5 ギルド登録

船に揺られること3日、何事もなく隣の大陸国であるエストガースの港町リーンに着いた。

船の中では動き回ることはできないので、指先にじいじが指定した魔力を集め維持する練習をして過ごした。

結果、魔力操作スキルを獲得に成功。

魔法を使う時に微細な調整ができれば、有利に進むことが多く、特にこれから魔獣を狩るのであれば、素材の価値を落とさないためにも必要と言われたから頑張った。


「お待ちかねのギルド登録に行きましょうか」

「は~い、楽しみ!」


このリーンは港町で海があり、反対側に魔獣の森がある。そのため商人も冒険者の稼ぎやすい立地でとても賑やかな街になっている。

そしてやって来ました!異世界定番の冒険者ギルド。

周りの建物は木造が多いが、職種のせいだろうか、冒険者ギルドは石造りになっている。

それもあって厳つい雰囲気を漂わせている。


中にはいると、お昼を過ぎているせいか、人は疎らだった。

見渡していると受付のお姉さんと目が合って、「どうぞ」と言わんばかりににこりと微笑まれた。すぐに受付できるようだ。


「冒険者登録したいのですが」

「登録ですね。こちらに記入をお願いします」


出された用紙には名前や種族や出身地、特技などの項目があった。

書けるところだけでいいとのことだったので、当たり障りのない箇所を記入して提出した。

特技はパーティーメンバーを探すときやギルドからの討伐依頼の参考にするとのことで、迷ったけど最終的には書かなかった。

パーティーメンバーはじいじ以外と組む気はないし、ギルドの依頼もランクが低いうちはないだろうし。

それに一番の理由は何を特技と書いていいかわからなかったからだ。

武術も魔法もできるが、特技と言えるほどなのか、人と比べたこともないので、わからないのだ。じいじを参考にしたら、どれも特技ではなくなるだろうし。


「ではカードを作成している間、ギルドの規則について説明させていただきます」


最低限の規則は登録するときに必ず説明するそうだ。

規則のパンフを置いておいても見ない人が多く、知らない間に規則違反などをしてしまうのを防ぐためだ。

受付のお姉さんお疲れ様です。


ランクについてはGからSまであるが、基本はFからになる。

Gは未成年が始めるランクで、街中の依頼限定にしているそうだ。E以上の人と一緒であれば、街外の依頼も受けれるようにしている。

冒険者は自己責任と言っても、未成年の保護はしっかりしているみたいで安心できる組織みたいだ。


依頼は壁脇に並べられているボードから1つ上のランクまで受注可能、後はギルドから直接される特殊依頼の2種類。

魔獣の買い取りをしているので、もし依頼外の魔獣があればそちらで売却するといいとのこと。

個人売買でもいいが、トラブルが起きても関与できず、不利益になりやすいので低ランクの内は控えた方がいいなど。


「一番気をつけていただきたいのが、冒険者同士の争いです。基本は口出ししませんが、ギルド内で揉め事は厳禁です。仕掛けた場合は評価が下がるか場合によっては資格剥奪になります」

「相手が仕掛けてきた場合にやり返したらこちらの評価は下がりますか?」

「それは正当防衛なので大丈夫です」


自分から仕掛けることはないだろうけど、ラノベ定番の粗暴な冒険者に絡まれる、なんてことはあるかもしれない。

防御しただけで、評価が下がるなんてなったら嫌だし、確認しておくのは大事だよね。


「ではできたカードに魔力を流すか、血を垂らして個人認識できるように登録してください」


魔力が流せるので血は不要のようだ。痛い思いをしなくてラッキー。

カードに記載されている内容も、名前とギルドランクだけで、スキルや称号は出ないようで助かった。加護のことがバレて、勇者再びなんてことになったら困る。


規則については大体わかったので、お姉さんにお礼を言う。

次は依頼が貼ってあるボードに向かおう。

と思ったら、じいじに肩を掴まれた。


「その前に確認しておきましょうね」

「えっ?」

「この周囲で採れる薬草や魔獣の図鑑は閲覧可能でしょうか?」

「資料室内であれば可能ですよ」


私を掴んだまま、じいじは受付のお姉さんに朗らかな笑みを浮かべて、どの資料を見るべきか問い合わせをしている。

その様子にちょっとだけ嫌な予感がするのは気のせいかな?

ついでにお薦めの宿を聞くのは流石と言えよう。

聞き終えてこちらを振り返るじいじは、笑顔のままなのに恐ろしい感じがして仕方がない。


「まずはお勉強からいたしましょう?」


疑問符が仕事していないですよ、じいじ。

これが所謂、有無を言わさずというやつか。

現実から逃避するように別のことを考える私をじいじは資料室へドナドナする。


以降日が暮れるまで、私は資料室で勉強をさせられたのだった。

この周辺の薬草や魔獣に限らず、国内外のあらゆる図鑑を頭に叩き込むはめになった。

精神的疲労で私は夕飯を食べることなくベッドに沈む。

あれ、私は精神異常無効だったはずだよね?

これは攻撃じゃないから違うのか?

何にしても憧れの冒険者初日が勉強漬けなんて、私は認めたくなかった。

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