第27話 金髪の転入生と再会しました
『昨日未明、■■市にて近隣住民からの通報を受けて指定暴力団山藤会の菅原智昭容疑者と神田栄司容疑者が銃刀法違反の疑いで逮捕されました。両容疑者は取り調べに対して……』
「また物騒な事件が起きたもんだ。修、お前も気を付けろよ」
「わかってるよ」
翌日、珍しく家に帰ってきた父さんとそんな話をしながら、俺は昨夜作ったミネストローネの余りにトーストという簡単な朝食を摂っていた。
まさかこの事件の中心人物が目の前にいるとはこれっぽっちも考えていないのだろうな。
そんなことを考えながらバタートーストに噛りつく。
「そういえば佳那はどうした?」
「調子が悪いからもう少し寝てるってさ。学校には行くつもりらしいけど」
「風邪でも引いたのか?」
「体温計で計ってたけど平熱だったよ。疲れが溜まったんだと思う」
そんな当たり障りのない会話をしていると、そろそろ家を出ないとやばい時間だな。
普段なら皿洗いまで自分でするのだが、父さんが帰ってくるときは家事を任せる、それが昔からのウチのルールだ。
「ごちそうさま。それじゃ俺、出るわ」
「ああ、気を付けてな」
食器をカウンターに置くと、リビングの扉近くに置いておいたカバンを手に取り家を出る。
あの後、俺たちはヤクザたちを拘束して気絶した学生たちに『治癒魔法』をかけると、『空間転移魔法』で事務所の外に脱出して警察に「発砲音が聞こえた」と通報した。
ほどなくして通報を受けたパトカーが到着し、気絶して拘束されたヤクザ2人と意識不明の12人の学生が発見され、俺たちは軽い事情聴取を受けると、すぐに家へ帰ることを許された。
指紋は残っていないはずだし、そもそもあの事務所の扉の鍵は閉められたまま。そして俺たちの格好もどう見ても普通にランニングをしているようにしか見えないものだったから警察も俺たちが怪しげなことをしているとは疑っていなかったようだ。
ともかくその後、俺が久遠と別れて家に着いたのが大体8時のことだった。
恐らく今頃警察ではこの不可解な事件について様々な捜査が行われているのだろうが、手がかりとなり得るものは何も見つからないだろう。
事件の容疑者として逮捕されたあの2人はあそこで行われていたことについて何も聞かされていないようだったし、そもそも最重要証拠物品であるあのガラス瓶は破壊されてしまった。
というかもし壊されていなかったとしても結果は同じだろう。
なんせあれには魔法なんていう非科学的なかけられているのだから。
そして何よりあのヤクザたちには自分たちを拘束してきた相手の姿がノイズがかった音を出さない化け物にしか見えていない。
だから警察は事件解決の糸口を得られていないだろう。
(そういえば昨日のレベルアップは何だったんだろうな)
昨日は後回しにしていた疑問を思い出すと、俺は『ステータス』を開いた。
―――
伊織修 Lv113 人間
称号【名を冠する者を撃破せし者】
HP32500/32500
MP860/860
SP730
STR135
VIT140
DEX130
AGI150
INT145
エクストラスキル スキル貸与
スキル 鑑定 万能翻訳 空間転移魔法 認識阻害魔法 アイテムボックス 氷結魔法 治癒魔法 風魔法 水魔法 追跡・探知魔法
身体強化 身体強化(中)
―――
昨日の戦闘で、俺はMPが枯渇してしまったために危うく銃弾を浴びるところだった。
そこで久遠が『身体強化』を使った瞬間、スキルレベルが10に達し、それで得られた経験値でレベルアップをしたことで危機を脱することができた、のだが。
(どう考えてもあの場面でスキルレベルが10になることはないよなあ……)
確かにスキル取得に当たって色々と検証はしたし、それでスキルレベルもいくらか上がってはいた。
だがそれでも最大値に達するほどスキルは使っていない。
となると考えられるのは……。
(やっぱり久遠のスキル発動で得られた経験値はこっちに加算されてたのか?)
昨夜の検証は『スキル貸与』で久遠にスキルを使わせたら「経験値を得られてレベルやステータスを手に入れられるのでは?」という仮説の検証も兼ねていた。
しかしその結果は『スキル貸与』で貸したスキルを使わせても経験値も入らなければ、ステータスも手に入らないという何とも言えないものだったのだが、もしかするとその経験値は久遠にではなく
これについては要検証、だな。
「っと」
そんなことを考えている内に教室へとたどり着く。
「おはよう」
「おう、おはよう」
知人と挨拶を交わしながら自分の席へと向かう。
久遠はというと隣の席で仲の良い女友達とメイクや夏服について話していた。
そこで俺は前の席に慣れ親しんだ友人の姿がないことに気づく。
昨日の一件もあるし何かあったのだろうか。そう考えて俺は別の男友達に話しかける。
「なあ、廉太郎ってまだ来てないのか?」
「そういや今日はまだ見てないな。あいつのことだからどうせ風邪でも引いて寝込んでるんじゃね? そんなことよりこのクラスに転入生が来るんだってさ! しかもすっげえ美人さんの!」
そいつは嬉しそうな表情を浮かべて話し始めた。
転入生……、多分アリシアのことだろう。
「あれ? あんまり驚かないんだな」
「ああ、だって昨日――」
その時、ホームルームを告げるチャイムの音が鳴る。
「皆さん、席に着いてください。ホームルームを始めますよ」
輿水先生に言われて生徒は各々の席へ戻っていく。
にしても、今日はやけに欠席してる奴が多いな?
「もう既に知っている人もいるようですが、このクラスに転入生が来ます。それでは入ってきてください」
出席状況に疑問を抱いていると、先生に促されて教室に金髪ロングヘアーの美少女が入ってきて、一部の男子生徒が興奮し出す。
少女はそんな生徒の反応を気にも留めず、快活そうな笑みを浮かべて教壇に立っま。
「皆さん、はじめまして。アリシア・加守・パターソンです」
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