ロリコン探偵♡ご主人様♡

穂志上ケイ

第1話 事件発生

「私分かった!絶対この佐々木ってやつが犯人だと思うわ。だってアリバイが一致してないし。ふふっ、私ってホント賢いわね〜」

「ミコトさん多分違うと思うと思います」

「な、なんでよ!」

「これまでの経験上ミコトさんが言い当てる人は犯人ではないので」

「そ、そんな事ないわよ!じゃあヒカリはどいつが犯人だと思うのよ」

「そうですね。私の考えだとこの女の人ですね」

「でもさっきこの人はちゃんとアリバイが証明されたじゃない」

「確かにそうですね。でもそれはこの人を安心させるための罠だと思います」

「ふ、ふーん。ほら安堂次のページめくって!」

「はいはい」

 まったく人使いの荒いメイドだ。

「さあどっちが正しいか勝負よ」

「安心して下さい。私の推理は正しいので」

「なっ!ヒカリのくせに生意気ね」

 二人の議論そっちのけで次のページに行こうとすると。

 ピンポーン。

 なんと間の悪いチャイムだ。もう少しで犯人のページなのに。

「私たちが出てきますね」

二人は部屋を出て玄関へ向かった。

「よっ、お嬢ちゃんたち。あのロリコン野郎はいるかな?」

 げっ、この声は。

 俺は急いでベットから起き上がり、ドアから距離をとった。

「マスターなら奥の部屋にいますよ。坂柳警部」

「そうか。ありがとね」

 そう言って彼女は足音を立ててこちらに向かってきた。

「安堂、少し話が……って何やってるんだ」

「坂柳さんが俺を襲ってきても返り討ちにできるように構えてるんだ」

 俺は部屋のドアから距離を置き、ファイティングポーズをとっている。

「ほう、私を返り討ちにか。いい度胸だな、かかってこい」

「ふん。女だからって手加減しませんよ!」

 徐々に距離を詰め、坂柳さんに向かい始めた。

 しかし。

「えっ?」

 足元に投げ捨てていた先ほどの漫画を間違って踏みつけてしまい、体勢を崩してしまった。そして勢い付いた俺の体と言うより頭は坂柳さんのある所に目掛けて行った。

 むにゅ。

 柔らかいそれは勢いを吸収し、俺の動きを止めた。

「な、何してるのよ。この変態!!」

 前が見えない中、確実に俺の横腹に鉄拳制裁を繰り出してきたメイド。その衝撃でドアの方に飛ばされてしまった。

「ったく。そんなに強く殴らないくてもいいだろ。ミコト」

 全くこの赤髪メイドは。

「ふん。私は何も悪くないわ。悪いのはその、む、胸に埋まった安堂よ!」

 なんと理不尽な。俺だって埋まりたくてやった訳じゃないのに。

「まあまあミコトさん、それぐらいにしておきましょうよ。確かに悪いのはマスターですけど」

 こっちの青髪メイドもか。揃いも揃って酷いものだ。

「はいはい、俺が悪いですよーだ。それで坂柳さん何の様なんですか?」

「そうだったな。安堂、山奥にコテージを持っているな」

「も、持ってますけど。それが?」

「その持ってる内の一つで事件が起きた。だから持ち主のお前には現場に来てもらいたい」

「行くだけでいいのか?」

「いや、勿論犯人を見つけてもらう」

 はあ、何と迷惑な犯人だ。人のコテージ(不動産が貸している物件)で事件なんて。

 本当にこの事件に巻き込まれる体質を恨んでしまいたいものだ。

「はあ。分かりましたよ。じゃあ行くぞ二人とも」

