第6話
「な、なんだ…!?」
俺は周囲を見回した。
確かに聞こえた謎の音声。
どこかに拡声器でもあるのかと思ったが、しかし、今のはどちらかというと俺の内部から聞こえてきたような気がした。
『クゥン?』
様子のおかしい俺に、クロが首を傾げる。
「って、なんだよこれ…錯覚か…?」
いつの間にか目の前に半透明のウィンドウのようなものが見えるようになっていた。
目を擦っても消えることがなく、俺が視線を動かすのに合わせてウィンドウも動いている。
「何か書かれているな…」
そのウィンドウには、こんな文字列が書かれていた。
名前:西村博隆
レベル:3
スキルポイント:10
獲得可能スキル一覧
・回復スキル(必要スキルポイント10)
・加速スキル(必要スキルポイント10)
「いや、なんだよこのゲーム画面みたいなやつ…」
思わずそう突っ込んでいた。
突如として目の前に現れた半透明ウィンドウは、まるでゲームのステータス画面のような様相を呈していた。
西村博隆ってのは俺の名前だから、これはつまり俺のステータスってことなのだろうか。
レベルが3となっている。
おそらくさっきゴブリンを倒した時にレベルアップのアナウンスみたいなのが聞こえたから、それが反映されていると言うことか。
「この獲得可能スキルってなんだよ…獲得したらどうだっているんだ?」
馬鹿馬鹿しい。
そう思いながらも、俺はどこかワクワクしている自分がいるのを自覚していた。
まさか現実世界にレベルシステムが適応されて、モンスターを倒すたびにレベルが上がっていくとか…?
それによって使えるスキルも増えたり…?
「あり得ない…こともないんだよなぁ…」
普段ならそんなこと言われたって絶対に信じないが、すでにモンスターが地上に現れたのは事実なのだ。
もはやどんな非現実的なことが起こったって、今の俺はすんなり受け入れてしまうだろう。
「試してみるか…このカーソルを動かせばいいのか…?」
俺の右手の動きに連動して、そのウィンドウ上にカーソルのようなものが動いていた。
俺はそのカーソルを使って、スキルポイント10を使い、回復スキルを取得してみる。
パンパカパーン!!
〜初めてのスキル取得を確認しました〜
〜スキルポイントを10消費し、回復スキルを取得しました〜
「うおっ!?……びっくりさせるなよ…」
スキルを取得すると、先ほどと同じように頭の中でアナウンスが流れた。
俺は思わず驚いて体をびくりと震わせてしまう。
「スキルは獲得できたのか…?」
俺はスキルの取得を確認するために、ウィンドウを見た。
名前:西村博隆
レベル:3
スキル:回復
スキルポイント:0
獲得可能スキル一覧
・加速スキル
「おぉ…ちゃんと反映されているな…」
スキルポイントが消費され、新たに現れたスキル欄に回復スキルが記載されていた。
「本当にゲームみたいだ…」
ポツリとそんな感想を漏らす。
いきなりモンスターが現れたり、レベルやスキルが出現したり…
この世界は一体どうなってしまったんだ…?
「夢でも見てるんじゃないか…?」
あまりに信じられないことが多すぎて、俺はいまだにこれが現実であると信じられない。
『クゥン…クゥン…』
「ん?どうかしたのか?クロ」
そんなことを考えていると、クロが甘えるような鳴き声を出した。
俺が首を傾げる中、何かを訴えるように俺を見つめてくる。
「どうしたんだ、クロ。お腹でもすいたのか?」
『クゥン…』
再度悲痛そうに泣いた後、クロは俺の周りをクルクルと回り始めた。
だが、歩き方がおかしい。
後ろ足をびっこを引いているのだ。
「お前、まさか怪我したのか…?」
『クゥン!』
クロが肯定するように鳴いた。
「うわ…かなり深いぞ…」
よく確認してみると、クロの後ろ足の付け根に、べっとりと血が滲んでいたのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます