第5話 一年後

福島県本宮市某所


「高橋君、もうすぐ12時だから先にお昼行ってきていいよ。だいぶこの辺も整理できたらか来週の監査には間に合うだろう。」


「木村課長、わかりました。お言葉に甘えてお先にお昼行ってきます。」


ユウトは総務部横の書庫から、隣の建屋にある食堂に向かった。

12時になると一斉に作業現場や各部署から人が集まりすぐに行列ができる。

フライングで食堂に向かったので今日はお目当てのかつ丼定食が食べれそうだ。


昼食後は、いつも缶コーヒーをもって工場内の広場にある小高い丘にあるベンチで

安達太良山を見ながら時間を過ごすのが日課だ。この生活も10ケ月を過ぎようとしていた。

ベンチに腰を下ろし、プシュッと缶コーヒーを空け、口につけながら1年前の出来事を思い出していた。

「僕は悪くないんだよなぁ。。。。。。。」


1年前、

東京都千代田区ソニー・ミュージックエンタテインメント株式会社(以下SME)

第2応接室。


「コージさん、本当すいませんねえ、急な依頼で。でもまさかテレビあさひの

来春の連ドラに抜擢されるなんて驚きましたね。」


テレビあさひの編成会議で本来は水山豊主演の

『相方』を予定していたがスケジュールが合わず、断念となりアメーバTVの

単発ドラマで放送された、『女スナイパーは派遣社員⁉』に白羽の矢が立った。

編成としてはプランHの扱い、すなわち“敗戦処理”だった。予算を懸けない代わりに期待もしない、次の編成までのつなぎということで決定された。

アメーバTVがネット番組だった為、一般的には知れ渡らなかったが、

アイドル女優のヒロセカンナちゃんが主演したことと、ストーリーが

今までの概念を吹っ飛ばした作品だった為、一部のユーザーには評価が高かった。

ただし、単発ドラマだったのでストーリーの追加が必要だった。


「コージさん、テレビあさひの制作からは、前回の脚本で4話まで引っ張れるそうです。なのであと6話分の原作だけでいいですよ。」


「いやいや高橋さん、無理ですよ。そもそも連続ドラマ向けに

書いてないですもん。」

(出た出た、言うだけ小僧め!大体、いっつも急なんだよなあ。

6話分ってどれだけ長いかわかってんのかあ。たまにはアイデア

出せってんだよなあ。よし!)


「高橋さん、小説サイトのスタッフなんで編集者みたいなもんでしょう。

じゃあ、最近のトレンド教えてくださいよ。」


「うーん、そうですねえ、まあ色々あるんですけどねえ。」

(やべー、シロー先輩と違ってあんまり読んでないんだよね。

困ったなあ。とりあえず、、、)

「最近はですね、グルメとか、ペットなんかですかねえ。それと、サプライズは

必須ですね。良く使われてますよ。それと併せて新しい武器何かあれば

いいんじゃないですかねえ。」

(とりあえず最近見たyoutubeのトレンドだけどね、まあ気付かないだろ。)


「それでは、時間無くて申し訳ないのですが3日後が

締め切りなんで宜しくお願いします。」

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