第38話
翌朝。
2階の自室の押し入れで眠っていた俺が起きてリビングに降りると、ソファで寝ていたはずの藍沢はすでに起き出していて、箒で床をはいていた。
どこから見つけ出してきたのか、専用のエプロンをつけて掃除に勤しむ姿は、様になった主婦のようだった。
『ヘッヘッヘッヘッ』
掃除をする藍沢の周りを、クロが嬉しげに回っている。
藍沢がここへきて二日足らず…もう懐いてしまったようだ。
「何やってんだ…?」
俺が思わず声をかけると、そこで初めて藍沢が俺の姿を認めてにっこりと笑った。
「あ、西村。おはよう!」
「…お、おう…おはよう…」
快活な声で挨拶をされ、俺は思わず返事をした。
「って、おはようじゃなくて…何してんだよお前」
「え、何って、掃除だけど?」
キョトンとしてそういう藍沢。
「掃除…?なぜだ…?」
「えっと…西村が起きる前に目が覚めちゃって…ほら、昨日お腹いっぱい食べさせてもらって、そのお礼がしたかったから…何か出来ることないかなって思って…」
「…」
「迷惑だった…?」
藍沢が不安げに聞いてくる。
正直、藍沢やクロがいる以上いつモンスターがここを襲ってもおかしくない状態だし、あまり物音を立てずにじっとしておいてほしいというのが本音だったが、さすがに正直にそういうのは俺にも憚られた。
なので
「いいや、助かる」
とそれだけいった。
「そっか!えへへ…」
藍沢は嬉しげに笑い、再び掃除に戻ろうとする。
そんな藍沢に俺はいった。
「藍沢。掃除はそれくらいにして、朝食を取ろう。その後…お前にも付き合ってもらうぞ」
「へ…?」
首を傾げる藍沢に俺は言った。
「食糧確保だ。お前が昨日散々食い散らかしたからな。外に出て食べられるものを探す」
「あまり俺から離れるな、藍沢」
「う、うん…」
いろんなものが散らばったカオスな街中を俺が先導するように歩き、後ろを恐る恐る藍沢がついてくる。
あの後、朝食を食べ終わった俺は食糧確保の名目で藍沢とともに家の外へと出ていた。
藍沢には二人でより多くの食糧を運ぶためと説明している。
もちろん本当は収納スキルがあるため、藍沢はいらないのだが、俺は藍沢をまだ信用しきれていない。
今一度藍沢を『篩にかけて』信用に足る存在かどうか試すつもりだ。
そのための方法もすでに考えてある。
『ブモォオ…』
「ひっ」
しばらくすると、前方にモンスターが現れた。
名前:オーク
種族:モンスター
レベル:15
スキル:無し
豚頭の怪物…オークだ。
レベルは15大したことない。
スキルも所持していないため、今の俺にとっては取るに足らない雑魚だ。
「…っ」
後ろをチラリとみると藍沢が本気で怯えているように見える。
「…」
俺はしばらく迷った後、『こいつでは藍沢を奮いにかけるに足りない』と判断し、さっさと倒してしまうことにした。
『ブモォオオオ…!』
オークが突進してくる。
俺、というよりは背後の藍沢を狙っているのだろう。
「らぁ!!」
俺は体を回転させ、オークの体のど真ん中に回し蹴りを叩き込んだ。
バァン!!!
オークの上半身が弾け飛び、断末魔を上げる間も無く絶命した。
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