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