第23話


「ただいま」


『クゥン!!ワンワン!!』


学校に隠れていた藍沢を放置して自宅に帰る頃には、外はすっかり暗くなりかけていた。


家の中に入ると、クロが尻尾を振って出迎えてくれる。


「レベリングは明日からだな」


暗い中を歩き回ってモンスターと戦うのは流石に無理があるだろう。


俺はレベリングやスキル獲得は明日に回すことにして、今日は休息を取ることにした。


クロとともに夕食をとり、終わった後は、今日一日活躍してくれた金属バットを洗浄する。


それが終わったら、風呂に入って服を着替えた。


水は出たが、お湯は出なかった。


どうやらインフラがすでに機能しなくなっているようだった。


今後水が出なくなることも考えられるため、風呂に入るのは多くても数日に一度にして、水は飲み水に回したほうがいいだろう。


ともかく冷たい水で汚れを洗い流した俺は、自室の押し入れの中に入り、そこで眠ることにした。


一応モンスターに襲われない体質があるものの、万一ということもある。


夜の間に俺のこの特性が失われないとも限らないし、一応見つかりにくい場所で俺は睡眠を取ることにした。


「ほら、クロ。寝るぞ」


『ワフッ!』


押し入れにはクロも入れてやった。


俺と違ってクロはモンスターに狙われてしまう可能性がある。


ここに身を隠して寝るのはクロのためでもあるのだ。


「今日は色々あったなぁ…」


狭い押し入れに寝転がりながら、俺はぼんやりと今日の出来事を思い出していた。


今日は本当にいろんなことがあった。


正直まだあまり現実味がない。


モンスターが実際に日本に現れるなんて、昨日までの俺には信じられないような超常現象だ。


しかし、ありえないことは、実際に今、起こってしまった。


これは悪い夢だと現実逃避していても何も始まらないし、何より俺にはこの世界において、モンスターに襲われないという特性がある。


これを生かして、レベルを上げ、いろんなスキルを獲得すれば、十分にこの世界を生き延びられるだろうと俺は確信していた。


「そういや…国とかは…どうしてんだろうな…」


自衛隊はすでに動いているのだろうか。


モンスター発生は、この街のみの事態なのか?


それとも全国的に…?


あるいは全世界的に…?


「わからん…今は…休もう…」


そんなことを考えているうちに、だんだんと眠気がやってきた。


俺は瞼を閉じる。


『スー…スー…』


近くからはクロの規則正しい寝息が聞こえてきた。


それを聞いているうちに、気づけば俺は眠ってしまっていたのだった。



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