不花解な再会
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プロローグ
あの日の記憶
少年には幼馴染の少女がいた。
その少女が幼稚園に通い始めた時から、その美しさは多くの人目を引いていた。
人見知り故、あまり笑う子供ではなかったのに。
何故、不愛想な幼児がそこまで人目を引いたか?理由は至極単純だ。
―――端的に言って、ものすごく美人だったのだ。
柔らかく、丸く、幼児特有の愛らしい要素は勿論のこと。滑らかな紺色の長髪や大きくて綺麗なトパーズの様な瞳は、周りの大人さえ魅了した。
少年はそんな幼馴染と共に育ち、その先も少女と共にありたいと思っていた。
しかし、少年は気が小さくて体力もない為に、輪に入ることが出来ずに孤立しがちだった。幼稚園の頃はそれでも良かったが、小学校に上がると少年少女は心身ともに成長を迎え始めた。その中でも、我が強く意地悪な同級生にとっては格好の的であり、ヒエラルキーの下に追いやられていじめが始まるのも時間の問題だった。
―――"彼女がいなかったら"そうなっていただろう。
その見た目と学力、運動能力からカースト上位にも認められていた少女は、あの手この手を使って少年を庇い、その結果――周囲を敵に回した。
クラス内の自身の立場を失おうとも、それまでは仲良くしていたはずの同級生から無視されようとも、それでも少女は少年の友であり続けた。
―――見捨ててくれて、良かったのに。
更に月日が経ち、教室から少女の居場所が無くなる頃。
小学校の卒業を前にしたある日のこと、少年は卒業式の直後に親の都合で遠い街に引っ越すことを少女に告げられた。
―――当たり前だ、既に限界なのは目に見えていた事だ。
少年は酷く悲しみ、そして、■■を――
―――
夕焼け、小焼けに、日が暮れる。
別れの時は、やってくる。
「うぅ……いつか、また会おうね、まいちゃん」
まだ声も変わらない少年が泣いている。
顔を歪ませ、気弱な本質を前面に出して泣いている。
子どもの最大の感情表現を惜しむことなく使って。
それでもその声は、"いつか"への希望は捨ててはいない。
「………うん、またいつかね」
程なくして少女を乗せた車は去り、少女の短い返答を鼓膜に刻む。
遠くて、されど近い未来にまた会うのだと。
今よりも成長し、彼女に釣り合う男になるのだと。
頬を軽く叩いたその手は赤く、頬も目元も、きっと心も紅く染まっている。
紅く照らされた小さな体に決意を宿して、少年は自らを変える。
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