「よーしここは私の完璧な推理の見せ所ね!」

「ふふっ、期待してるねミコトちゃん」

「言ったわね。じゃあせっかくだから今回の犯人を当てた方が勝ちにしましょ!」

「よろしいですよ。報酬はマスターに一個好きな事を頼める権利でどうでしょうか?」

「べ、別にそんな権利いらないけどまあそれでいいわ」

「ふふっ、ミコトさんは素直ではありませんね」

「う、うっさいわね!ヒカリだって素直じゃない所くらいあるでしょ!」

 はあ、何をしてるんだか。

 それにしても勝手に推理の報酬にされるとは。このメイドたちは俺に恨みでもあるのだろうか?まあサクッと推理して漫画の続きでも読むとしよう。


 ■■■

 俺たちは坂柳さんに連れられ事件があったコテージに向かった。

「これは今回の被害者と容疑者のリストだ。一応目を通しておけ」

 そのリストを受け取ると大まかな情報が書かれていた。

 被害者の名前は川辺達也。大柄でラグビー部に所属。ん?その割にはロープにもがいた後がないな。大柄なら多少抵抗してロープがほつれる可能性があるはずだが。

「坂柳さんこの被害者の死因は何ですか?」

「窒息死だ。これだけ聞けば単なる自殺と考えられるがそうにも考えれなくてな」

「というと?」

「軽く事情聴取したんだが、彼の彼女が自殺なんて絶対にないと言っていてな。なんせ順風満帆の人生を送っていたらしいからな」

「そうですか」

 そう考えると誰かの恨みを買って殺されたって線が濃厚なだな。

 そして死亡推定時刻は今日の午前四時か。

「こちらが被害者と一緒にいた人たちだ」

 容疑者は全部で四人。男女二人ずつだ。

 さてと行きますか。

「んじゃ早速。被害者を殺したのは誰ですか?」

「馬鹿野郎!」

 突如後ろから勢いよく頭を叩かれてしまった。

「ちょっと坂柳さん邪魔しないでくださいよ」

「何が邪魔だ。あれを仕事というのか?」

 全くお堅い方だ。

「……はあ。すみませんね、ほんの冗談です。それでは事件について詳しく教えて頂けますか?」

「その、私たちこのコテージを借りてパーティーをしていたんです。夜も楽しく過ごしてました。けど朝起きると彼はリビングで首を吊っていて」

「なるほど。ではお一人ずつ事情聴取していきますね」

 俺は渡された資料と共にメイド二人と坂柳さんと一緒にコテージの隣にある小屋に連れて入った。

 そして一人ずつ容疑者をこの場に呼び出した。

「ではお名前を」

「山田健太です」

「山田さん。あなたは昨晩から明け方まで何をしていましたか?」

「えっと普通に寝てましたけど」

 いや、それは知ってるわ。そうじゃなくて。

「失礼しました。マスターの質問が拙劣でしたね。その時間にかけて変わった事はありませんでしたか?」

ナイスフォローと言いたい所だが拙劣は言い過ぎじゃないですか?

「変わった事?特には……あっ、でも少し奇妙な事が」

「奇妙な事ですか」

 ヒカリはその挙動を見逃さず、すかさずメモを取り出した。

 なんと優秀なメイドさんだ。これなら俺じゃなくてもいいんじゃないのか?と少し思う俺だった。

 彼は少し声色を変え、話し出した。

「みんな酒が回り出してそろそろ寝ようと思ってたときの事でした。外から足音と人影が見えて。ここの周辺は僕たちが利用申請をしているので人がくるはずなんてないんです。でも」

