005.母親になってしまったみたいです。

 時間になったようです。次々と繭が煙となって消えてゆきますね。あの繭も魔力で出来ているんでしょうね、きっと・・・

 さて、目の前にあるのは弓矢が2セットと大きめの木の盾。まぁ、私には使えないのですけれども。あと1時間もすれば最初の人形・・・悲しくも素材にかわってしまう予定なのですが、素材を取ることの出来ない私にとっては辛い決断だったのですよ。

 私用の服とかも作りたいところなのですが、服の素材がありません。今着ている服を素材にといったことも考えたのですが、その間なにも着てない状況に陥るではないですか・・・とても耐えられる状態ではありません。却下です。ええ、却下ですとも。


 そうなると私も簡単な鎧的な物を用意するのが良いのでしょうか。メイド服と一緒に用意しましょう。私もメイド服というのはどうかと思いますので軍服風ワンピースというのが良いでしょうか。コルセットできゅっと腰の辺りを締めた感じの・・・感じだけでいいです、風でいいんです。本当にコルセットなんて締めたらきついだけです。赤の地に黒の縁取り、ボタン多めでゴスロリっぽさも入ったもの・・・派手かなぁ・・・

 とりあえずあと1時間ほど待ちましょう・・・



 出来たようですね。繭が煙になってゆきます。ごめんね・・・本当にごめんね・・・

 何度も謝りながら・・・

 「ディスアッセンブルドール」

 唱えると目の前にあった人形は龍の素材に変わってゆきます。これで素材が出来ましたね。ここから3時間かけてもうあと2人、人形を作ります。そのうち1人はもう一回素材に・・・1人が最初の子になるわけです。

 では、もう1度人形を作るとしましょう。

 「アッセンブルドール」

 先ほどと同じように人形の詳細を頭に浮かべながら呪文のように唱える。

 呪文?何かパソコンのコマンドのような感じもするけど・・・どっちでもいいですか・・・


 さて、ここに素材が少し余ったわけだけどこれを使って私の軍服風ワンピとメイド服アーマーを作らないといけないのですよね。

 まずはさっきも思い描いていたメイド服アーマーから。

 「アッセンブルオブジェクト メイド服アーマー」

 うん今度はうまくいったようですね。目の前に繭が紡がれていきます。これからいくらかか時間はかかるでしょうが、ほおっておけば思い描いたとおりの物が出来上がるでしょう。

 まだ、素材がだいぶ残ってますね。素材はメイド服アーマーと同じでデザイン違いといった風で作りますか。スカートの中に物を入れる必要は無いですね。空間収納がありますしね。カチューシャはなしで、帽子がいいですね・・・アーミーキャップ、ベレー帽?どっちがいいかしら・・・やっぱりアーミーキャップかなぁ・・・これはワンピとは逆に黒地に赤の縁取りかな?

 「アッセンブルオブジェクト 軍服風ワンピアーマー」

 繭になりましたね、上手く出来ていると良いのですが結果待ちですね。古龍の素材を使った鎧ですか・・・かなり丈夫なんでしょうね、丈夫で無いと困りますけど・・・

 素材はまだあるようですね。とりあえずブーツを2足作っておきましょう。


 やはり、人形より先に服が出来上がりますか。メイド服もワンピも良い出来のようですね。ブーツも申し分ない出来でしょう。

 人形が出来るまでまだ時間もあるでしょうから先に着替えてしまいますか・・・木の陰に隠れてこそこそ着替えましょう・・・安全地帯だから誰も入ってこないとは思いますが一応です、一応・・・



 いくらここが安全地帯だと言っても早めに近くの町に移動すべきでしょうか。ここで3人とも作ってゆくつもりでしたが移動方法を先に考えた方が良さそうですね。

 乗り物が必要ですね・・・やはり馬でしょうか・・・と言ってもつかまえてくるとか無理ですし、創りますか?

 馬の人形って有りでしょうか?ぬいぐるみのような物が出来ると困りますが想像力依存ですし、頑張ってみましょうか。


 やっと人形も出来上がったようですね。1人はごめんなさいして素材に変換。出来た素材で馬を創りましょう。

  「アッセンブルドール 馬」

 繭が出来ましたね。ちゃんと馬が出来ると良いのですが・・・

 さすがに古龍素材はほとんど残りましたか。古龍素材で出来た馬なんて怖いですからね。


 さて、人形とご対面ですね。可愛い子です。案の定、裸ではありますが・・・服は起こしてあげてから自分で着てもらいましょう。

 名前を付けてあげないといけませんね。名前は・・・アヤハにしましょう。

 「アヤハ、起きなさい。」

 優しく声をかけてあげましょう。ゆっくりめを開けて私のほうをじっと見つめてきます。うん、なんて愛らしいんでしょう・・・

 『お母様、おはようございます。』

 「えっ・・・お母様・・・」

 この年で母親ですか・・・いえ、精神的には28才ですよ・・・でもここでは15才なんです。それにこの子私より背が高いじゃないですか。私が妹と言っても通じるはずですが・・・

 『お母様、どうされたのですか?』

 「お、お母様って・・・私の事かしら・・・」

 『はい、お母様は私を作って下さったのですから、当然私の親に当たります。ですからお母様で良いのではないですか?』

 「・・・・・・・・・・」

 『・・・お母様ではないのですか・・・』

 泣きそうな目で見ないでください・・・人形であってもそんな可愛い顔して泣き顔なんて卑怯です・・・

 「はい、お母様ですよ。アヤハは私の大切な娘です。」

 涙に負けました・・・これで私は一児の母ですか・・・まだ結婚すらしてないのに・・・ちょっと悲しいです。

 待ってください・・・まだ2人出来てくるのですよね・・・3児の母ですか・・・諦めます・・・かわいいは正義ですから・・・私が悪役なんですね・・・はい・・・


 「アヤハ、いつまでも裸ではいけませんからこれを着なさい。」

 そう言ってメイド服とブーツを渡します。もちろんブーツは膝丈の編み上げですよ。メイド服に編み上げブーツ。最強ですよね。

 『はい、お母様。』

 アヤハはいい子ですね、私の理想と言っていいでしょう。出来のいい娘です。とても人形とは思えませんね。さすがに肌質は人とは少し違うようですがでも柔らかさはありますしとてもすべすべです。

 着替え終わったアヤハと色々話をしながら馬の完成を待ちます。

 私が想像力を働かせたとおりに出来上がったアヤハはなぜかこの世界のことをよく知っています。基本的な知識だけのようですが、何にも知らない私にとっては大切な情報源です。1番近い街まで案内を頼めそうです。

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