085.王女様だったみたいです。

 急いで帰れば、3日ほどでタイランスまで帰れます。何事もなければ良いのですが・・・あっ、これってフラグと言うんでしたっけ・・・

 『姉様、帰りも道案内お願いして良いですか。』

 『ええ、大丈夫ですよ。』

 姉様に道案内をお願いしておけば安全です。私は本当に真っ直ぐしかわかりませんから。

 『イロハ、街道に出たあたりで馬車が襲われているようですがどうしますか?』

 どうしますって、母様ならきっと助けるんでしょうね・・・でも、助けていたら家に帰るのが遅くなりますね・・・

 『姉様、母様なら助けると思いますか?』

 『そうね、お母様ならきっと助けるでしょうね・・・面倒だと言いながら・・・』

 そうですよね、母様は極力面倒ごとには関わりたくないと言ってますから。

 『姉様・・・一応、助けるだけ助けましょうか・・・』

 『そうですね、イロハもそう言うのなら助けに行きましょうか。』

 私もって、姉様は最初から助けに行くつもりだったんですか・・・もし私が、助けにいかないと言ったらどうしたのでしょうか・・・気になります・・・



 『姉様、案内お願いします。』

 私には位置など全くわかりませんので姉様にお任せです。私たちが走ること、5分ほどで馬車の付近までたどり着きます。

 オークに襲われているようですね。この辺りの街道でオークに襲われるのは珍しいですね。ワイルドボアではなくオークですか。この辺りでは見かけない魔物のはずではなかったでしょうか・・・

 まぁ良いです。私たちにとっては、オークもワイルドボアも大して変わりありません。さっさと倒して帰りましょう。


 馬車の周りを何人かのメイドが守っていますが、もう何人かは倒れているようです。死んではいないようですが、戦えはしないでしょう。

 オークは・・・5匹ですか・・・さっさと片付けましょう。私が近づく前に姉様の弓で2匹倒れましたね。せっかくなのですから私にも残しておいてください。

 私が、1匹倒す間に姉様の弓が残り2匹も倒してしまいました・・・姉様の弓、強すぎませんか・・・


 さて、馬車も助けましたし帰りましょう。あっ、馬車から誰か出てきますね・・・メイドさんのようです。これは早く立ち去った方がいいやつなのでしょうね・・・

 『イロハ、待ちなさい。』

 姉様が引きとめますね。これって、最初から助けたら帰れないやつでは・・・姉様わかってましたよね・・・かなり立派な馬車です。貴族とかそう言った感じのやつでしょうか・・・

 「この度は助けていただき、ありがとうございます。」

 メイドさんが話しかけてきます。後ろには私と同じくらいの年恰好の女の人が立ってますね。こちらがこの馬車の持ち主でしょう。

 この国の第3王女様だそうです。面倒ごとですね・・・護衛のものが戦えなくなったので、護衛を依頼できないかとのことですか・・・どうしましょう。姉様の方を見てみます。

 『わかりました。どちらまでいかれるのですか。』

 さすが姉様です。しっかりした受け答えができます。私では・・・いえ、私でも出来ますよ。でも姉様の方が適役なだけです。

 「タイランスまで行きたいのですが、お願いできますでしょうか。」

 タイランスですか・・・行き先は同じですが、馬車だとここから約1週間ですか・・・姉様はどう返事するのでしょうか・・・

 『わかりました。私たちも行き先はタイランスですのでその依頼、お受けいたします。』

 「助かります。」

 『姉様、いいのですか?帰りがかなり遅くなりますよ。』

 『イロハ、いいですか。人助けをして帰りが遅くなった場合、お母様は褒めてくれると思いますよ。左手のこと謝りやすくなるとは思いませんか?』

 なるほど、さすが姉様です。確かに母様に怒られるとは思いますが、人助けもしましたと言えばいいのですね。少しだけ褒めてもらえるかもしれません。

 『わかりました。さすが姉様ですね。』



 私たちは、依頼を受けて一路タイランスに向け馬車を走らせることになりました。

 何やら理由があって、途中の村には寄るのですが街には寄らずに行きたいとのことです。まぁ、私たちは構いませんので言われた通りにしましょう。

 食料は・・・私たちには必要なかったので持ってきてはいませんが、姉様がたまにワイルドボアを狩ってきてくれるのでそれを食べておきます。水は魔法使いの人がいるそうなので、一応分けてもらうようにしておきました。

 私たちが人形だと分かってしまうと、母様に迷惑がかかりますからしっかりと人間のふりをしないといけません。



 途中何度かワイルドボアが現れてはいましたが、他の人が気付く前に姉様が弓で処理していました。さすがです・・・



 道中、タイランスに何の用があるのかを聞いてみたのですがどうやら「アウトフィット」母様の店に用があるようなのです。

 私たちが母様の娘であると言うと、先に用件を話してくれました。どうやら冒険者用の装備を注文したいのだそうです。それも結構な数のようです。

 私たちも値段や納期のことは母様から聞いていますから簡単な話くらいはできます。

 どうやら、かなり急ぎのようです。どう言った理由かまでは聞いてませんが、きっといろいろあるのでしょう。王女様の相手として私が馬車の中に入れられてしまいました。本当なら姉様が中に入った方がいいと思うのですが、外にいないと魔物の対応が遅くなると言って私が中に入れられました。

 姉様、中にいても周り見えましたよね?面倒だから私を中に入れたってことないですよね?


 道中は何事もなくタイランスまで来ることができました。私が王女様にいろいろ聞かれた以外は・・・母様はきっとこう言ったことが面倒で関わりたくないと言ったのでしょうね。私は人形ですが、母様の気持ちが少しわかったような気がしました・・・

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る