 成る程。この四人の他にも人が。

「それを見たのってあんなだけなの?」

「う、うん。みんなでその話をしたし」

 五人目の容疑者とまでは行かなそうだが要注意だな。

「単純にクマでも出たんじゃないの?ここら辺山だし」

 クマね。あり得ない話しじゃないけど現実的じゃないな。なんせここは。

「ミコトさんそれはあり得ませんよ。だってここはしっかりと動物対策もされてます。それに利用者以外入れない仕組みなんです」

「じゃあその人影は偽物だっていうの?」

「いやいやちゃんと影は動いてましたよ!なんらなコテージの周りをうろろしてたので」

「そうですか。因みにその人影を見たのは何時くらいですかね」

「確か、十一時ぐらいだったと思います」

「ありがとうございます。それでその後は?」

「不気味だったのでそのまま何もせずどこかにいくのを待ちました。ヒロトは面白がって外に行こうとしてましたが」

 ヒロト。次に事情聴取する容疑者か。

「分かりました。では次にですが……」

 それから事細かく事情聴取をし、次の容疑者へと移った。

「お名前を」

「島崎ヒロトで〜す!よろしくっす!」

「……島崎さん。昨晩から明け方にかけて何か変わった事はありませんでしたか?」

「変わった事すか。だと誰かここに近づいてきたことすかね」

一応さっきの山田と一緒か。後の二人もそうだといいが。

「あんた喋り方うざいわよ」

「あはは、かなりストレートに言うんだね。このちびっ子たちは何なんですか?」

「俺のメイドです」

「探偵さん完全に俺らより犯罪臭しますよ。そんなロリメイド連れてると」

 仰る通りです。だからあのあだ名が付くんだよな。

「まるでロリコン探偵っすね」

 側から見ればそう思うだろうな。源にどの現場に行っても必ずそれを口に出されてしまうからな。

 変な空気になりつつも事情聴取を再開しようとするとミコトが俺の前に出てきた。そして。

「あんたさっき私たちの事ちびっ子って言ったわね。私たちは一人前のレディーよ!」

「そっかそっか。それはごめんね。赤髪のちびっ子ちゃん」

「くっ、安堂!絶対こいつが犯人だわ!もう逮捕しちゃいましょ!というか私が捕まえるわ」

 そんな簡単に逮捕できるわけないだろ。

「はいはい。そのぐらいしてくれミコト。捜査が進まないだろ」

「何よ。安堂はそいつの味方なわけ?」

 何故そうなるんだ。俺は仕事をしてるだけなのに。

「そうじゃなけど」

「ふん、もういいわよ」

 そう言ってミコトは端の方に行ってうずくまってしまった。

「すみません、俺のメイドが」

「いえいえ、子供はあんなものですからね」

 その言葉に反応してミコトは容疑者を睨みつけた。

「それでは話を戻しますね。その出来事は全員が知っていますか?」

「多分知ってると思うっす」

「そうですか。ではあなたはその人影を見て外に出ようとしましたか?」

「そうっすね。でもちょっとした悪ふざけでほんとには出てませんよ。でも」

「でも?」

「夜寝ようとしてる時に外から大きな音がして、少し気になって外にでたんです。そしたら急いで草むらの方に走っていく感じがして」

 それが本当なら五人目の存在が確実になってくるな。

「それを知っているのはあなただけですか?」

「はい。それを話そうと思ったら二人はもう寝てたので」

「分かりました。最後にその音を聞いた時間を教えていただけますか?」

「えっと確か深夜二時くらいだと思います」

「ありがとうございます」

 さあ一度整理だ。パーティーを楽しんでいた彼ら。ところが突然人影がこのコテージに接近。利用申請をしているため利用者以外コテージに近づく事はほぼ不可能。そして深夜二時ごろ再びその人影が現れる。大きな音を立てて。と言うことは犯行は深夜二時以降。しかし彼の言う通り大きな音なら目が覚めてもおかしくないはずだ。だが現に容疑者の山田はその供述をしていない。となるとそれほど大きな音ではない可能性も出てくる。まあこの二人で決定づけるのは難しい。残りの二人のアリバイも聴かないと真実はわからないな。

「ヒカリ、あの二人の話を聞いてどう思った?」

「そうですね。特に怪しい面もなく単純に自殺もしくは第三者の犯行と考えるのが妥当かと」

「まあ、そうなるよな。ただ自殺じゃないならどうやってこの敷地内に入ったかが問題だ」

「そうですね。そうするとやはりその人影自体嘘の可能性がありますね」

「ああ。ただこの状態で判断するのは早すぎる。あと二人の話を聞いてしっかり整理しよう」

「分かりました。では次に」

「おい、詰め込みすぎだ。ちょっとは休憩しろ」

 そう言って坂柳さんは鞄からお菓子を取り出した。

「えっ?なんですかこれ」

「差し入れだ」

「そ、そうですか。ありがとうございます」

 机に置かれたお菓子を手に取ろうとすると坂柳さんに止めれてしまった。

「それはお前のじゃない。ちびっ子ちゃんたちのだ。お前にはこれで十分だ」

 俺はポケットから取り出された飴を受け取った。

 飴って大阪のおばちゃんかよ。

 後ヒョウ柄の服着てたら完璧だな。

「ミコトさんも一緒に頂きましょ」

「……うん」

 やっと端っこから動き出したミコト。

「美味しいですね。ミコトさん」

「うん」

 それからお菓子で休憩を挟み次の容疑者へ移った。


 ■■■

「お名前を」

「氷川楓、です」

 何かを悟ったのかヒカリがこう尋ねた。

「あの氷川さんは被害者とどういう御関係だったんですか?」

「彼とは交際してました」

 こう言う時のヒカリの勘は凄いなぁ。やっぱり同じ女性だから気付きやすいのかな。

「成る程。それはお悔やみ申し上げます。そんな状態で悪いのですが昨晩から明け方についてお話し願えますか?」

「はい」

 それから彼女は先ほどの二人と同じ事を話しだし、寝るまでこれと一緒にいたと言うことを伝えてくれた。

「それでは深夜二時頃何をしていましたか?」

「部屋で寝てました」

「そうですか。実はその時間に大きな音がなったらしいのですが氷川さんは聞こえましたか?」

「いえ、聞こえませんでしたが」

「そうですか」

 となると音が聞こえたと言うことすら嘘に近いな。

「あっ、でも何時か分かりませんけど外で達也が誰かと話しているのを聞きました」

「何を話していたかは」

「そこまでは。すみません」

「いえ、情報をありがとうございます」

 じゃあ彼、川辺達也は外で犯人に遭遇していると言うことか。

 よし次で最後の容疑者だ。

「お名前を」

「佐藤佳奈です」

「失礼ですが佐藤さん。川辺さんとはどういう関係ですか?」

「それ関係あるの?てかなんで子供が」

「私たちはマスターのメイドです。言わば助手みたいなものなので気にしないでください」

「……そうですか。それで彼との関係でしたね。彼とはただの友達です」

「そうですか。それでは夜に人影を見たのは間違いないですか?」

「はい、全員でその話をしましたので」

「では深夜二時頃大きな音ががしたのですが聞こえましたか?」

「はい、丁度起きていたので」

 成る程。これで少なくとも音は鳴ったという訳か。まあ口裏を合わせている可能性もあるが。

「そうですか。失礼ですがそんな時間まで何をしていたんですか?」

「携帯を見てました」

「携帯、ですか。まあいいでしょう。それよりその後外に出たりとかは」

「しました。彼から達也からチャットの連絡があったので」

「そのチャット見せていただけますか?」

「い、いいですけど」

 彼女は鞄から携帯を取り出し、彼とのやりとりを見せてくれた。

 時間の表示は午前二時を記していた。

『起きてるか?』

『起きているけど、何?』

『ちょっと話がある。外に来てくれ』

『分かった』

「ありがとうございます。それで彼とは何を話したんですか?」

「明日のことです」

「明日?と言いますと今日ですよね」

「はい。実は今日楓の誕生日でサプライズの相談をされたんです」

「わざわざ外でですか」

「はい。一応私は中で相談しようって提案したんですけど妙に中を嫌がって。仕方なく外にしたんです」

 中を嫌がっていた。まあ話していて本人にバレればサプライズは台無しになる。気持ちはわからなくもないが、本当にそれだけだろうか。

「それで話し終わった後は?」

「すぐに部屋に戻りました。人影の人物がいるかもって思ったので」

「そうですか。ありがとうございます」

 部屋を出ていった彼女を見送ると同時に大きくため息をついた。

 五人目の容疑者か。にわかに信じ難いが他の容疑者の供述を聞く限り、その五人目を除外するのは難しいそうだ。

 さてどう推理したものか。


 ■■■

 事情聴取を終えた俺たちは外に出てある程度の情報をまとめ出した。

「大体の流れは分かったが誰が犯人かまではいかないな」

「そうですね。やはり情報が必要ですね」

 さあこんな困った時には。

「さてと色々と分かった所で、ミコト出番だぞ」

「な、何よ」

「いやだから犯人当ての出番だぞ」

 そろそろ機嫌を直してもらわないとな。

「……しょうがないわね、ちゃんと聞いときなさいよ安堂!」

「勿論だ」

「犯人は絶対五人目のやつよ!」

「「「……」」」

「な、何よ!」

 なんというか頼もしい言えばいいのか、残念と言えばいいの。本当に。

 だがこれでこそいつものミコトだ。

「ミコトさん仮にその五人目が犯人だとしても探す手がかりがない以上どうする事も出来ないんです」

「そ、そんな事わかってるわよ!」

「でもそんな存在するかも分からない五人目を探すよりあの四人を調べ尽くす方が簡単だ。そこで」

「私の出番ですね。マスター」

「ああ、容疑者の詳しい情報収集を頼む」

「おまかせください!」

「坂柳さん、ヒカリをお願いします」

「分かった」

 ヒカリと坂柳さんはその場を離れ、コテージの中に入って行った。

 さてとこれである程度の情報は絞れるな。

 するとミコトが私は何をするの?という眼差しでこちらを見てきた。

「ミコトは俺と証拠品探しだ」

「しょ、しょうがないわね。暇だから手伝ってあげるわ!」

 さてと頑張るか。

 さあ、覚悟しろよ犯人。

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